まだ記憶に新しい東日本大震災、液状化した地盤が原因で家が傾いてしまったニュースを見た方も多いと思います。

「地震に強い家を作る」――そのために土地(地盤)を調査し、地盤に合った強化対策(地盤改良)を行う。そんな地盤の専門家企業がサムシンググループ。グループを率いるのがサムシングホールディングス株式会社です。

創業時に「業界全体を敵にまわすぞ」とまで言われた『地盤の視える化』を実現する同社の事業は、国内だけでなく、地震が多い東南アジアにも進出しました。同社の現在から目指す姿まで、管理本部マネージャーの井上さんにお話をうかがいました。

これから家を建てる方、既に家をお持ちの方にも是非読んで頂きたいインタビューです。

Q1: 御社のビジネスは何ですか?わかりやすく教えて下さい

Q1-1:事業内容を教えてください。

井上:
主な事業は、戸建て住宅及び小規模商業施設を対象とする「地盤の調査」と「地盤の改良工事」です。当社グループでは、これらを含む「地盤改良事業」が、連結売上高の9割超を占めています。

建物を建てることで荷重が加わった時に、果たして地面がその重さに耐えられるのか。あるいは地盤沈下に対してどのぐらいの抵抗力があるのか。そういった地面の「体力」(地耐力)を測定するのが地盤調査です。

地盤調査の結果、荷重がかかっても耐えられるということであれば、そのまま建物の基礎工事に入ることができるのですが、ご存じのとおり日本は軟弱地盤が多いため、荷重がかかると(土地が)沈んでしまうというケースもあり、そういった場合は、地盤改良工事で地盤を補強してから建物を建てることになります。

既に建っている建物でも、液状化などで地盤が沈下し、建物が傾いてしまった場合は、それを正常な状態に戻す「修正沈下工事」も行います。

セグメント 主な事業の内容 売上割合(%)
地盤改良事業 住宅地盤調査、住宅地盤改良工事、沈下修正工事、擁壁工事、
測量、地盤関連業者に対する業務支援、太陽光発電設備工事
96%
保証事業 住宅地盤保証、住宅完成支援サービス 4%
地盤システム事業 各種システムのレンタル・販売等 電子認証サービス
その他の事業 住宅検査関連業務、外構工事、
東南アジア事業会社への投資及び経営管理等

※売上割合はインタビューにて伺った数値です。

Q1-2:ここ数年の売上成長が大きいですね。この要因は何ですか?

井上:
2010年8月期以降の成長のきっかけとなったのは、2009年10月に施行された住宅瑕疵担保履行法です。

住宅瑕疵担保履行法とは、新築住宅を供給した場合、事業者はその後10年間にわたって、「構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」に欠陥(これを瑕疵と言います)が生じた場合に責任を確実に履行させるために、事業者が「保険」もしくは「保証金の供託」のいずれかの措置をとることを義務化したものです。

供託というのは予めお金を預けることになりますから、事業者さんの側としては、保険を選択される場合が多く、その保険加入にあたっては「地盤調査の結果をエビデンス(証明書)として出してください」という条項がついています。

かくして、当社の地盤調査(場合によっては地盤改良も)への需要が大きく伸びてきた――これが、マーケットがシュリンクする中で、私達のトップライン(売上高)が伸びてきた背景にあります。

編集室注:住宅瑕疵担保履行法について、より詳しくはこちらのサイト(住宅瑕疵担保責任保険協会) をご参照ください。

Q1-3:2011年3月の東日本大震災も、成長を加速させている要因なのでしょうか。

井上:
はい。震災後に、液状化被害が大きかった千葉県浦安市などを中心とする地域で沈下修正工事を多くお手伝いさせていただいたことに加え、震災を機に高まった「地盤の安全性への意識」は、地盤調査へのさらなるニーズを生んでおります。

震災後、地盤に対するニーズは「高品質」と「低コスト」に二極化しています。当社はこれらのニーズに精一杯お応えすべく、地盤調査、地盤改良の低コスト化と高品質な地盤改良の双方に貢献する技術開発を進めてきました。こういった対応力も、当社への需要を高めている要因と考えております。

住宅市場の動向と当社の取り組み

(クリックして画像を拡大 2013年12月期 第2四半期決算説明資料:P20より引用)

Q2: 御社の強み、他社との違いはどこにあるのでしょうか?

Q2-1:Q1-2で「建物保険に加入するにあたって地盤調査のエビデンスの提出が必要」というお話がありましたが、そもそも地盤調査というのは、地面の中のことなのでどこまで信頼できるのかわからないという面があるのではないでしょうか。

井上:
そのご心配はよくわかります。当社の創業社長である前 俊守は、当社を起業する以前は建設系の商社に勤めておりましたので、それこそ、「現場に(調査の人が)誰も来ていないのに、報告書だけは来る(提出される)」といった話から、不正・改ざんまで、地盤調査業界の不透明さについては多くの状況を見聞きしてきました。

だからこそ、当社の「地盤システム事業」では、タイムスタンプ付きの地盤調査報告書――地盤調査報告をリアルタイムで電子認証し、不正や改ざんを防止するシステムを導入しているのです。

