「つくった人が自分の子どもに食べさせられる安心安全でおいしい食品」である、無農薬・減農薬の野菜をインターネットで販売するオイシックス株式会社

美味しくて安全な野菜や肉が手軽に買えることは、社会にとって非常に価値が高い。しかし一方で「野菜はインターネットでは売れない」「有機野菜は大きなビジネスにならない」そういう声を聞くこともあります。

同社の「プレミアム=高付加価値」へのこだわり、コストを下げるための施策、そして、他社との提携も交えた今後の成長に向けた戦略など、オイシックスさんの今についてお話をうかがいました。

Q1: 御社のビジネスは何ですか?わかりやすく教えて下さい

Q1-1:事業内容について教えてください。

IR担当者:
簡単に言えば、ウェブサイトを通じた小売業です(URL: https://www.oisix.com/ )。
お客様からの注文を受けて当社が生産者さんに発注し、センターに納品していただき、注文に応じてそれをピッキングしてお届けするという、大変シンプルなビジネスモデルになっております。
当社では、このEC事業が売上全体の9割超を占めております。

各事業の売上推移

(クリックして画像を拡大:2013年3月期決算説明会資料 P6より引用)

Q1-2:他のEC(電子商取引)サービス事業者や、自然食材宅配サービスとはどのような点が異なるのですか?

IR担当者:
大手ECサイトとの大きな違いは、注文を受けてから発注するというところです。
当社では「来週お届けできるのはこれです」といったリストをウェブで出しておりまして、その中からお客様が選んでお買い物して頂きます。ただし、当社の商品は生鮮食品が中心でセンターには在庫はなく、発注して、収穫して、センターに入れてからの発送となります。もちろん、鮮度を保つためにも、収穫からお届けまではすごく短くなっております。

もう1点、大手ECサイトでは単発購入、1年に1回くらいしか買わない人方も多くいらっしゃるかと思いますが、当社の場合は毎週あるいは隔週といった形で、お客様の生活の中に入って注文を頂くサブスクリプション(定期購入)型が主体です。

では従来の自然食材宅配サービスとはどこが違うのかと申しますと、「選んで注文ができる」という部分ですね。
他の自然食材宅配サービス事業者様の場合、決められたセットを定期購入するのみ、という形が多いのですが、当社は「お好きなとき、お好きな量だけを」ご注文いただくことができます。

その他にも、入会金や年会費が一切無料、お届け日時の指定が可能といった特長があり、お忙しい方にも安心してご利用いただけるようになっています。

EC事業の仕組み サービスの特長

(クリックして画像を拡大)

(クリックして画像を拡大)

成長可能性に関する資料 左:P7、右P5より引用)

Q2: 御社の強み、他社との違いはどこにあるのでしょうか?

Q2-1:取扱商品の特長を教えてください。

IR担当者:
当社は、基本的な企業理念として自らを「単純に食品をお届けするではなく、届いた後の食べる食卓がいかに豊かになるか」をご提供するための会社と定義しております。

そのためにどういった商品がいいのかと考えました時に、やはり重要なのは「安心」で「おいしい」ことであるということで、プレミアムな――当社では「高付加価値な」と言っておりますが――商品をお届けすることにこだわっています。

具体的には、「つくった人が自分の子どもに食べさせることができる」商品をお届けすることをモットーにしています。
実は、農家の皆さんは、市場に出すものとは別に、(より安全でおいしい)自分達が食べるものを市場に卸すのとは別に作っておられることが多いんですね。当社は、生産者の方々から「自分たちで食べる」ための基準で作ったものを分けて頂いてお客さまにお届けする、それを自主的な安全基準(「Oisix安全基準」)に落とし込みまして、その基準をクリアするものだけを販売しています。

加工品も、スーパーで売っているようなNB(National Brand)品ではなく、プライベートブランドではないのですが、地方のこのスーパーでしか売っていないとか、地域限定でしか売っていないとか、そういった商品を取り揃えています。

取扱商品のコンセプト

(クリックして画像を拡大:成長可能性に関する資料 P6より引用)

Q2-2:「プレミアムな商品」ということは、ブランドのポジションニングとしては高価格帯をねらっているのでしょうか?

