オフィス事務用品にアスクルやカウネットがあるように、間接資材(工具、消耗品、部材など製品製造の原材料ではないもの)を中小企業向けにカタログ販売をしている株式会社MonotaRO
取り扱い点数は200万点!?と圧倒的な品数です。

中小企業市場は企業の数で言うと日本の90%以上になるものの、多くの業界で「営業コストが見合わない、規模が小さい割に数が多い」と多くの企業が苦戦しています。
逆に顧客を獲得できれば、高い競争優位性を持てるもの。10年で80万社以上の顧客を開拓した事業モデルについてIR担当の山崎さんにお話を伺いました。

Q1: 御社のビジネスは何ですか?わかりやすく教えて下さい。

山崎:
当社は、事業者向けに工場や工事用の間接資材などを通信販売している企業です。

  1. 販売先が中小企業中心であること、
  2. インターネットを活用することで規模の経済を実現し、幅広い商材(取扱点数は約200万点)の取扱を可能にしていること

などが私たちの特長です。

事業内容

(クリックして画像を拡大:2011年12月期年次報告書 P8より引用)

―― 色々おうかがいしたいことはあるのですが、まずは社名の由来から…。
なぜ「MonotaRO」(モノタロウ)という名前なのですか?

山崎:
大文字になっている3文字(「MRO」)はメンテナンス、リペアー&オペレーションの頭文字で、間接資材のことを表します。つまり、当社の事業領域が社名に入っているんですね。

そしてもうひとつ。流通の鬼退治ということで、「桃太郎」もかけておりまして。

―― 鬼退治…??

山崎:
はい。間接資材に限らず、事業者向け商材の場合、買う人によって値段が違うということがごく普通に行われています。
特に間接資材の場合は、一つひとつは少額の商品が多い上にたくさんの品揃えが必要となりますから、少量しか買わない中小企業の皆様の場合は割高に買わされてしまうことが多いんですね。

納期も曖昧になりがちです。
中小企業の方が何かを買おうと思ったら、まず取扱業者に問合せをして値段を確認する。すると、ちょっと待ってください、おたくの値段を確認しますと言われ、折り返しの電話を待って…そんなやりとりをしているうちに、数日が経つことがありますから。

私たちは、そういった価格や納期の不透明感を、間接資材の流通に潜む「鬼」になぞらえまして、これをなくす(退治する)ことを目指してスタートしました。

―― その「鬼退治」の手段がインターネット販売だったのですか?

山崎:
いえ、当時(編集室注:同社の設立は2000年10月、事業主向けサイトMonotaRO.comの全国展開は2001年11月)はまだまだ、法人がネットで何か購入するというのは一般的ではありませんでしたから…。

最初はチラシの配布がメインでしたね。「工場ガイド」で金属加工業や機械製造業のお客様を探しまして、それらのお客様が使うであろう商品をチラシに掲載して、お送りして…それが当たることもあれば外れることもある、そういった地道な取り組みから始めました。

チラシの例

(クリックして画像を拡大)

―― いまや売上高200億を超す御社も、最初はチラシでの販売からスタートされたのですね…。それで、お客様はすぐに集まったのですか?

山崎:
最初はなかなか難しかったです。
そもそも間接資材ってお客様である事業者の方ににとっては他の経営課題に比べて非常に関心が低いものなんですね(皆さんも、ガムテープや手袋を買うために一生懸命時間をかけようとは思わないですよね?)。

「一生懸命選んで買おう」という意識が企業さんの側に薄いので、「モノタロウならこんなに効率的に買えますよ!」とお伝えしても、「はいはい、それはわかったけど(購入先を替えるのは)面倒くさいから結構ですわ」と思われやすいのです。

ですから最初は、購入頻度の高い軍手などの消耗品とかを、「安いのでとにかく一度買ってみてください!」という形でチラシをお送りしまして、まあ確かにどこにもない値段だなということで1~2点を試し買いして頂く、そんな感じでしたね。

