オフィスカタログで事務用品が何でも揃うように、建設現場や工場で必要とされているものが揃うカタログ「オレンジブック」。
このカタログを発刊し、プロツール(工具や消耗品)を約102万アイテム取扱う企業が、トラスコ中山株式会社

同社は「TRUST + COMPANY = TRUSCO:信頼を生む企業」を社名に掲げています。

取捨”“択 ~損か得かではなく、それが良いのか悪いのか、正しいか正しくないかに基づいてすべての行動を行う~ とはどういう経営なのか、経営企画部IR課の酒井さん・大辻さんに伺いました。

(左:酒井さん、右:大辻さん)

Q1:御社のビジネスは何ですか?わかりやすく教えて下さい

―― ホームページには「プロツール」「工業用副資材(MRO)」と書いてあったのですが、具体的にはどのような商品を取り扱っておられるのでしょうか?

酒井:
「プロツール」というのは当社の造語です。
機械工具や物流機器といった専門的な道具からヘルメットや手袋、乾電池、洗濯洗剤まで、モノづくりの現場で使用されるありとあらゆるものを卸売りするのが、当社のビジネスです。

機械工具や物流機器ってどんな商品のこと?

(「TRUSCOってどんな会社?」より引用)

―― 取扱アイテム数はどのぐらいあるのですか?

酒井:
取扱アイテムは102万アイテム、そのうちカタログ(オレンジブック)提供アイテムは17万8千、在庫アイテムは16万8千です。近いうちに在庫アイテムを20万アイテムまで引き上げる予定です。

配送についても、それこそ手袋一双からすぐにお届けできますので、何でも揃うし、無駄買いをする必要もないというのは、ご利用者であるお客様(エンドユーザー)の一番のメリットになっていると思います。

--でも、手袋一双から届けるとなると物流が大変なのでは?

酒井:
いえ。当社には、全国15か所に物流センターがあります。そこから路線バスのように、1日2便、配達便を巡回させていますので、多くの場合、オーダーを頂いた当日に販売店様に商品をお届けできています。

物流センター15箇所

(「物流力」より引用)

――それはすごいですね!
全国15か所というのは、同業他社さんと比べるとかなり多いのでしょうか。

酒井:
多いですね。全国15か所で在庫の金額は、今年(2012年)6月末現在で、195億です。

―― それだけの在庫を確保しても大丈夫な販売力がある、ということでしょうか?

酒井:
はい。当社は約5,300の販売店様とお取引しているのですが、エンドユーザー様が販売店様へ注文する元となるのが、当社の商品カタログ「オレンジブック」です。

これは毎年の発行部数が30万ほどありまして、ちょっと手前味噌な言い方で恐縮なのですが、モノづくりのあらゆる現場で必須のカタログとなっているんですよ。

ルート別ターゲット市場

(左図:第49期定時株主総会招集ご通知 P5より引用)

―― 30万部!ベストセラー本並みの部数ですね。 しかも1冊が分厚い・・・。
ところで在庫管理についてはどのような工夫をしておられるのですか?

酒井:
2008年6月に導入した「ザイコン」が大いに貢献しています。これは売上に応じた適正な在庫数をコントロールするためのシステムなのですが、基幹システムと連携させることで在庫が切れることなく常に一定量を保つような自動補充機能を確立できました。

当社の場合、商品回転率ではなくて、商品の出荷率(「在庫出荷率」)を重視しています。
「ザイコン」の貢献もありまして、アイテム数が増え続ける中でも在庫出荷率は恒常的に向上していますし、商品の入れ替えも大変スムーズに進むようになり廃棄もほとんど無くなりました。

在庫アイテムの拡充と在庫出荷率の向上

第49期定時株主総会招集ご通知 P10より引用)

Q2: 御社の強み、他社との違いはどこにあるのでしょうか?

―― アイテム数の多さの他に、品揃えにはどのような特長がありますか?