IR担当者:
企業理念である「安全で美味しいものを食べて、豊かな食生活を」の実現を追求した結果、自然と(ポジショニングが)ここになっているという感じですね。

ですが、「安全で美味しいものがプレミアム」というのは本来おかしい話で、決して高い商品を売りたいと思っているわけではありません。供給量が少ないこともあり、結果として高止まりしてしまっていますが、将来的には価格は下げていかないといけないと思っています。
当社は、あくまで(価格が高いものではなく)付加価値が高いものをご提供したいと思っていますので。

おいしっくすブランドのポジショニング

2013年3月期株主通信 P6より引用)

Q2-3:Q2-1でお話があった「Oisix安全基準」についてもう少し詳しくお話ください。

IR担当者:
そもそも、口に入るものに安全なものとそうではないものがある、というのはおかしい話です。
当社としては「自分達の子供に食べさせることができる」ということを基準において、色々調べてきました。その結果、農薬の使用や農作物の栽培方法について当社なりの基準が見えてまいりましたので、農水省が定めている「特別栽培農作物表示ガイドライン」の基準に基づき、当社独自に「Oisix安全基準」を2000年に定めました。現在も安全基準は改訂を続けています。

さらに、食質監査委員会という外部組織も設置しております。当社が販売したいと思った品物はこの委員会に諮りまして、ここが安全性や余分なものが入っていないかなどをチェックし、OKが出たものだけを販売する――そういった形になっております。

Q2-4:御社の競合企業はどこになるのでしょうか?

IR担当者:
ダイレクトに競合している会社はなく、切り口によって競合があるといった感じです。

たとえば自然食品宅配という切り口は、らでぃっしゅぼーやさんや大地を守る会さんは競合という位置づけになりますし、EC宅配という切り口では、スマートキッチンさん(株式会社ローソン、ヤフー株式会社の子会社)などが競合になります。いわゆる普通の食品宅配で言いますと、生協さんなども競合になってきます。

ただ、社内では競合各社を意識することはほとんどないですね。
投資家さんからは「競合とどう差別化するのですか」ってよく聞かれるのですが、他社さんを見ていても仕方がない、というのが正直なところです。

理由は2つありまして、
・ひとつは、お客さまの期待を超えることのほうがはるかに重要で、かつ難しいということ
・そして今ひとつは、お客さまは各サービスを使い分けているというか併用されている方が非常に多い
ということです。Oisixを使いながら生協を使うようなお客様は非常に多いので、あまり他社を意識してもしょうがないかな、と思っています。

Q2-5:Q2-4でお話のあった「お客様の期待を超える」、あるいはお客さまのニーズを取り込むために、どのような取り組みをされていますか?

IR担当者:
定性的なお客様の声を重視しています。
社長の高島は月に1回ほどお客様のお宅を訪問しますし、お客さまに会社までお越しいただき、全社でインタビューを行うこともあります。わからないことがあればコールセンターからお客さまにお電話し、キャンセル理由をお伺いしたり、「こういった新しいサービスを始めたのですがいかがですか?」とヒアリングしたり――そういった取り組みも行っています。

市場の声を聞く方法として、定量的なアンケートを取ることもありますが、どちらかと言えば、定性的というか、お客様の意見を直接じっくりと聞くことを頑張っています。
こういったやり方は珍しいと言われますが、その方がお客様のニーズをより把握できるんじゃないかな、と思うんですよね。

Q2-6:ここ数年少しつづ利益率が上昇しています。これはどのような理由があるのですか?

IR担当者:
「規模の経済」によるところが大きいです。規模が大きくなって、センターの稼働率が上がったり、宅配の送料にボリュームディスカウントが効いてきたり、また固定費率が少しずつ下がることによって利益率が上昇しています。
固定費の額自体は上がっていますが、売上の上昇角度に対して固定費の上昇角度が小さいのが主な理由です。

経常利益・経常利益率の推移

(クリックして画像を拡大:2013年3月期決算説明会資料 P6より引用)

Q2-7:ECの会社さんにお話をうかがうと「利益は物流で決まってくる」とおっしゃることが多いのですが、その点、御社はいかがでしょうか?
また、昨年(2012年)新物流センターができたというお話がありましたが、その効果についてもお聞かせください。

IR担当者:
物流コストの影響は大きいですね。
当社では配送時にクール・冷凍といった温度管理が必要になるので、常温の配送よりもコストがかかりますし、対応できる物流会社さんも限られます。そこはQ2-6でも申し上げたように、さらに規模を拡大することで、物流コストを下げられるようにしていきたいと思っています。

