BS、CSで衛星放送を展開する株式会社スカパーJSATホールディングスは、有料多チャンネル時代の到来と、衛星通信需要の多様化という大きな転換期を迎えています。

今回は、同社の広報・IR部の新本さん、朝倉さんに、意外と知られていない衛星事業から、多チャンネル事業の将来性まで、お話をうかがいました。

Q1: 御社のビジネスをわかりやすく教えて下さい。

新本:
私たちのビジネスは、大きく分けて2つあります。

日本最大の有料多チャンネル放送であるスカパーを運営する有料多チャンネル事業と、アジアNo.1の通信衛星数と世界第5位の売上を持つ宇宙・衛星事業です。

スカパーJSATホールディングスの事業

―― 2事業それぞれが日本でNo.1なのですね。

朝倉:

当社は、複数の民間衛星通信事業者と多チャンネル放送のプラットフォーム事業者の集約を経て「強い企業」になった者同士の経営統合で誕生しました。

いずれの事業も設備投資やノウハウ等参入障壁が高いため、このポジションは容易に変わることはありません。

 

―― 2つの事業を同時に営む御社の特徴はどういったものですか?

新本:
両事業を共通して支えているのが、アジア最大規模である16機の通信衛星です。

16機の通信衛星

また、これら2つの事業を持つことで業績の安定性が高まるという利点もあります。

特に宇宙・衛星事業については、放送や通信のほか社会のインフラを支えるものですので、契約は長期的であり、安定的・継続的にキャッシュを生み出します。

有料多チャンネル事業についてもストック型のビジネスであり、加入者数が短期間に急減するということはまずありません。ですから、業績の大きなブレは基本的には起こりにくい。

それが当社のビジネスの特長のひとつとなっています。

Q2: 事業環境をどのように見ていますか?また、対応する戦略は?

―― 御社の事業の安定性については理解しました。成長性についてはいかがですか?

新本:
今、当社は2事業それぞれに更なる成長が見込めるフェーズに差し掛かっています。

まず、有料多チャンネル事業については、デジタルテレビの普及が大きな追い風要因となっています。当初はスカパー(※スカパー光を除く)を視聴いただくためには、まず専用のチューナーを購入していただかなければなりませんでした。

しかし、昨年7月の地上波テレビ放送のデジタル化完了までに、日本のほぼ全ての世帯のテレビがデジタルテレビに変わりました。
これはスカパー用のチューナーが自動的に全家庭に行き渡ったという事です。
あとはアンテナを付けるだけでスカパーが楽しめるという、加入者を獲得する上でかつてない好条件が揃った今、私たちは、この好機を最大限に活かすための取り組みを進めています。(詳細はQ3へ)

―― 有料多チャンネル放送の成長性についてどう評価しておられますか?

朝倉:
現在、有料多チャンネル放送の日本での世帯普及率は25%程度ですが、英国では50%を超えていますし、米国では90%にもなっています。これら各国と比較すれば、ケーブルテレビも含めた日本の有料多チャンネル放送市場には、まだまだ成長の余地があると考えています。

―― 宇宙・衛星事業のほうはいかがでしょう?成長要因として何があるのでしょうか。

新本:
宇宙・衛星の方も、東日本大震災後に「BCP(事業継続計画)*」ニーズが高まっていることに加え、「モバイル」「グローバル」の分野でも新たな需要が生まれつつあります。

*BCP:災害や事故などの予期せぬ出来事が発生した際にも重要な業務が中断しないように、また、中断した場合にもできるだけ早期に回復できるようにするための計画。

「モバイル」の分野では、船舶や航空機の中での高速インターネット接続サービスにも利用されています。

「グローバル」に関しては、今年の5月16日(日本時間)に中近東から南西アジア、東南アジア、オセアニアまでカバーできる通信衛星「JCSAT-13(衛星名JCSAT-4B)」を打ち上げました。すでに先日、LIPPOグループというインドネシアの財閥系のグループより、インドネシアでスカパーのような衛星放送を開始するための大口契約をいただいています。

アジア、特に東南アジアでは経済発展にともなって多チャンネル放送の需要が増えつつあり、今後にも期待しています。

―― 多チャンネルを衛星で実現する強みは何でしょう?

新本:
インドネシアは1,000以上の島で成り立っている国ですから、ケーブルを敷設するとしたら、それは大変ですよね(笑)。

もうひとつ、衛星には「打ち上げた後でも動かせる」という特長があります。
たとえば、当社では2012年2月にHorizons-2という北米に向けてサービスを提供していた衛星を動かして、ロシアの衛星放送向けにサービスを開始しました

このように、ニーズのあるところにインフラ自体を移動できる、というのは衛星ならではのメリットですし、海外展開では重要な部分と言えるでしょうね。

Q3: さらなる成長戦略は?(有料多チャンネル事業)

―― 中期経営計画では累計加入件数(2012年7月末現在382万8,983件)を2015年度末に400万件以上にまで増やしたいという目標を掲げておられますが、それを実現するためにどのような施策をとっておられますか?