酒井:
PB(プライベートブランド)商品です。
実は、当社はこういった機械工具の卸売りとしては業界最後発の企業でして、最初は思うように代理店権が得られませんでした。

だからこそ、アイディアや創意工夫で売上を伸ばすことが大事で、その一環として、PBも創業間もない頃から続けてきたという経緯があります。
PBの中でもヒットしたのが、このスチール棚なんですよ。

PB(プライベートブランド)商品

―― 棚・・・ですか?棚って差別化が難しいような気がするのですが。

酒井:
1969年(昭和44年)当時、工場には大工さんが作る木製の棚しかなかったんですよ。そこに当社が初めて頑丈なスチール製の棚を発売して、ヒットしたと聞いています。
今ではスチールの棚はもちろん、プラスチックの棚もPBで販売しています。これは、オールプラスチックでとても軽いのですが、耐荷重量は100kgあります。工具などは一切不要で、誰でも簡単に組み立てられるはめ込み式の棚です。

オレンジブックも、こうした試行錯誤の中から生まれました。
当時はまだ「商品総合カタログ」と言っていたのですが、当時はこういった一覧で見られるようなカタログというのはなく、エンドユーザー様からは大変ご支持をいただきましたので、そのお声を励みに年々改良しながら続けてきました。

大辻:
物流センターの全国展開も、当社の成長には大きな役割を果たしています。
お客様の「必要な時に」「必要なモノを」「必要なだけ」というニーズに応えるために、当社は自己資金で物流センターを一つひとつ、作って来ました。全国15か所の物流センターに在庫を持ってお届けするという当社の物流体制は、これまでの地道な積み重ねの結果、できてきたものです。

―― 自己資金で?

酒井:
はい。投資は全額自己資金でやっております。

大辻:
当社は創業以来、年次決算はもちろん、月次決算でも赤字を出したことはありません。
無借金は当社のトップのポリシーでもございますので。

―― それはすごいですね!長い先行投資期間を経て、これからは収穫の時期という理解になるのでしょうか?

酒井:
ありがとうございます。
ですが、これで完成かと言われれば、まったくそうではありません。

―― これだけあってもまだまだ、ですか?

大辻:
まだまだですね。
当社の戦略を突き詰めていくと、すべては「お客様目線」、つまりお客様にとって何が一番良いのか、から発想されていることに気が付きます。
その意味で、当社のすべてはこれまでの地道な変革の積み重ねの上にあるものですし、今の形も、お客様の利便性を追求していく上ではまだまだ完全とは言えないと思っておりますので…。

酒井:
これまで以上にしっかりとお客様の声に応えていけば、日本国内でまだまだ当社として伸ばして行ける余地があるはずです。

Q3: 事業環境とその対応は? また、それに対応する成長戦略は?

―― まだまだ国内市場にはのびしろがあるということなのですね。

酒井:
はい、その通りです。ですから、私たちとしては、この市場の中でアイテム数を拡大し、在庫機能を高めたり営業活動を工夫したり、そういったこれまで同様の取り組みでさらに占有率を高めていくのが基本的な成長戦略となります。
もちろん、新たなビジネスももちろん視野に入れておりまして、eビジネスや海外についても引き続き事業拡大に向けて取り組んでいるのですが。

―― 海外については具体的にはどのような取り組みをしておられますか?

大辻:
一昨年の11月、タイに現地法人(「プロツールナカヤ(タイ)株式会社」)を設立しました。
売上に関しましてはまだまだこれからといったところですが。

酒井:
やはりタイは日系企業の工場が多いので、それにともなって当社の日本の販売店様もタイに進出されています。
造る側が出ていくということはプロツールのニーズがそこにあるわけですから、私たちはその販売店様を通じてビジネスをさせていただいています。 最近では、洪水の被災地域の方々のお役に立てるよう、復旧関連商品の需要にお応えさせていただきました。

現地法人「プロツールナカヤ(タイ)株式会社」

(第49期定時株主総会招集ご通知 P9より引用 :プロツールナカヤマ(タイ)株式会社)

――  eビジネスについてはどのような展望が?

