本日のインタビューは、株式会社パソナグループ(証券コード:2168)です。
日本における労働者派遣法の施行は、1986年。その10年前に、人材派遣ビジネスを開始した同社は、間違いなく人材サービスの草分け的存在であり、その後も常に業界をリードし続けてきました。

政府の日本再興戦略(成長戦略)に「行き過ぎた雇用維持型から労働移動支援型への政策転換」「多様な働き方の実現」「女性の活躍推進」「若者・高齢者等の活躍推進」などの項目が並び、雇用制度がいよいよ本格的に変わろうとしつつある今、パソナグループは何を見据え、どう動こうとしているのか、お話をうかがいました。

Q1: 御社のビジネスは何ですか?

Q1-1:まず、事業の全体像について教えていただけますか?

A1-1:
事業領域としては、図表1-1でお示ししましたように、多岐にわたる事業を展開しています。
その中で売上のボリュームが大きいのは「エキスパートサービス(人材派遣)」「インソーシング(委託・請負)」です(図表1-1、1-2)

業績面では、リーマンショックによる影響も収まり、3期連続増収を計画しております(図表1-3)。

図表1-1:事業領域

(クリックして画像を拡大)

図表1-2:セグメント別連結業績

(クリックして画像を拡大 :2013 年 5 月期 決算概要 より引用)

図表1-3:2014年5月期 通期連結業績見通し

(クリックして画像を拡大 :2014年5月期 第2四半期決算説明会資料 P30より引用)

Q1-2:エキスパートサービス(=人材派遣)は主にどのような派遣が多いのですか?

A1-2:
当社は創業以来、女性の社会進出を応援し、雇用創出に取り組んで来たということもあり、全体として見ますと一般事務派遣――なかでも貿易事務や経理、秘書などの専門職が比較的強い分野となっております。

Q1-3:「インソーシング(委託・請負)」とは何でしょう?派遣とはどう違うのですか?

A1-3:
お客様のオフィスで業務を行うという意味では、派遣もインソーシング(委託・請負)も変わりません。違いは、主に指揮命令系統にあります。

派遣の場合、派遣先企業の社員さんから指示を受けてお仕事をすることになりますが、インソーシングは、我々がスタッフさんに指示を出して動く形となります。
たとえば受付やデータの打ち込みなど、比較的組織から切り出しやすい業務をまとめて切り出し、お客様先のスペースで「業務委託・請負」の形で仕事をする。――こういった形が今、非常に増えています(図表1-4、1-5)。

―― なぜインソーシングの需要が高まっているのでしょうか?

派遣という形をとった場合、派遣先である企業側での労務管理が必要になります。その点、インソーシングであれば、労務管理も業務自体もまるごと我々にお任せいただくことができます。

リーマンショック以降、さらなる業務の効率化を進める企業さんのニーズに合致しているのが、インソーシングなのです。

図表1-4:インソーシングとエキスパートサービスの割合推移

(クリックして画像を拡大 :2013年5月期決算説明会資料 P30より引用)

図表1-5:ビジネスモデル

―― どの業務を切り出すのかについても、御社が提案するのですか?

当方からご提案する場合が多いですね。
リーマンショック以降、従来のような派遣だけの単純なご要望は減少しています。代わりに、組織や人事のコンサルティングといった、よりお客様の組織全体を見て、人材に関する深い提案を求められることが増えています。

私達が業務分析を行い、派遣で実際のお手伝いもしているのですから、当然その業務には精通しております。ですから、「この分野は切り出して集約化しましょう」「この分野は教育が必要ですので、スキルアップのためにこの教育研修を入れていきましょう」といった組織全体のコンサルティングも含めて実施し、インソーシングだけでなく、当社グループの様々なサービスを提案することが可能になります。

―― インソーシングの中には、社内で行う業務の委託請負と、社外に切り出すBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)も両方が含まれているということですか?

はい、そうです。

Q2: また、他社との違いや強みはどこにあるのでしょうか?

Q2-1:インソーシングは、パソナグループの強みのひとつなのでしょうか?

A2-1:
はい。この分野については、他社よりかなり先行して取り組んでおりますし、ノウハウも高いレベルにあると自負しております。
2012年5月には屈指の業務分析力を持つビーウィズ株式会社(三菱商事子会社)の株式を60%取得し、三菱商事の業務分析のプロフェッショナルとの交流を通じて、さらにスキルを高めています。

業務分析は非常に難しい分野ですので、この部分の力を高める事は、(人材業界における)一層の差別化につながるものと期待しています。

編集室注: ビーウィズ株式会社は、事業セグメントとしては「インソーシング」に分類されます。

Q2-2:インソーシングやエキスパート以外に、パソナグループの特長・強みがある事業としては、どのようなものがありますか?

