薬を作っているのは、テレビでも有名な巨大製薬会社だけだと思っていませんか?

規模は小さくても、まだ根本的な治療薬がない、ドライアイ・アトピー性皮膚炎のという巨大市場に向けた治療薬を開発する、株式会社アールテック・ウエノ

しかも、創薬ベンチャーでありながら、黒字経営

ビジネスマネジメント部の中村さん・早野さんに、なぜ眼科と皮膚科なのか、10年から20年近くもかかる「創薬」とはどんな業界なのか、詳しく伺いました。(前後編でお届けします)

Q1: 御社のビジネスは何ですか?わかりやすく教えて下さい。

中村:
眼科、皮膚科系の疾患に特化した新薬をつくる会社です。

新薬の研究開発――つまり創薬を事業の中心としているため “創薬ベンチャー”の1社に数えられることが多いのですが、当社には、
(1)自前の収益で研究開発投資をしている
(2)黒字経営である

という他の企業にはなかなか見られない特長があります。

―― 自前の収益で研究開発投資ができる?

中村:
はい。これはとても重要なことなんです。

下の図に記載いたしましたように、医薬品の開発には長い、長い時間と膨大な投資が必要です。

製薬会社は皆、「創薬研究」段階で見つけた有望な物質(医薬品候補物質)について「非臨床試験」、「臨床試験」を行いますが、これらを行うために多くの研究開発費と時間がかかることになります。
順調に開発が進んだとしても、臨床試験(フェーズ1~3)をすべて終えるまでに5年~10年が必要で開発期間中に、医薬品としての安全性や有効性が十分でなければ、開発を中止しなければならないこともあります。

すべてを乗り越え、首尾よくフェーズ3までの段階を終えたとしても、医薬品として承認されるまでの審査期間がさらに1~2年。その後、ようやく販売となりますが、先行する医薬品などもある場合、すぐに売れるとは限りません。

創薬のプロセス

(「事業紹介」より引用)

つまり、医薬品の開発を始めてから実際の収益を得られるまでは「どれだけ資金力があるか」の体力勝負になりがちで、だからこそ、たくさんの医薬品を持っている製薬会社は、世界でもごくわずかな数にとどまっているのです。

したがいまして、規模の小さい創薬ベンチャーの多くは、自社が持つ有望な医薬品候補を、上場時に集めた資金でできるところまで(大半は、候補物質の安全性を調べる「フェーズ1」まで)開発して、少しでも売れる状態になったら他の製薬会社に売る――という戦略をとらざるを得ません。
その間、売上はほとんど立たず、研究開発費だけが出ていきますから、決算は赤字。そういった企業が大半です。

もちろん、これは創薬ベンチャーの事業構造上やむを得ないところではあるのですが、企業の戦略としてこれが最良かと言われれば、そうではありません。
安全性を調べる「フェーズ1」だけでなく、その次の段階である「フェーズ2 」――候補物質の有効性を調べる試験までを終え、そこで良い結果を得ていれば、格段に有利な条件で候補物質を売却できるのです。

この点、当社の場合「レスキュラ®点眼液」と「AMITIZA®カプセル」という、現在販売中かつニーズの高い2つの医薬品が、年間15~20億の研究開発費を負担出来るだけの収益を生み出しています。
だからこそ当社はフェーズ2前期完了まで研究開発費を負担し、有利な条件で売却することができる。それが、当社が他の創薬ベンチャーとは大きく異なる点です。

 

―― その2つの製品について教えていただけますか?

中村:
「レスキュラ®点眼液」は、緑内障や高眼圧症の治療に用います。
緑内障の治療目標は、眼圧を低くコントロールすることにありますが、「レスキュラ®点眼液」は副作用が少ないことで評価をいただいております。
当社は、本薬剤の製造と販売をしています。

レスキュラ®点眼液

「AMITIZA®カプセル」(一般名:ルビプロストン)は、米国のスキャンポ社が米国で慢性特発性便秘症*治療薬としての製造販売承認を取得している医薬品です。日本でも最近承認を取得しました。

実はスキャンポ社の代表は、当社の創業者の一人である上野隆司氏です。
AMITIZA®は、当社が開発支援をしてきたこともあり、その過程で製造に関する 特許を当社で取得しております。現在、当社でグローバルに独占的受託製造を行なっており、開発支援サービス から生まれた最初の製品でもあります。

AMITIZA®カプセル

 

直近の決算では、両剤とも20億円強の売上を計上しています。
粗利益は6割程ですから、合計で24億円ぐらいの売上総利益を確保し、販管費(7億円程度)を差し引き、研究開発費を10億円使っても営業利益ペースで6~7億円を確保することができるのです。

売上高推移

――眼科と皮膚科に絞っておられるメリットは?

