今年10月、労働者派遣法が改正(厚労省リンク)されました。
とはいえ、大きな改正点は「日雇」派遣の原則禁止であり、その他の派遣業界では引き続き活況です。
今回お話を伺うのは、半導体業界の製造請負シェアNo1のUTホールディングス株式会社

同社コーポレートコミュニケーションユニットの秋田さんに製造派遣業界の現状についてお話を伺いました。

ところで、上の画像は、同社ホームページです。音楽関連の会社かな・・・えっ、派遣会社!?
「人材派遣業」のイメージが大きく変わりますよ!!

Q1: 御社のビジネスは何でしょうか?わかりやすく教えて下さい。

―― 最新の株主通信(2012年3月期)の表紙には「日本一の請負会社を目指す」と
書いてありましたが、改めて御社の事業内容についてお話いただけますでしょうか?

秋田:
当社は、製造業専門の人材派遣会社として、1995年に現社長の若山が設立した企業です。
2000年頃からは半導体業界の請負に特化することで、この分野におけるシェアNo.1*――「半導体請負No.1」企業として、技術とノウハウを蓄積してきました。

*半導体関連産業の製造請負・派遣社員数で製造アウトソーシング業界第1位(各社発表資料より当社推計)

現在は、半導体分野で培ってきた強みを活かせる成長市場へと事業領域を拡大することで、質・量ともに「日本一の請負会社」への飛躍を目指しています。

2011年3月期および2012年3月期実績と2016年3月期 業績計画数値

(2012年3月期株主通信 P4より引用)

―― 半導体業界の請負でトップシェア!それはすごいですね。
なぜそのような強みを持つことができたのでしょうか。

秋田:
当社の強みである「工程一括請負」が評価された結果だと考えております。
一般的な人材派遣の場合、派遣スタッフはそれぞれバラバラにお客様の指揮命令の元で働く形になるのですが、私たちの「工程一括請負」の場合、熟練したメンバーで構成されたチームを工場の製造ラインに派遣し、製造のマネジメントまで含めて請け負わせて頂く、要するに「ラインをまるごとお任せいただく」形で業務を請け負います。

半導体業界は、もともと
(1)高度な専門性を必要とする
(2)工程単位での請負に適している
という特長がありましたので、この「工程一括請負」を非常にご評価いただきました。

加えて、2000年代前半は業界そのものが不況からの回復期にありましたので、増産ニーズに素早く確実に対応するために、外部労働力の活用に踏み切る企業が多かったのです。
その結果、当社も大きくシェアを伸ばしてくることができました。

Q2: 御社の強みや他社との違いはどこにあるのでしょうか。

―― 「工程一括請負」を強みとされるに至った理由、あるいは経緯について教えていただけますか?

秋田:
それは、若山の創業時からの想いですね。
もともと若山には、「職を求める人(=働く人)」と「人を求める企業」の両方に貢献できるという理由で、この分野で独立したという経緯があります。

ですが、実際に起業した彼が直面したのは、派遣・請負業界の体質の古さでした。
企業側の事情が考慮されることはあっても、「働く人の立場」に立った視点は欠けている。若山は、そこに疑問を抱くようになっていきました。

そんなある日、若山は訪問先の大手電機メーカーから相談を受けます。「派遣で働く人達の定着率が悪く、生産効率も悪化している」と。
働く人と企業の双方に貢献する道はここにある――そう直感した彼は、「派遣する社員に技能教育を施し、技能アップに応じて昇給する」という仕組みを提案しました。

派遣される社員は技能が身につき、モチベーションも上がる。結果、定着率と生産効率が向上し、企業(工場)側もメリットを享受できる。そう考えて導入したこの仕組みが、「工程一括請負」へとつながっていった…そんな経緯があります。

―― 派遣スタッフの定着率が悪いと、なぜ生産効率が悪化するのでしょうか。

秋田:
派遣といえども、製造現場の一員として仕事をするからには、お客様企業が持っておられる技術やノウハウはもちろん、製造ラインを動かしていく上での細かなものごとの進め方や手順など、そういったものもすべてをしっかりと理解していなければなりません。

それは、当然ながら一日や二日で習得できるものではありませんので、覚えたと思ったら辞めてしまった…というのでは、また新しい人を教育しなければならない。
習得するまでは当然ミスも出ますから、仕事にも支障をきたします。その結果、製造ラインの生産性も低下してしまうのです。

―― 派遣スタッフの離職率はそんなに高いものなのですか?