A2-2:
アウトプレースメント(再就職支援)も、当社グループの強みのひとつです。
再就職支援市場で3割を超えるトップシェアを有しており、全国に拠点を網羅しています。 不況のときに強いイメージがありますが、最近は再雇用義務化に伴うコンサルティングなど新しい需要が生まれています。

グローバルソーシング((海外人材サービス)にも力を入れています。
海外で事業を展開されている日本企業向けに、給与計算・労務管理などの事務系アウトソーシングはもちろん、海外での駐在員やサポート、現地法人の管理職・社員を含む人材紹介、派遣、教育研修なども提供し、高いご評価をいただいています。 今期(2014年5月期)は、新規拠点開設や、ベネフィット・ワンのインセンティブ事業の海外展開を加速するなど、グローバルサービスをさらに拡充していく予定です。
また、事業ポートフォリオが多岐にわたり、景気変動の影響を受けにくいことも大きな強みです。

こういった事業の背景には、パソナの創業以来、変わらない理念があります。

―― それは何ですか?

ひとつは、私達が「社会の問題点を解決する」ことに取り組み続けている企業であるということです。
たとえば、障害者の就労支援、農業人材の育成など、雇用創出を目指して、長期間かけて事業として育成してきました。また、2010年に開始した「パソナフレッシュキャリア社員制度 」――これは、学校卒業時に就職先が決まらなかった新卒者をパソナが採用することで、卒業後のブランク期間を作ることなく社会人教育を実施し、人材を求める企業と若者を結びつける取り組みです。

この制度に加え、地方自治体の就労支援事業や、中小企業庁の新卒者就労支援プロジェクトなどを通じて、私達は、新卒者の就職環境が急激に悪化した3年前から現在までに、15,000人を超える若者の就職をサポートしてきました(図表2-1)。

図表2-1:若年層就労支援の取り組み

(クリックして画像を拡大 :2013年5月期決算説明会資料 P3より引用)

また当社は、これまでにも社会的な課題と思われることにあえてメスを入れ、そのソリューションをご提供する、という形で様々な取り組みを行なってまいりました。それらの(当社が社会的課題と考えて取り組みを開始した)事象は少なからず、その後社会的な問題として採り上げられるようになり、当社の取り組みが事業として成り立つようになってきました。

―― では、もうひとつの「パソナらしさ」とは何ですか?

パソナグループの仕事は「人を活かす」ことだと考えています。
働きたいと願う誰もが安心して働けるよう幾重ものインフラを作り、さらにその人らしい豊かな人生設計を描くお手伝いをする「ライフプロデュース」が私たちの使命だと考えています。

これまで、保育施設や家事代行サービスなど、働く人々を支援する様々なインフラを開発してきました。 また、パソナグループでは創業以来、年齢性別、国籍、雇用形態の違いや障害の有無に関わらず社員一人ひとりの能力や可能性を最大限に発揮するためのステージを用意しダイバーシティを推進してきました。
おかげ様で日本経済新聞の調査「人を活かす会社」では「ダイバーシティ経営」で第1位に選んで頂きましたが、そのような私たちの経験、ノウハウを事業化し、サービス提供を通じて今後も社会に貢献したいと考えています。

リーマンショック後の数年間は、人材派遣業界にとって、そして当社にとっても大変厳しい事業環境となりました。しかしながら、こうした中でも私達が「社会の問題点を解決する」取り組みや、「働く方々」のための投資を続けてきたことは、私達の企業理念が、創業時からの想いが“本物”であることの証左でもあります。

Q3: 事業環境とその対応は? また、それに対応する成長戦略は?

Q3-1:リーマンショック後の数年間は厳しい事業環境であったと伺いましたが、現在は、御社の事業環境は大きく好転しているように見えます。
たとえば、現政権の「日本再興戦略(成長戦略)」においては、「雇用制度改革・人材力の強化」が大きく掲げられ、人材流動化や女性の活用などが強く打ち出されていることなどは追い風要因となるのではありませんか?

A3-1:
まだ具体的な影響はありませんが、期待はしております。
成長戦略のキーワードのひとつである「人材流動化」はまさに当社が提唱し、進めてきたことですし、人が動くことは当社や業界はもちろん、社会全体にとっても非常にメリットが大きいと考えます。
また、成長戦略で打ち出されている「女性・若者・高齢者等の活躍推進」、これらも当社が過去から課題感を持って取り組んできたことです。これらが今後、社会に浸透していくことを心から願っております。

こうした流れをさらに後押しすべく、当社も今期(2014年5月期)は働く人々に向けてのエンプロイーソリューションを強化していきます。

Q3-2:エンプロイーソリューションとは何ですか?また、具体的にはどのような取り組みをされるのですか?

