人材派遣といえば、事務処理派遣が真っ先に思い浮かびますが、携帯電話販売、コールセンター、最近ではコンビニや小売・飲食店まで、人材派遣の範囲は広がっています。

主力の人材派遣・アウトソーシングに加え、障がい者雇用支援、シニアの顧問派遣まで、働きたい人に就業機会を作り出す株式会社エスプール。今年からは再び成長フェーズに入っています。

「エスプールさんのスタッフは、とても礼儀正しい」と言っていただくことが多いと伺いましたが、ここに同社の哲学が込められていると感じます。
同社の現在から目指す姿まで、IRを担当する社長室の荒井さんにお話をうかがいました。

Q1: 御社のビジネスは何ですか?わかりやすく教えて下さい

Q1-1:御社の事業内容は「人材派遣サービス」と「アウトソーシングサービス」 に大別されるそうですね。まずは人材派遣事業の特長についてお聞かせください。

荒井:
派遣会社は、あらかじめ派遣スタッフの方々を集めておき、顧客である企業様から「こういうスキルを持った人を派遣して欲しい」というご依頼に応じて自社のデータベースから人選し、派遣するというのが、いわゆる事務派遣を行っている会社の仕組みですが、我々の場合はまったく違います。

たとえば家電量販店の携帯電話売り場の課題が「どうすればもっと売上があがるのか」であれば、我々は売場をまるごとお引き受けし、しっかりと教育を施したリーダー人材を配置し、創意工夫しながら契約を取ることでその課題を解決していきます。

当社には、大手携帯電話販売代理店の接客コンテストで優勝したスタッフが在籍するなど、教育には特に力を入れていますね。

お客様の課題にコミットして成果を出すのが、エスプールグループの人材派遣(セグメント名は「人材ソリューション事業」)の特徴です。

事業概要

2013年11月期 第2四半期決算説明資料:P35より引用)

Q1-2:どのような分野の人材派遣が多いのですか?

荒井:
Q1-1でご紹介した携帯・スマートフォン販売支援業務の他に多いのは、コールセンター業務ですね。
これも単なる派遣ではなく、スタッフの定着率が悪い、受電率が低いといった特有の課題を解決できるように取り組むところが、お客様からご評価をいただいています。

社内では「コミュニケーション系」と呼んでいるのですが、当社グループは比較的、人とのコミュニケーションが必要となる業務の派遣に強いですね。

Q1-3:アウトソーシングサービスはどのような分野に強いのですか?

荒井:
物流倉庫内の作業などのロジスティクス(物流)業務です。

もともとはこれもグループ型派遣から発展したサービスとなりますが、創業以来続けてきたことで業務改善やコストの削減、作業品質の向上などのノウハウがたまり、現在では完全に請負で業務を行うようになっています。これがエスプールのロジスティクスアウトソーシングです。

ロジスティクスアウトソーシングは、ビジネスソリューション事業セグメントの売上の約8割を占めています。

Q1-4:ロジスティクスアウトソーシングの具体例を教えてください。

荒井:
2種類あります。
ひとつは、当社自身が倉庫を借り上げ、そこに複数のネット通販企業様の荷物をお預かりして、商品の発送代行を行うサービス(ネット通販の発送代行サービス)です。現在、約50社の通販企業様の荷物をお預かりしています。

もう一つのサービスは、お客様である物流会社のセンターをお客様に代わって当社が運営するサービス(物流センターの運営代行サービス)です。たとえば、大手食品卸会社の物流会社のセンターなどを運営しています。

Q1-5:第2四半期説明会で「第3のサービス」として「障がい者雇用支援サービス」が紹介されていました。これはどのような事業なのですか?

荒井:
企業の障がい者雇用をサポートするサービスです。
障がい者雇用支援サービスは、障がい者の雇用に困っている企業様に対して、子会社のエスプールプラスが運営する企業向け貸農園(わーくはぴねす農園)を利用した知的障がい者の雇用支援を行っています。

お客様企業は、農園で障がいを持つ方々を雇用することで、障害者雇用促進法(厚生労働省ホームページ) が定める法定雇用率の目標を達成することができます。

障がい者雇用支援サービスの様子

2013年11月期 第2四半期決算説明資料:P18より引用)

Q2: 御社の強み、他社との違いはどこにあるのでしょうか?