住宅地盤第三者認証システム

(クリックして画像を拡大 2013年12月期 第2四半期決算説明資料:P13より引用)

編集室注:

直近決算期である2012年12月期の有価証券報告書では、「地盤システム事業」について下記のような記述がなされています。

【セグメント情報】1.報告セグメントの概要より
従来は「その他」に含まれていた「地盤システム事業」はその量的な重要性が増したため、当連結会計 年度から、報告セグメントを従来の「地盤改良事業」及び「保証事業」の2区分から、「地盤改良事 業」、「保証事業」及び「地盤システム事業」の3区分に変更しております。

第2【事業の状況】1.【業績等の概要】(1)業績 より
(3)地盤システム事業 顧客層の拡大を反映して、地盤調査会社向けに提供する地盤データシステム「G-Webシステム」の売上高が順調に増加しました。また同システムの売上増に伴い、地盤調査機のレンタルも増加しました。 この結果、地盤システム事業の売上高は91,418 千円(前期比 13.1 %増)となりました。

Q2-2:地盤改良工事についても同様の工夫がなされているのですか?

井上:
はい、その通りです。
最もポピュラーな工法である「柱状改良工法」(セメント系固化材と土を混合して地中に改良体を形成する工法)を例にとってご説明しますと、通常であればセメントや水の排出量、何mの位置で今攪拌しているのか、混ぜるスピードはどのぐらいなのかといった工事の状況は外からはまったくわかりませんし、見ることもできません。

しかし当社では、すべての施工機材に施工管理装置をつけていますので、施工状況を数値データで把握することができます(リンク先:施工管理装置による[地盤の視える化])。当社はそれらをすべてお客様に開示すること、いわば「地盤の視える化」によって、お客さまに安心を買っていただいているのです。

Q2-3:地盤の「視える化」は、住宅のエンドユーザーである個人にとっても有り難いですね。

井上:
その通りです。実はこの施工管理装置、当社の社長が前職の商社時代に携わった製品なのですが、いざ売りに行こうとしたところ「こんなものを作ったら業界全体を敵にまわすぞ」と忠告を受けたのだそうです。

ですが彼は「いや、絶対これはいける。ユーザビリティを意識した商品が今後勝っていかなければいけない。だって、そこに住まわれるのはエンドユーザーなのだから」そう確信し、サムシングを創業いたしました。
つまり、エンドユーザー様に安心と信頼をお届けすることは、当社が創業以来一貫して大事にしている価値なのです。

地盤調査、地盤改良工事の他にも、エンドユーザー様のご安心のため、当社グループでは住宅瑕疵担保責任保険ではカバーされない不同沈下に起因する住宅建物部分・地盤の補修工事費用を保証する「保証事業」も行っております。これは業界初の取り組みで、過去10年間に6万棟以上の保証実績を作っております

Q2-4:保証事業の場合は、事故が起こらなければそのまま利益になりますね。 これは御社グループの利益構造に影響を与えているのでしょうか。

井上:
そうですね。中核事業である地盤調査や地盤改良工事は労働集約的なビジネスですので、利益率は決して高くはないのですが、保証事業は利益率が高くなっております。

逆に言えばこの事業の利益率の高さは、事故が起こらないようなしっかりとした調査や工事をしているということ、つまり当社の品質を表していますし、調査・改良工事から保証までワンストップでお手伝いできることも強みとなっています。

※グラフは有価証券報告書を基に編集室にて作成

Q2-5:競合他社の状況と、御社のポジションについて教えてください。

井上:
業種柄、コンペティターは地域ごとにあります。ですが、その中で10億円の売上規模を持つ会社は20社ぐらい、さらに住宅に特化した会社で言えば5社くらいしかありません。トップ企業の年商は100億強。当社は今、これに次ぐ規模となっております。

Q2-6:その急成長の理由は何ですか?事業環境以外にどのような要因があるのでしょうか。

井上:
「スピード」だと思います。当社は、経営陣が常に現場の掌握に努めております。

意思決定の遅れは開発の遅れにつながり、社会が求めるものとの間にタイムラグを生じさせます。
せっかく開発したものが「何それ?」という状況になってしまう、そういったことのないように、当社は意思決定の速さをKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)としてかなり重視してきました。

意思決定の速さに技術力が追いついてきたことで、研究開発のペースも格段に上がっています。Q1-3でご説明した新技術の開発や、昨年1年間で3つの特許を取得したことなどは、その証左と言えるでしょう。

Q3: 事業環境とその対応は?

Q3-1:今後の事業環境についてどう見ておられますか?
現在は東日本大震災後の地盤への意識の高まりに加えて、消費税の駆け込み需要等のプラス要因がありますが、その後の反動減や、長期トレンドとしての新築住宅の減少といったマイナス要因もあると思いますが。

井上:
(増税の)駆け込み需要や反動減については、(プラス要因とマイナス要因を)ならせば全体としてはほぼフラットになりますから、一喜一憂せず計画しています。

住宅の地盤調査・改良に関しましては引き続き一定の需要がありますが、長期トレンドで見れば年間80万戸程度で推移していくだろうと見ております。

Q3-2:Q3-1の事業環境認識を踏まえ、どのような成長戦略をとっておられるのですか?

