「シード、コンタクトレンズ♪」というコマーシャルでご記憶の方も多い株式会社シード
日本で最初にコンタクトレンズの研究を開始し、国産メーカーの中で最も早く使い捨てコンタクトレンズを商品化した、業界唯一の上場企業でもあります。

研究の成果やお客様の声をすぐに商品開発や生産へと反映させ、「日本人の瞳に合う」コンタクトレンズを作るために、本社は大学病院の多い東京・本郷に置き、研究所も工場も関東圏に集中させている同社。現在は、1日使い捨てタイプのコンタクトレンズで快進撃を続けています。

今後の成長を見据えて、マーケティング面では海外展開を開始し、研究開発では「つけるだけで花粉症を治療する」コンタクトレンズの実用化にも取り組んでおられる同社の挑戦について、経営企画室の山口さん、大山さんにお話をうかがいました。

Q1: 御社のビジネスは何ですか?わかりやすく教えて下さい。

―― コンタクトレンズのブランド名だけではなく、社名も「シード」なのですね…!
この社名に込められた想いをまず、お聞かせいただけますか?

山口:
シード(SEED)は、「種子」を表します。無限の新分野に種をまき、 結実した成果を収穫し続けることで、皆さまの「見える」をサポートしていきたい。その想いを込めています。

主要製品群

野村IR個人投資家フェア2012 説明会資料 P4より引用)

売上構成比 (2013年3月期 第2四半期) 単位:百万円

野村IR個人投資家フェア2012 説明会資料 P6数値をグラフ化)

―― なるほど、研究開発や新分野への取り組みを重視する考え方を表しているのですね。
日本で最初にコンタクトレンズの研究を開始したのは、御社だとか。

山口:
はい。当社は、1951年に日本で初めてコンタクトレンズの研究を開始して以来、常に「安全と高品質」を第一に掲げ、お客様のニーズに応える様々なコンタクトレンズを開発してきました。

使い捨てではないコンベンショナル(従来)型のソフトコンタクトレンズを、日本製で初めて発売したのは当社ですし、2004年には2週間交換コンタクトレンズ「シード 2ウィークピュア」を、2009年には1日使い捨てソフトコンタクトレンズ「シード ワンデーピュア」を、それぞれ初めて国内一貫生産で発売しています。

その意味では、当社のコンタクトレンズ開発・製造の歩みは、そのまま「日本のコンタクトレンズの進化の歴史」であるとも言えると、そのように自負しております。

―― 「国内一貫生産」も御社の特長なのですか?

山口:
はい。「日本人の眼に合うものをつくる」ため、主力製品については日本国内での製造にこだわっています。

そもそも当社がここ、本郷に本社を置き、研究所と製造拠点をすぐ近く(すべて埼玉県内)に置いているのは、眼科医の先生方からいただくご助言や、得意先の方々からいただくお客様のニーズなどの情報を、瞬時に生産現場へと反映させていくためです。

大山:
当社が2週間使い捨てタイプのレンズを発売した時、当初は1サイズだけで展開していました。
ですが、「もう少しサイズの大きいものがあると良いのだけど」といったご意見を多くいただきましたため、その後すぐに大きめのサイズも発売し、その後は2サイズ展開としています。

他のグローバルメーカーの場合、こういった日本だけのニーズをすぐに商品開発や生産に反映させられるかというと、そこはなかなか難しいかと思いますが、当社はそういったきめ細かな対応で「日本人の眼に合う」製品開発を続けています。

Q2: 御社の強み、他社との違いはどこにあるのでしょうか?

―― 国産メーカーである強みを活かし研究開発力から生産力まで一貫した力を活かす道を選んできた、ということでしょうか。

大山:
その通りです。実は、当社がここ数年進めてきた改革も、その考え方に基づいています。
こちらのグラフでご覧いただけます通り、当社の売上は2002年3月期をピークに大きく減少しているように見えるかと存じますが、この時期は「オプティ・フリー」などのコンタクトケア用品販売による寄与が大きかったのです。

ですが、当社の強みは、あくまでメーカーとしての研究開発力にあります。ここを伸ばしていくため、当社は過去3年間、強みである使い捨てコンタクトレンズ、中でも1dayに特化してきました。

その結果、2008年3月期以降、コンタクトレンズ事業は過去にない成長フェーズを迎えています。
直近の2013年3月期第2四半期決算(=2012年9月末)では、前年同期比で「ワンデーピュア」シリーズの売上は38%増、瞳を大きく見せるサークルレンズ「シード アイコフレワンデーUV」も計画比20%増と順調です。

売上推移

(クリックして画像を拡大:野村IR個人投資家フェア2012 説明会資料 P3より引用)

―― 確かにコンタクトレンズの売上成長は著しいですね!
ところで、なぜ1dayに特化されたのですか?