―― まずは利便性を実感していただいたと。

山崎:
はい。一度お使いいただければ、時間のかかる見積のやりとりもなく表示されている値段でそのまま買えるし、注文すれば翌日届くといった点をご評価頂き、まずは軍手を定期的に購入、そのうち他の資材も購買品目に加わって…と、そんな感じで少しずつご利用が広がって行きました。

―― 顧客獲得数も単価も最初から大きく上がったわけではないんですね。

山崎:
当初は顧客獲得数もじわじわ積み上げていくような感じでしたし、販売価格は新規のお客様を獲得するために低めに設定していましたから、売上も徐々にしか伸びませんでした。
一方で、仕入れの量もそれほどではありませんので原価もそう安くはできず、広告宣伝費はたくさん使っておりましたので、2005年までは赤字が続いていました。

ですが、お客様基盤が大きくなれば商品も広く展開できるようになる、一定の規模になれば利益が出ると信じて、ひたすら突っ走っていましたね。

売上高と顧客数の推移

(クリックして画像を拡大:「2012年12月期第3四半期決算説明会資料」 P3より抜粋)

Q2: 御社の強み、他社との違いはどこにあるのでしょうか?

―― その2005年頃から顧客数も売上も加速度的に増えているように見えますね。

山崎:
その頃からリスティング広告を始めたんです。お客様へのリーチが格段に広がり、月の獲得顧客数も少しずつドライブがかかってきました。
お客様の数が増えたことで海外から大きなロットで買い付けることができるようになり、商品の取扱点数も増え、リスティング広告の効果で顧客獲得単価も低下して利益も上がって行きました。

リスティング広告を開始しますと、お客様企業がどういったキーワードで商品を探しておられて、その後どういう購買をしていらっしゃるのかといったデータがどんどんたまって来ます。
その結果、次のお客様をとっていく上でも、このキーワードで来られるお客様よりもこちらのキーワードのお客様のほうがよりご利用いただいている、そういったことも見えて来ましたので、データに基づくブラッシュアップをすることでマーケティングの精度も上がってきました。

―― なるほど。ところで先ほど取扱点数が非常に多いというお話がありましたが、それは軍手なら軍手の中で何種類もある、という意味なのでしょうか?

山崎:
もちろん、取り扱っている商材自体の種類も多いのですが、当社ならではの特長という意味で申しますと、ご指摘の通りです。

間接資材はただでさえ商品の点数が多いものですから、業者としても1商材あたりあまり多くのブランドを扱いたくはないんですね。ですから、どのお客様からも文句を言われないトップブランドだけを取り扱うということになりがちで、それはお客様にとっては(価格が)高いし選択肢がないということになってしまうんです。

その点、当社はお客様のニーズに合わせて、たとえば軍手ひとつをとっても、火を使う業種向けには綿のものを、毎日汚れたらすぐ捨ててしまうような業種向けであれば安くてどんどん使い捨てられるものをお選びいただけるように、お客様のニーズに合わせた価格帯、品質のものを10種類近くも揃えることで差別化してきました。

(クリックして画像を拡大)

―― 取扱商品の中に「ヒット商品」「スター商品」のようなものはあるのですか?

山崎:
当社の場合、月商から割り戻すと日商が1億弱になるのですが、その中で1つの商品が100万円以上売り上げることは非常に少ないですね。本当にたくさんの種類の商品を、多くのお客様が少しずつ買って下さっている、その積み上げがこの業績ですので、品揃えが豊富である、何でもあるということが当社の価値になっていると言えます。

―― お客様の面でも「スター」はいないということでしょうか?

山崎:
そうですね。平均的な値で申しますとお客様は9千円~1万円ぐらいのご注文を月2回下さいますので、1ヶ月1万8千円~2万円弱の売上となります。
この数値で月商を割り戻すと、だいたい14~15万のお客様が1ヶ月に稼動しておられるという感じですね。

Q3: 事業環境とその対応は? また、それに対応する成長戦略は?