中村:
全身性の疾患ですと、それだけ開発費も多くかかります。その点、当社は「眼科」と「皮膚科」という局所に特化していますので、全身性の疾患よりははるかに(研究開発費を)抑えることができます。
当社の場合、

  1. ニッチな領域に絞って、
  2. 安全性・有効性の両面でファースト・イン・クラス(画期的医薬品。特に新規性・有用性が高く、化学構造も従来の医薬品と基本骨格から異なり、従来の治療体系を大幅に変えるような独創的医薬品)としても恐らく確立が高いものに絞って、
  3. 物質特許や用途特許を押さえつつ、

開発しています。
ですから、当社が将来1剤や2剤の画期的新薬を創出する可能性は、他のベンチャーより恐らく高いと言えるのではないかと思います。

―― 新薬開発の方針は?

中村:
眼科と皮膚科の2つの疾患分野で、

  1. アンメット・メディカル・ニーズ領域(未だ満足のゆく治療法がない医療領域)
  2. オーファンドラッグ(希少疾病医薬品)領域
  3. アンチエイジング領域、生活改善薬領域

の3つの領域に該当する新薬の開発を進めています。

新薬の開発

特に力を入れているのはアンメット・メディカル・ニーズ領域です。この分野こそが、
医師の目線で医薬品開発・販売を行う当社の強みを最も活かし、社会に貢献できると考えております。

 

Q2: 御社の強み、他社との違いはどこにあるのでしょうか?

―― 「医師の目線で医薬品開発・販売を行う」とはどのような意味なのでしょう?

中村:
実は、当社社長の眞島は現役の眼科医(医学博士)でもあるのです。
実際に患者さまの診察もしていますので、患者さまがどういった点で困っておられるのか、どのような医薬品が求められているのかなど、生の声を聞くことができます。さらに、医師の間の横のつながり、情報ネットワークも十分に活用できますので、当社は、良質な事業機会を速く見つけられる――候補物質の探索ではなくもう少し先の段階から研究を始めることができる。ここは、我々の大きな強みだと思います。

この点については、現在開発中のドライアイ治療薬「RU-101」を例にとって、もう少しご説明をさせて下さい。

ドライアイ治療薬「RU-101」について

中村:
ドライアイという病名自体は一般に浸透しているのですが、単純に目が乾く病気だと思っておられる方がほとんどです。治療薬もヒアルロン酸などの成分で目を潤し、乾いたらまた点眼して・・・というものしかないのですが、これは対処療法に過ぎません。

ドライアイの中には重症で、それこそ失明に近い症状となる場合もあるのですが、これを治す薬はまだ世の中にありません。現在市販されている薬は重症になればなるほど、効果が期待できません。
当社の「RU-101」は、重症のドライアイを治療できる薬を目指して開発を進めています。

―― 重症のドライアイはどうすれば治るのでしょうか・・・?

中村:
実は、自己血清療法というすでに確立した治療法があります。これは、患者さまご自身の血液から得られる血清(透明な部分)を生理食塩水などで溶かして点眼するという治療法で、大学病院などの熱心な先生であれば実践されている方もいらっしゃいます。ただ、これは大変手間のかかる治療法ですので、多くの方を治療できるかというと・・・

―― 現実的ではないのですね。

中村:
ええ、そうなんです。ですから、この自己血清療法から着想を得て、血清の約60%を占める成分であるアルブミン(タンパク質の一種)――これが、自己血清療法が重症ドライアイに効く理由と私たちが考える成分なのですが――を主成分とした点眼液「RU-101」を開発しています。

――アルブミンはどうやって作るのですか?

中村:
血液由来のアルブミンを抽出して点眼液にすることも可能ですが、やはり感染症や未知のウイルスのリスクもありますので、当社では遺伝子組み換え技術を使って人工的に合成したアルブミンを主成分に「RU-101」を開発しようとしています。すでに特許も押さえておりますし、昨年11月には人工のアルブミンを作り出す技術を保有しているノボザイム社(デンマーク)との間で供給契約も締結しました。2012年度中には米国でフェーズ1とフェーズ2の双方を開始する予定です。

――これは本当に初めての重症のドライアイ治療薬なのですか?

中村:
はい、そうです。従来の治療薬とは作用機序(薬物が生体に作用を現す仕組みのこと)が全く異なりますので、申請先である米国当局(FDA:Food and Drug Administration。日本の厚生労働省のような役割を果たす)の感触も良好です。
今回の創薬は、自己血清療法としてすでに確立している治療法を薬剤の形で再現するものですので、ゼロから創薬するよりもはるかに成功の確率は高いと考えております。実際、すでにグローバル規模の製薬会社が数社、「RU-101」の導入に興味を持っています。

―― 「創薬研究」段階で無数の物質のなかから医薬品候補を探し出して、それから非臨床試験を重ねて、次は臨床試験で・・・という果てしない作業、その割に低い成功確率を考えますと、確かに大変効率的だと思います。
先ほどおっしゃった「お医者様としての目線」「医師の情報ネットワーク」があることは、このあたりに効いてくるものなのでしょうか?

中村:
ええ、そうです。
そのようにご理解いただいて問題ありません。

Q3: 事業環境とその対応は? また、それに対応する成長戦略は?

インタビュー後編に続く >

こんな質問が続きます!

―― アトピー性皮膚炎治療薬「RTU-1096」について教えていただけますか?
これはどのような点が新しいのでしょう?

―― 今後5年間を見た時の成長シナリオを教えていただけますか?