インターネットサービスは年々発展しています。
それを支えているインフラとして、サーバと呼ばれる機器や、多く利用者が通信できる通信回線が必要ですが、そのインフラを提供している大事な黒子がデータセンター事業者。

インフラとして停止しない安定性と、最近増えている情報セキュリティ犯罪に備えた安全性が重要です。

データセンター事業者の中で、特にインターネットサービス企業に多く利用されている、さくらインターネット株式会社
IR担当の岡本さんに、データセンタービジネスとは何か、海外サービスにどう対抗していくのか、データセンタービジネスの今について伺いました。

Q1: 御社のビジネスは何ですか?強みや他社との違いは何でしょうか?

岡本:
私たちは、データセンタービジネスを展開する企業です。

データビジネス

2012年2月 個人投資家向け会社説明会 P6より引用)

特に、インターネットサービスを提供している企業様からプログラムやデータをお預かりし、サービス利用者の方にデータをお届けするのが当社の役割です。

データセンターのビジネスというのは、シンプルに図解すればたったこれだけです。

しかし、インターネット経由でやりとりされる情報の重要性、一方で増え続ける通信量、要求されるスピード
――そういった様々な条件をすべてクリアして、データセンター事業者としてご信頼いただくためには、設備、技術、リスク管理、運用のノウハウ、セキュリティ体制などすべての面で大変高い品質が求められます。

(クリックして画像を拡大:2012年2月 個人投資家向け会社説明会 P7-12より引用)

―― お金がかかりそうですね…!サービスの価格も高いのでは。

岡本:
いえ、「高品質で低価格なITプラットフォーム」「コスト競争力の高いITインフラ」を提供することは、創業以来の企業理念、現社長でもある創業者の強い想いですので、スケールメリットを生かすことで高品質とリーズナブルな価格を両立できるよう、努力を続けて来ました。

―― スケールメリットと言いますと、具体的には顧客数を指すのでしょうか。

岡本:
そうですね。
国内トップクラスの利用件数がその源泉となっています。

ホスティングサービスの利用件数

2012年2月 個人投資家向け会社説明会 P33より引用)
※専用サーバ、レンタルサーバ、VPSはすべて「ホスティング」の1種。

―― 「ホスティングサービス」とは何ですか?

岡本:
私達がご提供するデータセンターサービスは、大きく2種類に分けられます。
一つは、お客様のサーバを当社のデータセンターでお預かりする「ハウジングサービス」。そしてもう一つが、当社所有のサーバをインターネット経由でご利用いただく「ホスティングサービス」です。

―― ハウジングとホスティングの違いが良くわからないのですが…。

岡本:
端的に言えば、サーバが当社持ちなのか、それともお客さま持ちなのかの違いですね。
ハウジングサービスでは、お客様がお持ちのサーバを、当社のデータセンターの中にお預かりして、我々が管理をさせていただきます。
これに対し、ホスティングサービスでは、当社が所有しているサーバをお客様にインターネット上でご利用頂く、つまり、お客様のデータを当社のサーバ内に直接お預かりする、という形になります。

つまり、ハウジングというのは、文字通り「家(サーバの置き場所)を貸す」サービス。ホスティングは、「ホストである当社が、自分の家(=当社のサーバ)にゲスト(=お客様のデータ)」を招き入れるサービスであると、そんなふうにご理解いただければ。

ハウジンクとホスティング

(クリックして画像を拡大:(2012年2月 個人投資家向け会社説明会 P15-16より引用) )

―― なるほど、その覚え方はわかりやすいですね。
ところで、それぞれのサービスは利用顧客層に違いがあるのですか?

岡本:
ハウジングサービスは、お客様側がサーバ機器を用意し、当社データセンターに持ち込んで設置して頂く必要がありますので、比較的大手の事業者――例えば大手SNS運営会社さんのようなプラットフォーマーや、大規模なアクセスがあるインターネットサービスを手掛けておられる企業様のご利用が多いですね。

ホスティングサービスでは、サーバ機器は当社のものをご利用いただけますので、創業してまだ間もない、あるいは発展途上の段階にあるビジネスなどに適しています。ですからお客様としても、たとえば中小規模のEC、あるいはソーシャルゲーム。そういった企業様により多くお使いいただいています。

―― ハウジングとホスティングの売上のバランスはどのようになっていますか?

岡本:
単価が高いのはハウジングですが、売上全体で言うと、当社はホスティングが中心ですね。
ホスティングが売上全体に占める割合も上昇しています

(右図:サービス別売上構成比(決算説明資料数値よりグラフを作成))

 

 

―― 最近だとソーシャルゲームの事業者さんの利用はやはり増えているのでしょうね。

岡本:
インターネットサービスの変化に伴い、当社のコアとなるお客様は、その時々で変わって来ました。2000年代の初期は着メロ、その後は動画コンテンツ、そして今はソーシャルゲームと…。

―― 展開されるコンテンツやサービスの内容に流行り廃りはあっても、インターネットサービス自体には引き続き需要がある、市場として成長している。
だから、御社のビジネスの需要も引き続き強いということでしょうか?