山口:
日本国内のコンタクトレンズ市場の大半は今、1日使い捨てタイプが占めているんですよ。

やはり日本人の気質というのか、・・きれい好きなんでしょうね。当社はこの市場でまずは10%のシェアを獲得することを目指して、現在、月産1,600万枚体制とするための製造ラインの増設を進めておりますし、来年度には2,000万枚体制への増設が今決まっています。

コンタクトレンズ市場

(クリックして画像を拡大:IRフォーラム2012東京 TEPIA P7,P9より引用)

―― それだけの設備投資が必要な状況であるということなのでしょうか。

山口:
はい。現在はなかなか在庫の確保が難しい状況でして、工場で作ったらそのまますぐ出荷という状態が続いています。
適正在庫の確保はもちろん、今後の国内売上の伸びに対応するためにも、そして海外の方でも上海に加えてシンガポールにも販売の現地法人を設立しましたので、月産2,000万体制は必須だと考えております。

―― 国内の伸びを牽引している製品は何ですか?

山口:
「ワンデーピュア」シリーズですね。
具体的には、潤い成分を加えた “シード ワンデーピュアうるおいプラス”、これは、天然成分のアルギン酸を保存液に加えて潤い効果をアップさせたところ、評価が上がり売れるようになりました。

遠近両用タイプも好調ですし、高度近視対応商品も発売しています。
製品化の前には徹底的に競合メーカーさんのレンズを研究しまして、その中でお客様にとって不便となっている要因を解消し、付加価値を高める形で開発してきました。
最近では、それがご評価いただけるようになってきたと実感しています。

大山:
2012年7月に発売した1日使い捨てカラーコンタクト(サークルレンズ)「シード アイコフレワンデーUV」も今後が楽しみな商品です。

こちらは、年頭に立てた売上計画数値をすぐに達成してしまいまして…急遽、当初の2倍の数値を年度売上見通しとしています。

 

 

シード Eye coffret 1day UV
http://www.seed.co.jp/products/contact/disposable/1day_eyecoffret.html

 

―― パッケージもおしゃれですね!女性が喜びそうです。
「アイコフレ」は、通常使用しているコンタクトレンズから買い替える形になるのでしょうか、それとも“2枚目”として購入される方が多いのでしょうか。

大山:
1日使い捨てタイプを使っておられる方が、特別な時のために購入されるという場合が多いように聞いております。普段は通常の「ワンデー」で、週末は「アイコフレ」で、そういった使い分けをされているのではないでしょうか。

Q3: 事業環境とその対応は? また、それに対応する成長戦略は?

―― 中長期的に見れば国内は少子高齢化と若年人口の減少が見込まれるという中では、こういった「2枚目需要」を喚起して市場を拡大させる商品は重要ですね。
ところで、市場拡大という文脈でひとつ教えていただきたいのですが、最近は近視の低年齢化が進んでいると聞いています。そういった中で、早期からコンタクトレンズを使うという動きはあるのでしょうか?

山口:
そうですね、あると思います。コンタクトレンズの使用開始は、20年程前には中学生からと言われていましたが、今は小学校の高学年からエントリーユーザーとして捉えています。

大山:
昔は使い捨てタイプではなく洗浄してずっと使うというレンズでしたから、子どもにはお手入れができないだろうということで、眼科の先生方も積極的に勧めて来られなかったところがあります。加えて、子どものうちは視力が変わりやすいですから、その意味でも購入後1~2年使い続けるコンタクトレンズを使うのは適切ではないだろうと考えられてきました。

ですが、現在は1dayが主流ですからお手入れも必要ありませんし、3ヶ月に一度は眼科医に行って眼の状態を調べ、視力も測りますので、変化にも対応できるだろうと。そういったことで、より早期からコンタクトレンズを使うことができるようになっているというところはあると思います。

―― なるほど、理解しました。それでは、先ほど「遠近両用」のコンタクトレンズというお話がありましたので、高年齢層の需要についてもおうかがいしたいのですが。

大山:
高年齢…とまでは言えないかもしれませんが、従来は老眼が進んでくるとコンタクトレンズでは対応できないから遠近両用メガネを使う、という方々が多かったのですが、まずはハードコンタクトレンズで遠近両用が出ました。今はソフトコンタクトレンズにも遠近両用があります。当社でもワンデーカテゴリーの中で発売しましたので、そういった方々の需要をできるだけ拾って行きたいというところですね。

遠近両用レンズ「シード 1dayPureマルチステージ」

http://www.seed.co.jp/products/contact/disposable/multistage.html

―― 1dayコンタクトレンズへの需要の強さに加えて、そういった市場開拓や需要喚起をしていくことで、当面は国内市場でもある程度規模なり成長を保っていけるという見通しを持っておられる…そう考えてよろしいでしょうか?

山口:
そうですね。そこまで楽観しているわけではありませんが…。現在は国内のコンタクトレンズ市場自体も年率2~3%程度の緩やかな成長を続けておりますし、当社製品への需要は高まっておりますので、今のうちに、すでに始まっている日本の「少子・高齢化」に対応するための準備を進めていくことが重要です。

―― その中心となるのが海外展開ですね。現在の進捗について教えていただけますか?

山口:
2011年10月に中国現地法人を設立し、1年をかけて浸透を進めて来ました。
諸問題で若干進行が遅れている部分もございますが、来年度(2014年3月期)以降からは、いよいよ売上だけではなく利益面でも貢献が始まると見ております。

海外展開・戦略について

(クリックして画像を拡大)

―― やはり中国は市場として大きいのでしょうか?