秋田:
業界(派遣・請負業界)の平均で申しますと、1ヶ月の離職率は月間で8%程度と言われています。
これは、年間に直すと単純計算で8×12=96%、つまり1年間でほぼ全員が入れ替わってしまうような高い数値なんですね。

その点、当社の月間離職率は約2%。この業界の中では最も低い水準です。
低い離職率と、スタッフの高いモチベーション。それこそが私たちの特長であり、この業界でシェアを上げてくることができた理由でもあります。

従業員の定着が重視される理由

(ホームページ「中期経営計画」:より引用)

Q3: 事業環境をどう見ていますか?また、それに対応する戦略は?

―― 先ほど、“対象領域を拡大することで日本一の請負会社を目指す”というお話がありましたが、
「工程一括請負」へのニーズは半導体産業以外でも広がっているということなのでしょうか?

秋田:
その通りです。特にここ数年は、エレクトロニクス業界や自動車部品業界などでも派遣から請負に切り替える傾向が強まっています。

当社としては、その中でも半導体業界で培った強み――当社の技術者が持つ技術を応用することができる親和性の高い分野であり、かつ成長市場でもある4つの領域――小型ディスプレイ、二次電池、LED、そして太陽電池を「成長4分野」と定めまして、これらの分野の請負も順調に増加させているところです。

業種別の顧客比率の推移

(2012年3月期株主通信 P4より引用)

―― ニーズが高まっている、その背景にはどのような環境変化があるのでしょう?

秋田:
大きく分けると二つの要因があります。
一つは、需要増にともなう人手不足――たとえば新しく工場を建てる、新しく製造ラインを作る、あるいは生産量を増やす、そういった時に人手が足りないので外部労働力を活用しようという考え方です。

そしてもう一つの理由は、我々が「2012年問題」と呼んでいるものです。

―― 「2012年問題」とは何ですか?

秋田:
現行の法律では、製造現場で派遣労働者を使える期限は「3年間」に限定されています。
3年が経過した後は、派遣で働いていたその人を企業が自社で直接雇用するか、派遣を使うことをやめるか、あるいは請負に切り替えるか。いずれかを選択しなければなりません。

なぜこれを「2012年問題」と呼んでいるのかと申しますと、2009年にリーマンショックが発生した後、その影響の大きさに、各メーカーはそれまで使っていた派遣等の外部契約を一斉に止めたんですね。
ですがその後の生産の立ち上がりは、思いの外早かった。このため、2009年の生産ライン再立ち上げ時期には、各社とも派遣を大量に活用しました。
その契約が、今年(2012年)、一斉に「3年」の期限を迎えるのです。

―― 直接雇用するのか、それとも派遣活用をやめるのか、あるいは請負にするかを
選ばなければならない時期が、いよいよ到来したのですね。

秋田:
はい。では企業はどの選択肢を選ぶのかと言えば、もともと外部労働力の活用率を高めている中、自社で雇用するという選択肢は選びにくい。
ですが一方で製造ラインに人員は必要ですから、派遣をやめてしまうということも現実的ではないわけです。

やはり企業としては3年以上、外部労働力を使って行きたい。
そのニーズに応えることができるのは請負という形しかありません。

2012年問題とは

(2012年3月期株主通信 P7より引用)

―― つまり、御社が選ばれる理由があるということですか?

秋田:
その通りです。
当社はもともと請負を強みとしておりますし、何よりも半導体業界で培ってきた実績とノウハウがあります。こうした点をご評価いただきまして、実は今、製造業の企業様からのお問い合わせやお取引開始は急激に増加しています。
取引先工場数は、2012年の3月末の237から、わずか3ヶ月後の6月末には361にまで伸びました。

取引先顧客工場数の状況

2013年3月期第1四半期決算説明会資料 P3より引用)

―― すごい伸び方ですね!