A3-2:
ひとことで言えば、「働く方々を支援する」取り組みを、より広げていくことです。
たとえば、福利厚生や社内で活用してきた教育・研修の事業化や対象の拡大(図表3-1)には、「パソナカレッジ」を、当社の派遣スタッフだけでなく、お客様企業の従業員の方々や一般の方々にも公開していくことで、働く人のエンプロイアビリティー(雇用可能性)向上に貢献していくことなども含まれます。

図表3-1:福利厚生や社内で活用してきた教育・研修を事業化、対象を拡大

(クリックして画像を拡大 :2013年5月期決算説明会資料 P14より引用)

その他にも、場所や時間にとらわれない働き方をサポートする仕組みの導入(Job-Hubマイクロソフト「Office 365」の活用など)や、働く女性の仕事と家庭の両立を支援する「チャイルドケア事業(=パソナフォスター )」、「介護・家事代行事業(=パソナライフケア)」にも力を入れています。

Q3-3:2014年5月期の重点施策として「ソリューションサービスの深化」も挙げられていますが、これはどのような内容なのですか?

A3-3:

意図しているところは、2つあります。

ひとつは、クラウドサービスの要素を組み込んでいくことで、Q1-3、Q2-1でお話しましたインソーシングのクオリティを上げていくことです。
IT技術の進化に伴って、今後はクラウドを活用したITサービスの導入なども含めて、効率的な業務の仕組みと人材、その両方をお客様に提案していこう、ということを意図しています。

もうひとつは、インソーシングで提供しているサービスについて標準化を進め、横展開していくことです。
従来は、(一つひとつの業務に対して)コンサルタントがご相談を承り、オーダーメイドでサービスを構築・ご提供してまいりましたが、今後は標準化・横展開を進めることで、これまで以上に様々な業務を請け負っていくこと、それを今期(2014年5月期)は目指していきたいと考えております。

Q4: 今後の成長戦略は?

Q4-1:今後、中長期的には事業ポートフォリオをどのように変化させて行くのですか?

A4-1:
中長期的な成長戦略の考え方は、「人材派遣のベースを広げつつ、その上にインソーシング等、付加価値の高い・利益率の高いサービスをご提供していく」ことが基本となります。

そういった意味では、派遣の事業構成比はもう少し下がっていく可能性はあります。
それは派遣の売上が減少するという意味ではなく、派遣以外の事業が伸びて来る、これによって全体の売上も利益率も上がっていくというのが目指すシナリオですね。

―― 派遣市場の規模はリーマンショックで一旦縮小したところもあるのですが、今後についてはどう見ておられますか?

過去数カ年の減少について言えば、(単純に派遣を使わなくなったというよりも)BPOやインソーシングへ切り替えていらっしゃるお客様も多くおられます。
さらに、今後、派遣法の改正で派遣の使い方が分かりやすくなるという点も見込まれますので、このあたりを鑑みますと、今後は景況感改善に伴い回復基調になるのではないでしょうか。

Q4-2:M&Aについてはどのような考え方で臨むのですか?

A4-2:
M&Aで相手先企業(の専門人材やビジネス)を既存事業に加えることにより、どれだけのシナジーを生み出すか、あるいはグループ全体のサービスがどのように拡がるかをまず考えております。
実際、これまで当社がM&Aをしてまいりましたのは、我々の持っていない職種や何らかのスペシャリティを持っている企業ばかりです。

―― 規模の拡大を意図して、同業他社を買収することはないのですか?

同じような事業を買収したのでは、規模だけ(を追求すること)になってしまいます。
当社の場合、やはり1+1が(2ではなく)3に、あるいはそれ以上の形になること、つまり、既存の事業にシナジーや付加価値がプラスされることを重視しております。単純な規模の拡大はあまり考えていないですね。

Q5: 個人向けIRの方針および個人投資家へのメッセージをお話し下さい。

Q5-1:個人投資家の皆様へのメッセージをお願いします。

A5-1:
パソナ=派遣というイメージをお持ちの方々も多いのですが、本日お話させていただきましたように、当社グループには様々な事業がございます。
たとえば人材紹介、あるいは再就職支援、セカンドキャリア支援、介護、保育であったりと、生涯の様々な場面で私どもをご利用いただける機会は多いのだということを感じていただき、そこからご興味をお持ちいただければ幸いです。

当社は常に「社会の問題解決」への取り組みを進めている企業ですので、たとえば2003年頃から農業人材の育成事業などもしております。
投資家様の中には、「なぜパソナが農業なのか?」といったお声を下さる方もいらっしゃるのですが、できればそういった社会的な取り組みに関しても、長い目で見て頂けると非常に有難く存じます。

私どもの事業内容や、(農業を含めた)最近の取り組みについておわかりにならないことがありましたら、是非一度大手町の本社へお越しください。どなたでも見学していただけます。

―― 本日はありがとうございました!