山口:
まだまだ、上海や北京のような都市部限定とはなるのでしょうが、近視人口に対するコンタクトレンズの装用者数の割合は、1%有るか無いかという統計もあるようですから、成長はこれからでしょうね。

実は、日本市場は世界的に見ても特別なんですよ。
何しろ人口では全世界の1.8%くらいしかないのに、世界の約25%のシェアを持っているんですから…。さすがに中国がそこまでの市場にすぐになるとは現段階では考えておりませんが、何しろ人口の母数が大きいですからね。2%のシェアでも2,600万人。それだけで日本の総数を超えます。

大山:
当社の経験上、女性が化粧品にお金を使うようになると、その国ではコンタクトレンズが売れるようになると思っております。バッチリお化粧をして、アイメイクもした後は、やはり眼鏡ではなくコンタクトレンズだろうと…。
中国の都市部における化粧品売上は非常に伸びていますから、その意味でも今後に期待できると言えそうです。

―― 進出国を選定する際の基準などはありますか?

山口:
当社の強みは「日本の国産品質」ですから、これが高く評価されるという意味では、やはりアジアが中心となりますね。若年層の人口構成比率が高い国、人口が少なくとも若い方々が多い国は重要と考えています。

モンゴルなどはその一例です。
人口は全体で270万人ですが、そのうち170万人程が首都のウランバートルに集中しています。都市部は生活水準も高く、日本の雑誌も現地ではかなり売られていて、日本のおしゃれ文化を真似したいという女性も非常に多いのだそうです。

Q4: 今後の成長を見据えて取り組んでいることは?

山口:
今後の成長という意味では、新素材の開発や、医薬分野との融合につながるレンズの開発も進めています。

将来に向けた取り組み

(クリックして画像を拡大)

―― 医薬分野との融合、ですか?

山口:
はい。これは2010年にリリースしたものなのですが、薬をしみこませたレンズを装着することで、治療薬を眼に投与することができるものです。徐放性、つまり、8時間や10時間といった長時間をかけて、薬剤を徐々に放出していくというこのレンズ素材は、海外の高分子医学会でも発表したぐらい画期的なものなのです。

―― 具体的にはどのような分野で使われるのですか?

山口:
現在、花粉症の治療に使えるものを開発しています。

―― 花粉症だとコンタクトを使えないというイメージがありましたが、レンズを使うことで治療ができる、これは正に逆の発想ですね!花粉症の人にとっては期待の新製品かと思います。

大山:
はい、そう思います。花粉症は日本の国民病のようなもので、年々患者さんも増えていますし、コンタクトレンズの装用者さんが非常に不便を感じていらっしゃるところに、こういったレンズが出すことができれば、非常に貢献できると思います。

―― いつ頃の発売予定なのですか?

大山:
承認取得、販売までにはもうしばらくかかりそうです。
何しろこういった製品は初めてですので、承認をする関係省庁としても、それこそ医薬品なのか、医療機器なのかというところも含めて慎重に見ていますので…。

―― 海外の他社さんでもこのような事はやってないのですか?

山口:
研究はしておられるところもあるようですが…。ですが、実際に「製品化をします!」と宣言しているのは、少なくとも国内では当社ぐらいではないでしょうか。
「見える」をサポートする企業である当社としては、ここは頑張っていきたい分野ですね。

大山:
「見える」をサポートするという意味では、日本では当社だけが認可を持っていて、世界でもおそらく当社しか発売していないだろう、という商品があるんですよ。「虹彩付きソフトコンタクトレンズ」です。

虹彩欠損症や角膜白斑――つまり、茶目の部分が欠損していたり、角膜に傷があって白濁してしまっていたり、そういった方々の目をきれいに見せる(これを「整容」と言います)ためのコンタクトレンズです。
販売量は少ないのですが、このレンズは、必要な方には本当に必要なものですから、使命感をもって当社としても製造販売を続けております。

 

Q5: 個人向けIRの方針および個人投資家へのメッセージをお話し下さい。

―― 「見える」をサポートするという想いが伝わってきました…!
それでは最後に、個人投資家向けIRの現状についてお聞かせ下さい。

大山:
今年度(2013年3月期)から、個人投資家向けIR説明会への参加を始めました。2012年7月の大阪での説明会を皮切りに、8月、12月と参加して、本年(2013年)は2月の東証IRフェスタへの出展と、福岡での説明会を予定しております。

―― IRで心がけておられるところはありますか?

大山:
業界では当社が唯一の上場企業ですので、参考にできる事例があまりない中ではありますが、自分達なりに「ここが大事かな」ということを考えて、説明会を開催したりウェブサイトを充実させたりしておりますので、そういった点について、ご意見やご要望をお寄せいただけると嬉しいですね。

山口:
現在の当社は業績好調ですが、今後、苦しい時期が来たとしても、その時にも真摯な姿勢で、色々なご説明を続けていければと思っております。

―― 本日はありがとうございました!