秋田:
2013年3月時点の達成目標として掲げていた「取引工場数」の目標値は300だったのですが、第1四半期終了時点でこれを大幅に超過する成果を挙げたことになります。

これは、「2012年問題」によって生じた派遣から請負の切り替えニーズを当社がうまく取り込むことができているという証でもありますし、「取引工場数」と「1工場当たりの稼働人員数」、2つの積によって20,000人体制――現在の4倍にあたる水準ですが――を実現する、という中期経営計画の目標を達成するための重要な第一歩でもあります。

中期経営計画の基本

(ホームページ「中期経営計画」:より引用)

Q4: 成長戦略を支える要因は?

―― 1工場あたりの稼働人員数の拡大を果たすためには、どのような取り組みをしておられるのですか?

秋田:
取引工場数を増やすことに加えて、工場内のシェアを高めること、つまり、お任せいただけるラインの数を増やすことが基本的な戦略となりますが、その他には、お客様の生産ラインの請負受託と同時に、そこで働くお客様の従業員を受け入れ、引き続き従事していただく転籍型の請負サービス――私たちはこれを「インハウスソリューション」と呼んでいるのですが、そういったご提案も進めています。

―― 転籍型の請負サービス…ですか?

秋田:
はい。今、特に日本のエレクトロニクスメーカー様などは非常に厳しい事業環境にありまして、構造改革やむなしといった状況にある企業も多くおられます。
そして、構造改革を進める上で必ず大きな問題となるのが、「人」の問題――つまり、雇用をどう確保するのかという問題なのです。

ご承知のように、日本では――特に、歴史ある大手エレクトロニクスメーカー様などでは、まだまだ終身雇用が期待されていますので、固定費は削減したいが人は減らせない、そういった問題を抱えていう問題に悩んでおられる企業は大変多いんですね。

そこで私どもでご提案させて頂いているのは、お客様の社員の方も私どもで受け入れて、お客様の職場そのものを一括で請け負わせていただく、という方法です。

―― 働く方々は、そのまま仕事を続けることができるのですか?

秋田:
はい。基本的には同じ仕事・同じ場所で勤務を続けていただくことができます。
一方で、お客様企業にしてみれば――非常に経済合理的な言い方をすれば、「固定費の変動費化」が可能となります。
今まで固定費としてかかっていた福利厚生費、あるいは諸々の人件費は、当社との契約へと置き換えられ、すべて「変動費」になっていきますので、お客様としては、雇用は確保しながらも固定費の削減が実現できる、ということになります。
現在、この「インハウスソリューション」は国内の大手企業様で3社の採用実績があり、実際に当社に転籍して働いておられる方々も、すでに300名以上おられます。

こういったサービスをご提供しているのは業界でも当社だけですので、企業様からのご相談も増えており、今後も採用事例が増加していくものと期待しています。

―― これは企業側にしてみれば生産ラインだけのソリューションではなく、経営課題に対するソリューションそのものになっているのですね…!

秋田:
私たちとしましても、単に人を派遣してそのマージン(利幅)を取るビジネスではなく、お客様の抱えている経営課題であったり、あるいは地域における雇用問題であったり、そういったものに貢献できるサービスを拡充させていきたいという想いは常に持っています。

日本における雇用のあり方というのはやはり他国とは違っていますから、私たちとしては日本に合っていて、かつ最も適切な仕組み、サービスの在り方を模索していきたいですね。

―― インハウスソリューションで受け入れた方々には、製造現場での豊富な経験をお持ちの方も多そうですね。

秋田:
その通りです。そうした方々の中から、今までのノウハウを生かして私どもの職場でリーダーやマネージャーとしてご活躍頂ける人も増えているんですよ。
そういった意味では、私たちのビジネスは、「製造現場」の支援にとどまらず「人材の流動化」を支援する、という方向にも進化しつつあると言えます。

―― 先ほどの図に「従業員のカスタマー化」という表現がありましたが、その考え方とこの“人材の流動化支援”とは関連がありますか?