新物流センターは、自動ピッキングシステムの導入が大きな特長となっています。
当社の場合、お客さまの注文はすべて違っており、しかも平均で15品目くらいを購入されます。以前は全て手作業でやっていたので、箱詰めの際のミスをゼロには出来なかったですし、スキルも必要でした。現在は、自動ピッキングシステムの導入によりミスが減ってますし、全体の生産性が向上することでピッキング作業のコストも下がってきています。

現在の物流センターは、事業規模300億まで対応できるようになっておりますので、競争力の源泉のひとつとして今後も貢献してくれるものと期待しています。(編集室注:2013年3月期の売上は146億)

食品BtoCのECに特化した物流

(クリックして画像を拡大:成長可能性に関する資料 P15より引用)

Q3: 事業環境とその対応は? また、それに対応する成長戦略は?

Q3-1:食品EC市場の伸びについておうかがいします。食品EC市場は、EC全体以上の伸び率で伸びているとのことで、成長余地は非常に高いという理解になりますでしょうか。

IR担当者:
食品市場におけるEC化率は0.85%、これはBtoC市場全体のEC化知る(2.83%)に比べると約1/3で、まだまだ成長機会はあると見ています。また、食材宅配が既に1.8兆円ありますので矢野経済研究所調べ、それがデジタルシフト(ネット化)することでも、まだまだ伸びてくるかな、と。

「野菜や食品を直接見ないで買うなんてありえない」と言われることもありますが、実は日本は昔から生協をやっている方が多く、そこは抵抗が少ない方も多い。ですから、ネットスーパーなど、食品ECは時間とともに普及していくのではと思っています。

EC市場の展望について

(クリックして画像を拡大:成長可能性に関する資料 P9より引用)

Q3-2:今、大手スーパーやコンビニが食材の宅配を始めたり、高齢の方々のために食材ではなく弁当を届けたりと、食品の宅配はかなり市民権を得てきているようです。
業界的には色々なプレイヤーが参入してきて競争が激化している印象があるのですが、こういった宅配市場の変化についてどのように見ておられますか?

IR担当者:
参入してくる企業さんは増えていますし、ドコモさんがらでぃっしゅぼーやさんに、ローソンさんが大地を守る会さんに出資したりと、昨年(2012年)末から色々な動きがでています。

ではそれをどう感じているのかと言えば、現在、EC化率が1%も行ってないような状況ですから、参入してくる企業さんが増えてくるのは、市場の活性化・拡大につながる動きなので、当社にとってはポジティブ、非常に嬉しいと感じていますね。

ネットで食品を買う人が増えていく中で、高付加価値の食品は当社で買って頂ける、そういった形になれば良いと思っています。

Q3-3:スマートフォンの普及は、御社の購買行動に何かしらの影響を与えていますか?

IR担当者:
スマートフォンのユーザーさんは、当社でも増えています。
ただ、スマートフォンだけ使うというよりは、普段はPCで買い物するんだけど、移動中とか、会話中にスマートフォンで買い物をする。そういった方が結構増えてきています。

というのも、当社のサービスは、1回あたりの購入品目が約15品目と非常に多く、スマートフォンの限られた画面で購入するのは結構大変なんですね。「毎週15品目をカートに入れる」という作業は、ガラケーの時も大変でしたが、スマートフォンでもまだまだ難しい。改善はしてはいるのですが、まだPCのユーザビリティには遠いのが現状です。

とは言え、お客様側の環境としては、やはりスマートフォンやタブレットへのシフトが進んでおりますので、 PC、スマートフォン、タブレットを問わず、よりよい使い勝手、ユーザビリティの強化に引き続き取り組んでまいります。

Q4: 今後の成長戦略は?

Q4-1:現状は、主に約75,000人の会員の方から150億規模の年商をあげていらっしゃいます。
今後はさらなる成長を目指す上で、目標などはありますか?

IR担当者:
当社の場合、LTV(ライフタイムバリュー:顧客生涯価値)は非常に高いのですが、小売業として見た時にはまだまだ規模が小さく、社会に影響を及ぼし得るレベルに至ってはおりません。

当社は規模だけを追い求めるわけではありませんが、やはり「豊かな食生活をできるだけ多くの人に」を掲げるからには、百数十億の売上では意味がない、最低でも1,000億円以上の売上を早期に達成すべきと考えております。

Q4-2:今後の成長戦略として「自社で販売」「他社さんとの提携で伸ばす」「海外」等さまざまな方向性があると思いますが、それぞれについてご説明いただけますか?まずは前二者についてお話いただけますか?