大辻:
eビジネスは急成長している分野ですので、当社も通販や電子集中購買に対応する専門部署を設けて強化しています。
通販に関しましては、通販サービス会社様に、当社が扱うMRO(工場用の副資材)を提供させていただいて、売上も拡大しています。
そうそう、PB商品については、プロツールのトラスコというアンテナショップも出しているんですよ。

酒井:
電子集中購買(「オレンジコマース」)も、今後は重要な成長要因になると見ています。
従来は販売店様を通じて個別のご注文をいただいていたのですが、エンドユーザーの企業様は、ある程度以上の規模になりますと内部統制や調達コスト削減の問題もありまして、会社単位で購入したいというニーズが強くなります。そういったお声に応えるために、当社とエンドユーザーさんの購買システムを直接つなげてしまうのが、この「オレンジコマース」です。

もちろん、当社は卸売りですから代金の支払や納品等は通常通り販売店様に行っていただくのですが、購買の手続き自体は当社と直接行いたい、というニーズは今、高まっています。

eビジネス売上

第49期定時株主総会招集ご通知 P11より引用)

Q4: 個人投資家向けIRの方針についてお話ください。

――事業に関する数々の変革については、よくわかりました。
最後に、ガバナンスとIRに関する取り組みについてもお伺いさせて下さい。
実は、最新の招集通知を拝見したときに「役員オープンジャッジシステム投票フォーム」という文字を見つけまして、大変衝撃を受けたのですが・・・

酒井:
ああ、これですね。

既得権にとらわれない人事戦略

(クリックして拡大 : 第49期定時株主総会招集ご通知 P12より引用)

このオープンジャッジシステムは、もともと当社社員の昇格や人事考課に使われていた仕組みなのですが、これを役員にも適用したら役員の活性化につながるんじゃないかということで、じゃあやってみようと。
もちろん、選任は最終的に株主総会で決まるものですが、当社の中でしっかりとした仕事をしているかという部分につきましては、既得権があるわけではないという危機感を持つことで役員の仕事の質を上げていくために、この制度の運用を開始しました。

―― それはなかなか実践できることではないと思います・・・。
他社がやらないことをやる、というのが御社のポリシーなのでしょうか?

酒井:
他社がやらないことを一番最初にやるのは、結構好きですね(笑)。
ですが、ただ変わったことをしたいということではなく、これまでの事業に関しても、このオープンジャッジシステムも、当社の社長である中山の「取捨択(しゅしゃぜんたく)」という言葉に基づいたものなんです。

―― 取捨「選択」ではなく、「善択」ですか?

酒井:
はい。損か得かではなく、それが良いのか悪いのか、正しいか正しくないかに基づいてすべての行動を行っていこうという意味です。これは、当社のコンプライアンスの基本的な考え方にもなっています。

大辻:
株主通信を現在のような形――招集通知と一体化した内容にしたのは、4年前のことです。
総会当日に取締役がプレゼンする内容を予め載せておいて、株主の皆様にはそれを読んでから参加していただこう。そして、プレゼンを聴いて、良いか悪いか判断をして、議決権を行使してもらいたいという思いで始めました。

―― これも、取捨「善択」だということでしょうか?

酒井:
はい、善択です。
これも、その方が良いだろう、だったらやらないでどうするということで始めました。
総会に関しては、元々は議長である社長の中山だけが話していたのですが、やはり株主様に当社をより知って頂くためには、それぞれの役員が、担当する部門の取組み内容や今後の戦略について直接お伝えすることが大切だと考えたのです。

―― これだけ力を入れてらっしゃると、株主総会にしても招集通知にしても、株主様からも好意的な反応をたくさんいただけそうですね。

大辻:
はい、おかげさまで株主様の方からは「見やすいね」とか「よくわかりやすい。本当に頑張って作ってくれているね」といったご評価をいただきますし、株主様だけでなく、投資家様や他社のIR担当者様からも結構見て頂いていまして、そういったご評価を頂いているのは本当にありがたいお話だと思っています。

酒井:
当社は本当に、オープンすぎるくらい、オープンな会社です。
社長の中山も、社員の給料袋以外は見せるなんて言っているぐらいでして(笑)。
同業他社の方が物流センターを見たいとおっしゃれば、見学していただいていますし。
IR担当者としましては、すごくありがたい環境ですね。

―― 今後に向けた個人IRの取り組みは?

酒井:
昨年から、株主様向けの物流センター見学会を開始するようになりまして、今年は、795通の応募を頂きました。仙台・千葉・愛知・神戸の4か所で開催し、全国から計150名の方に来ていただいく予定です。

当社の株主様に理解を深めていただき、より長く持っていただきたいということもございますし、来ていただいた株主様から周りの方に広めていただき、当社を世に知っていただいて、新たな株主様を増やしていければとも思っております。

―― 本日はありがとうございました!