岡本:
はい。私たちの強みのひとつに、ブランド力と申しますか、ITサービスを運営する方々のファーストチョイスになっているということがあります。

「専用サーバを借りるならどこが良いですか」と聞かれた時に「とりあえず“さくら”にしておけば間違いないんじゃない?」と言って下さる方は――お名前を出せないのが残念なのですが――IT業界で著名な方々にも多くいらっしゃいます。多くのITエンジニアの方々に当社のブランド価値を認めて頂いている、その結果が国内トップクラスの利用件数へとつながっている、そこは非常に強く実感していますね。

編集室注:
同社サービス利用者が、他の利用者のために21回もの講座形式で利用方法を無料解説するサイトがあるなど、IT業界に多くのファンを抱えているのは、他社ではなかなか見られない同社の特徴です。

Q2: 事業環境とその対応は? また、それに対応する戦略は?

―― 先ほど「需要は強い」というお話がありましたが、改めて、現在そして今後の事業環境についてどのように見ておられますか?

岡本:
ポジティブとネガティブ、両方の面がありますね。
インターネットサービス市場は年々拡大しており、それにともない、データセンターサービスの市場自体は今後も成長が見込まれる、これはまず間違いないところかと思います。

また、インターネットビジネス以外の業種においても、かつては業界用語でしかなかった「クラウド」という言葉が一般の企業さんや官公庁でも普通に使われるようになってきたことからもわかるように、これまでは社内データや顧客データといった重要なデータは、自社で保管するのが当たり前だと言われてきた部分についても「所有から利用へ」の転換が進み、外部のサーバ(データセンター)を利用することへの抵抗は明らかに薄くなっています。
これは、データセンターサービスの需要増大、あるいは我々にとっての営業のしやすさという意味で非常にポジティブな事業環境であると言えます。

もうひとつ、ポジティブな側面としましては、ハウジングからクラウドを含むホスティングに市場ニーズが移ってきていることが挙げられます。
少し詳しくご説明致しますと…

データセンター業界では、売上規模で言うと、これまではサーバ設置スペース(ラック)を提供するハウジングが中心でした。ごく簡単にいえば「場所をお貸しするビジネス」。これは都心に広い土地を持つ事業者様が有利になるということを意味します。
当社はまだまだ小さな会社であり、自社で土地を持っているわけではありませんので、大手データセンター事業者様が建設したデータセンターの一部をお借りしてサービスを提供していたため、常に供給力不足が大きな経営課題となっていました。

しかし、当社サーバ機器をご利用頂くホスティングのニーズが急速に高まって来ました。
サーバ機器は当社で一切の管理を行うので、お客様の近くにセンターがある必要がない。
すなわち、必ずしも都心に大きなスペースを持つ必要がないのです。
これは、当社のような都心に土地を持たない小さな会社でも、大きな規模を持つ他社さんと対等に競争できるようになる、つまり業界の競争環境が大きく変わることを意味します。

実際、当社では2010年に提供を開始した仮想サーバーサービス(VPS)により新たな客層を獲得しており、それがホスティングサービスの成長に大きく寄与しています。

ホスティングサービスの成長

(クリックして画像を拡大 : 利用中件数は、2012年4月25日開催の2012年3月期決算説明会時点の数値)

ですが一方で、価格競争は相当厳しくなっています。

そもそも仮想サーバサービスがなぜ選ばれるかと言えば、それは結局「安くなるから」であって、ユーザー側からするとコスト削減策なんですね。
実際に今、専用サーバなどの初期費用の大きなサービスからより初期費用負担が低いサービスへと乗り換える、そういった動きが表面化しています。

また、今後はハウジングと専用サーバから、コストを抑えて必要な時に柔軟に設備の規模を拡大・縮小できるクラウドへの移転が進むと考えています。

(クリックして画像を拡大:2012年2月 個人投資家向け会社説明会 P20-21より引用)

そしてもう一つ、我々の業界において「黒船」となったのは、海外の大資本であるアマゾンの参入です。これが競争環境をより厳しくしているという認識ですね。

編集室注:
米アマゾン・ドット・コム関連会社が、ホスティング(クラウド)に特化したデータセンターサービス「アマゾン・ウェブ・サービシズ(AWS)」を提供しており、2011年に東京にもデータセンターを設置し日本市場向けにサービスを提供し始めました。
利用状況によって料金が変化する完全従量制が特徴であること、また、ドル課金のため円高の現状では円換算で比較的低価格になっていることが強みになっています。

―― AWSの影響はやはり大きいのでしょうか。

岡本:
昨年(2011年)11月の石狩データセンター稼働開始で、我々もようやく競争できる環境になって来ましたが、それ以前は(影響が)ありましたね。

当社はIT業界の中では知名度が高いのですが、一般の企業さんになりますと、「アマゾンだったらわかるけど、さくらインターネットって聞いたことがないなぁ」ということになりますから、そういったブランド力の面でも、価格面でも厳しい競争を強いられていたところはあります。