秋田:
そうですね、大いにあります。「従業員のカスタマー化」については、従業員が満足する、喜んでくれる、あるいはモチベーションを高めてくれる、そういう取り組みをもっともっと進めていこうという意味で申し上げています。
そこが一番、お客様へのサービスや品質の高さに繋がっていく部分ですので。

では、どうすれば満足度が高まるのか、モチベーションが高まるのかといえば、やはり、重要なのは、彼らにどれだけ成長の機会を提供できるかなんですね。
そしてそれは、結局、当社がどれだけ人が集まる会社になれるか、我々の会社を通じて働いていく方々がどれだけ増え、皆さんが一番いい形で働けるような選択肢を増やせるのか、にかかっています。

冒頭で申し上げました「日本一の請負会社」で“規模”を追う目標を掲げているのはこういった意味があってのことですし、私たちは、当社という“プラットフォーム”を通じて働き、新しい成長の機会に出会う方々が増えていって欲しい、そういった方々を支援する存在でありたいと願っています。

―― 実際に御社がそういった「プラットフォーム」として活用される事例も出てきているのですか?

秋田:
はい、徐々にではありますが増えていますね。
最近では、たとえばある大手メーカーA社の社員が、A社に在籍したままB社で働くという、いわば、「グループ外出向」のようなものですね、そんな形を実現するために当社をご活用いただいた事例があります。

出向というのは通常はグループ内で行うものですが、やはり今、自社グループの中だけでは雇用の調整ができにくくなってきているという現状があり、かといって、グループ外の個別企業さんに直接アプローチをしていくことは難しい。
その点、当社はすでに製造業のお客様ネットワークを持っておりますので、当社を通じて、他の製造業大手で働いていただく、あるいは当社の中で様々な活躍の場を見つけていただくといったことも可能になっています。

そういった「雇用のプラットフォーム」としてご活用いただける企業、そんなあり方は、私たちが今後目指していきたいところです。

Q5: 個人投資家の皆様へのメッセージをお願いします。

秋田:
もうひとつ、先ほどの「カスタマー化」に関連して申し上げますと、当社で働く価値を高める、あるいは当社の成長と自分の成長をつなぎ合わせるものを持ってもらえたらとの想いから、当社ではESOP(退職自社株給付制度)を導入しています。

自分も仲間も頑張って、その結果会社の企業価値が増えて、それが自分の資産になって戻って来る。
そういった仕組みをつくることで、従業員と経営陣の、もっと言えば株主や投資家の方ともですね、目指すべきベクトルが、方向性が合ってくる。それが当社を強い企業にしていくと思っています。

―― 会社のでもきちんと頑張る、仕事で自己実現をして会社の成長にコミットしていくことが自分のためにもなるのですね。

秋田:
そして、自分の資産にもなっていくと。
現在進行中の中期経営計画も、かなりアグレッシブな数値目標になっていますけれども、それを実現した暁には当然企業価値も上がっているはずだ、皆、そう期待して日々頑張っています。

その意味で、ESOPが1つの起爆剤と申しますか、やりがいの元になっているという手応えは感じています。

―― 従業員の方々も含め、個人株主については今後も増やしていきたいというご方針なのでしょうか。

秋田:
そうですね。当社のビジネスモデルは、たくさんの人々に集まっていただいて、そこで初めて価値を出していくものですので、ガバナンスの形についても、やはり多くの方々に当社のことを知っていただいて、多くの方々に当社のことを支えていただくというのが正しい会社としての方向性だと考えております。

その意味において、個人投資家の皆様、そして当社の従業員にもより多く株を持っていただいですし、株主数も増やしたいですね。

―― その目標を実現するため、IRについてはどのように取り組んで行くのですか?

秋田:
当社はIR宣言を出しておりますので、これに基づきまして、個人投資家の皆様に対しても情報のギャップが出ないよう、なるべくリアルタイムで、明瞭かつ一貫して情報を発信していきたいと思っております。

―― では最後に、個人投資家の皆様へのメッセージをお願いします。

秋田:
当社の場合、製造業向けの派遣・請負ですので、ここ数年、日本の製造業厳しい状況におかれている中では「UTホールディングスの業績も厳しいのでは」との見方をされてしまうことも、しばしばあります。

ですが、本日ご説明申し上げました通り、こういった事業環境だからこそ発揮できる強み、価値をご提供することで、当社は昨年度も20%以上の売上高の増加を実現しておりますし、今後も中期経営計画にそってさらなる成長を遂げることで、「日本一の請負会社」、そして「日本のものづくりを支える“雇用インフラ”」を目指していきたいと思っておりますので、是非、当社の今後にご期待ください。

―― 本日はありがとうございました!