Q2-1:色々な事業があるように見えますが、共通点はどこにあるのですか?

荒井:
企業の課題にフォーカスし、成果を出すこと。そして、雇用機会に恵まれない方々のためにやりがいのある仕事を生み出すこと。この2つを両立している点が共通しています。
この2つの点は、当社の創業の経緯に深く関わっています。

代表の浦上が当社を創業したのは、1999年。いわゆる就職氷河期の時代でした。
当時、浦上は家庭教師センターに勤めていたのですが、そこでアルバイトをしていた学生達が、優秀であるにもかかわらず就職できない、あるいはやりがいのある仕事に就くことができずに就職浪人してフリーターになっている状況を目の当たりにし、その状況を何とかしたいと考えました。
ですが、企業はアルバイト経験しかない若者を雇おうとはしない。どうすれば良いのかと悩んだ結果、浦上が考え出した解決策が「アウトソーシング」でした。

人を雇ってもらうのではなく、ノンコア業務を切り出し、それを当社で引き受け、やる気のある若者に任せる。
そして、そこで働く若者には仕事を通じてやりがいや成長の機会を提供しつつ、顧客である企業に対しては成果を出す。
この考え方は、今も当社の原点となっています。

我々が得意とするコミュニケーション系の派遣業務やロジスティクスアウトソーシングは、労働集約型の現場が多く、我々の側にすぐれたリーダー人材と適切な教育システム、現場運営のノウハウがあれば、人材を育成しつつ成果を出すことができます。
障がい者雇用支援サービスも、適切な仕組みと技術を導入することで、農業や知的障がい者の雇用ノウハウがない企業でも、農業を活用して障がい者を雇用できることを可能にしました。

その他にも、シニアの方々に活躍していただける顧問派遣サービス(高い専門性を持つシニア人材が中小・ベンチャー企業を支援)や、主婦の方々にも働いていただきやすいマーチャンダイジングサービス(スーパーやドラッグストア等の店頭での販売促進活動を通じて、商品の売上アップやシェア向上を支援)などもあります。 

もともとは若者の雇用創出を社会的使命としてスタートした当社ですが、このように現在では、障がい者、シニア、主婦など、社会的に就職機会の少ない方々の雇用機会の創出に力を入れております

エスプールの社会的意義

(個人投資家向け説明会資料より引用)

Q2-2:第2四半期説明会で「第3のサービス」として「障がい者雇用支援サービス」が紹介されていました。これはどのような事業なのですか?

荒井:
こちらの資料にも競争力の源泉について色々と説明させていただきましたが、やはり農業と障がい者雇用を結びつけ、それを可能にする仕組み――養液栽培という農業技術の習得や知的障がい者が働くことができる農園の運営ノウハウ、行政や障がい者の関係団体との協力関係の構築まで――を作り上げたことだと思います。

野菜の栽培は、働く知的障がい者の方々がやりがいを得られるという点でも非常に優れています。知的障がい者の方々の典型的な仕事は、書類整理などの単純作業が多く、もちろんそれは致し方ないという企業側の事情もあるのですが、そこで働く方々がやりがいを感じられるかというと、なかなか難しい面があります。

ですが、野菜の栽培は違います。
栽培技術を修得する喜び、自分が手をかけることで野菜が成長する喜び、収穫の喜び、そして食べてもらえる喜び・・・ 私も時々農園を訪問するのですが、働く方々の活き活きした姿が印象に残ります。

農園を開設して4年が経ちますが、現在退職者が0名であることも我々の自慢となっています。障がい者雇用支援サービスの活用を検討中の企業様も同じ感想をお持ちになるようで、そこは非常にご評価いただいています。

こうした当社独自の強みをさらに強化すべく、昨年(2012年)から、農園を利用するお客様企業への就職を希望する障がい者の方々への職業訓練を支援する就労移行支援サービスも開始しました。これによりさらに当社サービスのビジネスモデルは強化され、事業の価値も高まったと考えております。