IR担当者:
国内においては「Oisixのブランドを確立し」「プロモーションをしっかりとやり」「お客様の人数を増やし」「サービスレベルを上げる」ことでLTVを向上させることが基本戦略となります。

特にブランドについては、「高付加価値」と「ネット」を自社の独自ポジションとして確立できるように、足固めに力を入れていこうとしておりますし、DEAN&DELICAさんとの資本提携も、彼らのブランド力をレバレッジしてブランド力を上げていくための取り組みです。

Oisixは、妊娠・出産・結婚などを機会にサービスの開始を検討されるお客さまが多いですので、そのタイミングで当社がちゃんと接点を持つことができるように、各種媒体とアライアンスしてのリーチや、オピニオンリーダーとの協業、リアルイベント(マルシェに直接出店してお客様を獲得する)などに取り組んでいます。

成長市場におけるブランドの確立

(クリックして画像を拡大:成長可能性に関する資料 P23より引用)

Q4-3:プロモーションはインターネットと実店舗が中心のようですが、テレビCMなどマスメディア向けの取り組みはされないのですか?

IR担当者:
プロモーションは現状はネットが中心です。実店舗は、たとえば東急さんと一緒にやっているShop in shopで申しますと、東急沿線には当社のお客様が多いので、そこでの露出によって認知力を上げていくという考え方です。

TVCMについては、当社のサービスはまだマス向けではないというのがあって、そこの受け皿をしっかり作ってから、という感じで考えています。価格もサービス内容からも、特定の方向け――「30代・40代の小さなお子様を持つママ」という非常に狭いセグメントになっているので、まずそこでNo1になってから広げていって、どこかのタイミングでマス向けにやっていくというイメージです。

Q4-4:この1~2年、三越伊勢丹さんやDEAN & DELICAさんなど、他社さんとの提携が矢継ぎ早になされている印象を持っているのですが、何か理由があるのでしょうか?

IR担当者:
高付加価値食品の宅配や販売は、食品の小売の中では伸びている珍しい市場なんですね。
他社様からお声がけを頂く機会が増えたのは、、当社の上場が機になっているということではなく、おそらく、同業2社(編集室注:らでぃっしゅぼーや、大地を守る会)に資本が入ったので、結果として当社にお声かけ頂く機会が増えているのではないかなと見ております。

Q4-5:今後、リアル(実店舗)を増やしていくという方針はあるのでしょうか?

IR担当者:
実店舗は小さな2店舗を色々運営してきて、いろんな勉強をしている実験段階ですので、これをいきなり10店舗に増やすといったことはないと思います。
ただ、当社は販売チャネルをネットに限定しているわけではありませんし、リアルな店舗を増やさないという方針があるわけでもありません。そこは今後の戦略次第ではないでしょうか。

Q4-6:海外展開についてはいかがですか?

IR担当者:
当面は香港の立ち上げに注力という感じですね。海外展開する場合、現在の香港でやっているような輸出モデルでやるのか、それともビジネスモデルだけ持っていって、現地で農作物を調達するのか、まだ検討しているところです。

Q5: 個人向けIRの方針および個人投資家へのメッセージをお話し下さい。

―― 個人投資家の皆さんへのメッセージをお願いします。

IR担当者:
ホームページで当社の代表が「できないことの多い会社です。」と書いているのですが、実際、当社は「オイシックスらしくない」ことはやらない企業です。

当社の場合、もともと「社会に対して良い影響を与えたい」というところからスタートしておりますので、企業理念に合わない活動――たとえば「安全だとは思わないがすごく売れそうな商品」を販売したりといったことは行いません。

私達はあくまで、社会にとって良い影響を与えること――例えば「お客さまが豊かな食生活を簡単に送ることができる」「農家の方々が、安全で美味しいものをたくさん作るモチベーションを持っていただける」、そういったことを念頭に置いて事業をやっておりますので、株主さんの中にはフラストレーションを溜めておられる部分もおありなのではと思うのですが、そこは理解して頂けるようにコミュニケーションをしっかりやっていきたいと思っております。

また、株主・投資家の皆様に当社のお客さまにもなっていただけるように、引き続きサービスレベルも向上させてまいりますので、是非応援して頂けばと存じます。

―― 本日はありがとうございました!