中期経営計画

新本:
色々な取り組みがありますが、なかでも重要なのが「お試し視聴機会」の充実と「スカパーHD(ハイビジョン)への移行促進」の2つですね。


前者については、今年9月末までは無料で視聴いただける「BSスカパー」というチャンネルをご用意しています。

「スカパーe2」のショーケースとしての役割を持つこのチャンネルでは、色々な番組の見所やドラマの第一話を放送するなどして、視聴のきっかけづくりをしています。

―― スカパーHDへのシフトを急ぐ理由は何でしょうか?

新本:
一番の理由は、せっかくのデジタルテレビで高画質のコンテンツを加入者様に観ていただき、もっと楽しんでいただきたいということです。
当社が特に強い分野、スポーツ、映画、音楽といったコンテンツは、高画質・大画面のハイビジョン放送で観ると感動が大きく違います。これにより、デジタルテレビ購入をきっかけとした新たな契約者獲得を目指しています。

一方で、既存のスカパー加入者がスカパーHDに乗り換えることで解約率の低下と、加入者あたりの契約チャンネル数の増加も見込んでいます。

また、ビジネス上のメリットもあります。

これまでの当社の事業モデルは、ショッピングセンターのそれと似ていました。
加入者からの売上は、まずコンテンツ/チャンネル供給者(ショッピングセンターで言えば「テナント」)が受け取り、その一部が当社の有料多チャンネル事業の収入となり、一方でコンテンツ/チャンネル供給者が当社に支払う衛星回線使用料(ショッピングセンターで言えば「賃料」)が宇宙・衛星事業の収入でした。つまり、チャンネルの契約者数(ショッピングセンターで言えば「売上」)に関係なく、固定費として回線利用料がかかっていました。

しかし現在、移行を進めているスカパーHDでは、加入者からの売上をまず当社がいただき、コンテンツ/チャンネル供給者に仕入代金を支払う、という仕組みです。

これにより、コンテンツ/チャンネル供給者の固定費(衛星回線使用量)負担が減り、その分、各チャンネルのコンテンツをハイビジョン化する投資や、コンテンツ制作費を増額する協力をいただきやすくなります。

ハイビジョンコンテンツが増えれば、加入者もスカパーHDへ移行するメリットが増します。加入者が増えれば、当社が受け取る収入も大きくなります。

―― となると、早期に「スカパーHD」の契約者数を伸ばすことが重要ですね。

朝倉:
その通りです。現在はHDへの移行を促進するため、昨年度の実績は30億円弱、今年度は40億円以上の費用をかける見込みのため、事業単体での損益はマイナスになっています。

しかし移行が完了すればそれらの費用がなくなり、当社の有料多チャンネル事業は、基本的には黒字化する見込みです。

新本:
中期経営計画では2015年度の目標を売上2,000億円、営業利益200億円以上としています。
その段階ではHD化も完了し、半分弱くらいの利益は有料多チャンネル事業の方で出していくという計画です。

だからこそ、今の当社にとって最も重要なのは中期経営計画の早期実現――目標である2015年度よりも前倒しで達成すること――ですし、そのつもりで動いています。

Q4: 個人向けIRの考え方は?

新本:
個人投資家、国内機関投資家、そして外国人投資家のそれぞれを、当社のIR対象の「3つの柱」と位置づけています。
また、有料多チャンネル事業を営んでいる当社では、株主様と加入者様のオーバーラップが当然ありますので、その意味でも、個人の方々を大切にしながらIR活動を進めていきたいと思っております。

―― 御社の株主通信は四半期ごとに発行されていますね。第1・3四半期はWEB版のみとはいえ、これは大変画期的だと思います。
なぜこのような取り組みをされているのか、教えていただけますか?

朝倉:
機関投資家やアナリスト向けには四半期ごとに説明会を開催していますが、一方、個人の株主様には年に1回ないし2回の株主通信しかお送りしないというのでは情報の公平性という意味でどうなのだろうという問題意識がありました。

かといって年に4回の株主通信をお送りするのでは、作る側も受け取る方々も大変ですから、年2回(通期・第2四半期)は紙ベースで株主通信を作成・送付し、第1・3四半期には最新の情報をアップデートしたものをWebでご提供するという方法を続けて4年目になります。

―― 個人投資家説明会については?

朝倉:
東京や大阪だけでなく、各地方都市での開催を続けています。

せっかくスカパーというある程度知名度がある部分は有効に活用しようと思っていますので、個人IRを地方で行う時には、ご当地のJ1、J2チームやプロ野球団などその地域の話題から入ることで親しみを感じていただけるよう心がけています。

新本:
株主様になっていただくことはもちろん、説明会へのご参加を通じてスカパーにも興味をお持ちいただけるよう心がけています。
「スカパー光」のサービスが名古屋で提供開始された時期にあわせて個人投資家説明会を開催したり、地元チームがJ2からJ1へ昇格したタイミングに合わせてホームタウンで説明会を開催するなど、タイミングも考えています(笑)。

―― ロンドンオリンピックの好影響はあるのでしょうか?

新本:
オリンピック自体は放映してないのですが、なでしこリーグは放映していますし、J1、J2リーグも全試合放映していますので、選手の活躍が好影響になる面はありますね。

朝倉:
BSスカパー(BS 241チャンネル)では、8/30から期間中毎日、パラリンピックを無料で放送していますので、オリンピックの盛り上がりからそのままパラリンピックの方を見て頂けると嬉しいなと思っています。

 

―― 本日はありがとうございました!