Q2-3:ロジスティクスアウトソーシングサービスの強みについてもお話ください。

荒井:
ネット通販の発送代行サービス
当社が培ってきた倉庫運営のノウハウを活かし、複数の通販企業社様の業務を一手にお引き受けすることで、それぞれの単独では負担が大きくなりがちな物流関連の業務や費用(人件費・配送費、家賃、システム費等)の負担を削減することができます。
さらに、土日の受注・配送や梱包などのきめ細かな対応も行うことで、エンドユーザーである個人の方々からも高い評価を得ており、これが通販企業様の満足度向上と新規顧客獲得につながっています。

ネット通販の発送代行サービスの実績事例

(個人投資家向け説明会資料より引用)

もともと、企業がアウトソーシングを利用する目的は2種類あります。
ひとつは、外部に専門的な知識を持っている専門家に任せること。もうひとつは、労働集約型の作業の場合、集約することでコストを下げられるのでその効果を期待して。我々の発送代行サービスは--障がい者雇用も実はそうなのですが--この2つの効果を同時に追求しています。

 

物流センターの運営代行サービス
物流センター内での作業については、様々な業務改善の手法があり、当社ではコンサルティングから改善の実行までをワンストップで手掛けていますが、システム化できずに、人の手を必要とする業務も多くあります。
そういった部分は結局、人の経験が最大の効率化になるのです。当社の強みは、業務改善の実行と経験豊富な人材を育てることが両方できることにあります。

当社には、アルバイトスタッフでも個人の「スキルマップ(習熟表)」を持っており、「次は◯◯を出来るようにしよう」という目標を設定しています。習熟度に合わせて時給もあがる仕組みとなっていますが、昇給そのものよりも、達成感や成長を実感できること、少しずつ責任のある仕事を任せてもらえることが、大きなモチベーションに繋がっています。
人材育成をしっかりと行い経験者をどんどん増やし、業務改善も継続的にやっていくことができる点については、スゴイですねとお客様からご評価いただいています。

物流の一番大きな団体であるJILS(公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会)、ここに所属している派遣会社は非常に少ないと思いますが、当社はその中の1社で、「全日本物流改善事例大会」にも出場し、入賞した実績もあります。

Q3: 事業環境と対応する成長戦略は?

Q3-1:派遣法改正の方向性が見えてきました。御社の人材派遣事業に対する影響は?

荒井:
雇用の流動化を目的とした規制緩和が進むことは、人材業界にとっては追い風になると認識しております。今回の法改正云々ではなく、中長期的な労働市場の変化という意味で大きく注目しています。

先日、生産年齢人口(15〜64歳)が8000万人を割ったという報道がありましたが、日本国内の労働力人口は今後絶対数が減っていく、そうなれば人材の流動化は不可欠です。若い人、主婦、シニア、そして外国人、色々な人材を活用していかなければ日本は成長できないと思っていますし、その意味では雇用形態としての人材派遣というのは伸びていくでしょうし、今回の26業務の撤廃も、その大きな流れの一部だと思っています。

Q3-2:Q3-1の事業環境を踏まえて、今、どのような戦略をとっておられるのですか?

荒井:
リーマンショック後は人材派遣のマーケット縮小が著しく、我々も支店を統廃合するなどで対応してまいりましたが、景気がアベノミクス効果で感覚的に上向いていますし、こういった規制緩和も始まったこともあり、需要は上向いています。

当社グループも年初(2013年初)から再度拡大戦略をとり、採用拠点の新規出店を進めています。1月には銀座・池袋、7月にはコールセンターの進出が著しい沖縄に出店しました。

Q3-3:「人を集める」拠点が必要ということは、人材の確保が難しくなっているのですか?

荒井:
特に販売系を中心とするサービス業ではその傾向が強いですね。
サービス業の場合、相対的に自給がやすいケースが多く、景気が上向くと人材の確保が難しい側面があります。アパレルのメーカーなどは、自社グループ内に人材子会社を持っていて、そこから人材の供給をすることも多かったですが、それも法規制(「専ら派遣」の禁止)で難しくなっています。

シフト組みが複雑な業種の場合、人繰りの悩みが深刻です。多めに人を確保しておいてシフト調整を行わないといけないのですが、人材の確保ができなくなるとそれも難しくなりますので。

Q3-4:Q3-3を踏まえて、今後はどのような派遣に力を入れていくのですか?