我々としてはコスト競争力が高い石狩データセンターを活用して、より品質の高いサービスを、AWSのプライスライン(=価格帯)で提供していく。
ブランドバリューでは負けてしまうところはありますが、コストパフォーマンス面でより優位なサービスを提供していくことで競争に勝ち残る、それが今後の重点戦略になります。

(クリックして画像を拡大:2012年2月 個人投資家向け会社説明会 P25-26より引用)

編集室注:
石狩データセンター建設のねらいについてはこちらの記事でもお読み頂けます。
「クラウドの本質をひたすら追求していく―さくらインターネット社長 田中邦裕氏インタビュー」(エンタープライズ/ジン)

Q3: 今後の成長を見据えて取り組んでいることは?

―― 石狩データセンターで提供するのはハウジングとホスティング、いずれのサービスなのでしょうか?

岡本:
当初想定していたのはホスティングだけで、ハウジングの方はほとんど考えていませんでした。

ですが、昨年(2011年)3月の東日本大震災後にBCP/DR(編集室注:BCP=事業継続計画、DR=災害復旧)、あるいは電源の問題で石狩データセンターへの注目が高まりまして、今ではハウジングでも大きな案件をお引き受けするケースが出ています。

―― 電源の問題、ですか?

岡本:
データセンターに限らず、ビルは建設時に電気設備を建物全体に設置してしまうため、後から利用できる電気容量を増やすのは難しいという状況があります。
データセンター建設時に必要な電気容量は計算して設備を設計していますが、サーバ性能は年々進化し、1台のサーバで使う電気使用量が増えているため、同じ台数でも年々電気使用量が増えています。

また、空調の問題もあります。
高性能のサーバは高熱を発します。サーバを正常に動作させるために空調機器によりサーバを冷やす必要があるのですが、発熱量が増えているため、クーラーの量も増やさなければならない。これも大量の電気を必要とします。
そうなると「データセンターにサーバ機器を置く場所(スペース)はあっても電源がない」、そういった問題もよく起きるのですが、その点、石狩データセンターでは隣接する変電所から安定した電力供給を受けることができますので、そのあたりもご評価いただいているようです。
また、石狩は年間を通じて気温が低いので、外気をうまく活用してサーバを冷却するので、冷却空調設備も少なく済むのも電気代を抑えられるメリットの一つです。

(クリックして画像を拡大: 「石狩の立地」より引用

―― なるほど。ところで石狩というと、これまで御社がデータセンターを持っておられた東京・大阪よりも遠隔地になりますが、通信速度の面で問題はないのでしょうか?

岡本:
そこはお客様の用途によりますね。
例えば、証券取引などの金融関連、本当に0コンマ何秒を争う様なシステムになると回線のレスポンスとかの関係でやはりどうしても都心、しかも証券会社の近くにデータセンターがないと難しいと思いますが、これがネットコンテンツ、モバイルコンテンツなどであれば、石狩でもまずお客様がストレスを感じることはない、そういったレスポンスを出すことができます。

ですから、現在当社のメインのお客様としてご利用頂いている方々にとっては、特にご不自由な点がなく、今と同じような感覚でサービスをご利用頂けますね。
(クリックして画像を拡大:石狩データセンター 「ファシリティ」より引用)

―― 現在のメインのお客様層というとインターネットサービス事業者さんだと思いますが、今後、顧客層の拡大というところにも取り組んで行かれるのでしょうか?

岡本:
そうですね。基本的に、比率で言えばやはりインターネットの会社さんがメインになってくるとは思いますが、徐々に一般企業、あるいは官公庁といったお客様へと範囲を広げまして、売上高を増やしていくことによってスケールメリットを発揮していく、そういった点も重視しております。

――  一般企業向けとなると手厚い営業が必要になってくるというイメージがありますが、そこは自社で営業要員を抱えていかれるのか、それともパートナー企業、あるいは提携先といったところとやっていかれるのかというと、どちらになりますか?

岡本:
後者ですね。当社は双日株式会社の子会社でございますので、同じく双日の子会社である日商エレクトロニクスさんに営業部分を引っ張っていただき、我々はインフラ部分を提供するということで、ともにWIN-WINの関係でやっていくという形になります。

Q4: 個人投資家の皆様へのメッセージをお願いいたします。

本年度から、新中期経営計画を開始しております。

本中期経営計画においては、競争力の源泉となる「ITインフラ」と「テクノロジー」の両面を拡充し、「サービス」と「セールス」の強化に努めて参ります。
新中期経営計画の詳細は株主通信 P5を参照下さい)

当社はこれまでもインターネットサービスの発展にともない、ゆっくりとではありますが、確実に成長して参りました。

この度、石狩データセンターという今後の成長のための基盤が本格稼働し、厳しい市場の中でも成長していく準備が出来ました。
新中期経営計画では毎年10%成長を目標としております。
今後の当社にご期待下さい。

―― 本日はありがとうございました!