井上:
当社は、「グローカル(=グローバル+ローカル)企業への成長」を中期テーマに掲げ、既存事業のシナジーと新規事業の拡大で成長を図っております。

中期経営計画

(クリックして画像を拡大 2013年12月期 第2四半期決算説明資料:P46より引用)

まずは「ローカル」の主な戦略についてご説明しますと、地盤改良事業については、地域密着型でニーズに対応することや、大型工事の受注拡大がそのひとつとなります。

これまで当社は住宅や小規模の建物(コンビニエンスストアやアパートなど)の地盤調査・工事を主体としてきましたが、今後はもっと規模感の大きな建物に対応出来るよう、直近で技術開発もいたしました。
これにより、事業全体を成長させつつも、現在は地盤改良事業全体の約9割を占めている「住宅」ですが、「非住宅」の割合を4割まで引き上げていきたいと考えております。

営業も一層強化していきます。
Q2-5でエリアごとに競合企業さんがありますと申し上げましたが、この理由のひとつに、地域によって気候や土の質が違う、その結果、最適な建物の材料や工法も異なっているということがあります。
我々は、そのマーケットに自分たちで入りこみ、本当のニーズは何なのかをしっかり掴まないと、(当社の顧客である)工務店様、設計事務所様、建設会社様のご要望にお応えすることはできないのです。
ですから、それぞれのエリアに出店し、エリアごとのニーズに合った取り組みの強化、つまりローカルに徹することが重要です。

Q3-3:大手の住宅メーカーさんよりも地場の工務店さんが強い市場なのでしょうか?

井上:
圧倒的に強いですね。住宅全体の構成で見ますと、ハウスメーカーさんの割合は全体の10%程度に過ぎません。我々は(業界の)後発組ということもあり、1件1件、「人と人」との信頼関係を作っていくのは非常に大変です。

ただ、今は時代の節目と言うのでしょうか、これまでマーケットをリードされていた方々がリタイアされたり、二代目に代替わりされたりといったケースも増えており、市場も少しずつ変化していることは感じております。

Q3-3:今後、特に重点的に取り組む地域はありますか?

井上:
今後強化していきたいのは名古屋から西のエリアですね。
私どもは比較的東北地方に強く、関東でも昨年1店舗を出店したのですが、西は非常に弱いですので、ここを強化していきたいと考えております。

Q4: 今後の成長戦略は?

Q4-1:それでは、グローバル戦略についてお話ください。

井上:
3年前にベトナム事務所を置いてリサーチを開始しました海外事業が、ようやく今、少しずつ形になりつつあります。日経産業新聞に掲載されたこちらの記事(8/20朝刊)も併せてご参照いただければと存じますが、まずはベトナムで、住宅や商業用地の調査・改良工事を開始いたします。

海外事業

(クリックして画像を拡大 2013年12月期 第2四半期決算説明資料:P46より引用)

ベトナムにおいては、日本の電鉄会社がベトナムプロジェクトに力を入れておられますし、日本の大手ディベロッパーもホーチミンの開発に乗り出すなど、今後はかなりのボリュームで住宅建設が予定されていますので、当社はそういったプロジェクトに対し、これまで培った技術をご提供していきます。

Q4-2:こちらの記事(日経産業新聞 9/5朝刊)によれば、住宅建設事業にも乗り出されるとか。

井上:
ベトナムの建物は今、多くの建物がレンガで造られています。これはコストを優先してきた結果なのですが、一方で今、ベトナムでは環境問題が取りざたされており、レンガの使用が問題になりつつあります。
こうした中で当社は、レンガを代替できるローコストな建物の躯体(建物のパネル)の生産と供給を進めていくことを計画しております。

もちろん、建物に関しては未経験の部分ですから、まずは日本国内でパネル技術の特許を持っておられる企業とアライアンスを組んでおりますので、その技術をベトナムから、そしてASEANを中心とした各国へと展開したいと考えております。

今、日系企業様が取り組んでおられる住宅プロジェクトは、富裕層の方々――所得水準が日本と変わらないか、あるいはそれよりも高いような方々向けの建物が中心となっておりますが、我々はそうではなく、多くの方々のライフスタイルをより良く変化させていくような、そんな仕事をしていきたいと考えます。

Q5: 個人向けIRの方針および個人投資家へのメッセージをお話し下さい。

―― それでは最後に、個人投資家へのメッセージをお願いします

井上:
我々サムシングホールディングスは、主に、地盤調査・改良工事をする中で、お住まいを通じて、皆様が“安心”“安全”に日々暮らしていただくためのインフラ作りをする企業です。

当社の社名である「サムシング」には、フランス語で「キラリと光る」という意味があります。 我々は“目を輝かせながら”仕事に邁進すること、そして 常に目標高く、志高く、一人一人の社員が目標を持って、それにコミットし続けることで、新しい価値の創造し、社会に貢献してまいります。

まだまだ未熟な会社ではありますが、今後ともご支援のほど宜しくお願いいたします。

―― 本日はありがとうございました!