荒井:
今期からコンビニのストアスタッフ派遣を開始し、力を入れています。
通常であれば、店舗ごとに多めに人材を抱えて店長さんがシフト組みをしているところを、我々が人材をストックしておき、複数の店舗に人材を提供していく仕組みを、現在東京地区で構築を進めています。

大阪では、上期に市営地下鉄が駅の売店を民間のコンビニ事業者に委託するにあたり、当社がその派遣を請負うことができました。コンビニさんも今、条件の良い出店立地がなくなり、公共交通機関等との結びつきは強まっていくでしょうから、今後、全国展開もあり得ますので、この分野には期待しています。

Q3-5:ロジスティクスアウトソーシングの事業環境と取り組みについてお話ください。

荒井:
ネット通販の発送代行サービス
ご存知のようにネット通販の伸びは著しいものがあります。市場自体も伸びていますし、伸び盛りの会社さんも多いですので、化粧品やアパレル関連を中心にまだまだ伸ばしていける余地が大きくあると見ています。

これらの需要に応えるため、今年(2013年)8月には茨城県つくば市に新センターを立ち上げ、稼働を開始しました。つくばECセンターでは、即日配送などの利便性などの価値は保ちつつ、コスト面でもより満足いただけるようになっています。

既存のお客様の一部がつくばに移動することにより、従来の平和島のキャパシティが空いてきましたので、そこにはまたスタートアップ段階のお客様を獲得していく予定です。

 

物流センターの運営代行サービス
こちらも好調です。圏央道の開通を機に大型の物流センターの開設ラッシュとなっているほか、ネット通販業界でも大型物流センターの立ち上げが増えていますが、センターをアウトソーシングで運営する専門業者は意外と限られています。

実は物流センターの運営は、意外と物流会社とってはノンコア業務と区別されるケースが少なくないのです。輸送車両を保有する物流会社によっては、輸配送に重きを置くケースも多くあり、センター内の業務はアウトソーシングされるケースが高いことから、当社への相談も増えております。この分野については、さらに伸ばしていくことができると考えています。

ロジスティクスアウトソーシング 下期事業方針

2013年11月期 第2四半期決算説明資料:P25より引用)

Q3-6:障がい者雇用支援事業の事業環境と取り組みについてもお話ください。

荒井:
今年(2013年)4月の障害者雇用促進法の改正(法定雇用率の引き上げ:1.8%→2.0%へ)の影響が大きく、需要は非常に強いですね。

今、1ヶ月に2回ほどセミナーを実施しているのですが、コンプライアンス意識の高い大手企業様を中心にたくさんのご参加があります。
既存の雇用方法では、障がい者雇用が間に合わないという企業様が多く、ご相談からご決定までのリードタイムが非常に短くなっているのも最近の傾向です。

おかげ様で、今上期のうちに既存の農園については完売いたしましたので、千葉県内に新たに2拠点の開設を進めております。就労移行支援についても千葉県内に2箇所拠点を開設致します。

障がい者雇用支援サービス 下期事業方針

2013年11月期 第2四半期決算説明資料:P27より引用)

現在、精神障がいを持つ方々の就労も国の課題となっており、今年の障害者雇用促進法の改正によって精神障がい者の雇用が義務化されましたので、当社としても、知的障がい者の方々だけでなく精神障がい者の方々の雇用についても支援できればと考えております。

Q4: 今後の成長を見据えて取り組んでいることは?

Q5:それでは最後に、個人投資家へのメッセージをお願いします。

荒井:
我々エスプールグループは、雇用機会に恵まれない人の雇用を創出すること、そして、お客様企業の課題を解決するビジネスパートナーとなること、この2つのミッションを実現すべく、日々精進しております。
ぜひ皆様にも応援していただきたく、どうぞよろしくお願いいたします!

―― 本日はありがとうございました!

 

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証券アナリストの視点から、2013年2Qの業績を元に分析されています。
企業調査レポート:エスプール」 (2013.8.21公開 : 株式会社フィスコ作成)