―― そういった中で、今後の成長のドライバーとしてはどのあたりに注目していくと良いのでしょうか?

山崎:
当面は、新規顧客の獲得を最優先していきます。

この業界には、当社のような規模でネット販売をしている競合企業は今のところありませんが、市場規模に対するシェアで見れば(当社は)まだまだです。
品揃えを豊富にすることで既存の訪問小売商さんから購入しておられる事業者様の購買を(当社へと)切り替えてお客様のベースを広げ、業界内のシェアを広げる、多くの需要をまとめることでお客様に一層の利便性をご提供し、さらなる新規獲得につながります。そのサイクルを加速させていくことこそが成長戦略の要です。

―― お客様の獲得余地はまだまだあるということなのですね。
市場規模や御社のシェアについて教えていただけますか?

山崎:
MROの市場規模は少なく見積もっても5兆円と言われています。
それに対して当社の売り上げは300億円にも満たない(編集室注:2012年12月期の売上見込は285億円)わけですから、金額ベースで見たシェアは、まだまだ問題にならないほど低いですね。
言い換えれば、それだけの獲得余地、成長余地があるということになります。

―― 新規顧客の獲得だけでなく、既存のお客様の購買を増やす、つまり顧客内シェアを上げることも重要なのでしょうね。この点についてはどのような取組みをされていますか?

山崎:
ひとつには、当日出荷商品の増加があります。
まさに今年の話なのですが、当社が在庫として持つ商品を期初の6万点から、この7月までに8万点へと増やしましたところ、その増分の2万点が、「当日出荷」になった後に確実に売上が伸びました。

インターネットサイトでのお客様の動線を見ていても、当日出荷の商品に比べて、取り寄せ商品が購買まで進む確率は圧倒的に低くなります。事業者様ですから、バスケットに入れたということはこの商品が必要であるということは間違いないはずなのですが、購買に至らなかったということは納期の問題なんですね。

ですから、在庫を増やしてお客様の利便性を上げることは、既存のお客様の購買を増やす上で重要な取り組みとなります。

―― 当日出荷商品だけを集めたカタログも作っておられるのですね。

山崎:
はい。現在、当社はネットからのご注文が8割を超えておりますので、そういった中でそもそも紙のカタログを出す必要があるのというご質問を頂くことは多いのですが、やはりカタログは重要です。

ネットでは検索性を高めれば高めるほど、お客様はお探しになっている商品へと一直線に行ってしまいますので、「あ、こんな商品も取り扱いも始めたんだ」といったことには気付いていただきにくいですよね。
もちろん、ネット上でも関連商品やお客様のご興味がありそうな商品を並べる努力はしていますが、カタログをパラパラめくることでお客様の目に入る情報は、それとは比較にならないほど大きいのです。

当社は毎年第4四半期にカタログを発行していますが、例年、発行直後は動く商品の幅が一気に広がるんですよ。

カタログ一覧

(クリックして画像を拡大)

―― ウェブの検索精度向上のためにはどのような取組みをしておられるのですか?

山崎:
これは本当に地道な改善の積み重ねですね。
お客様がサイト内で商品を検索してうまく行き着かれたかどうかの結果を見ながら、継続的に改善を続けています。
最近では、SMCさんやオムロンさんのようなメーカーの品番で瞬時に検索できるサービスも開始いたしました。

取扱商品点数が増えると、目的の商品に行き着きにくくなってしまうという面も出てきます。当社は、お客様に「時間や手間をかけずに間接資材を購入できる」という価値を提供する企業ですから、そこは力を入れて、日々改善に取り組んでいます。

―― ところで、先ほど「この業界には、当社のような規模でネット販売をしている企業はない」というお話がありましたが、ネット企業の中に競合はいないのですか?

山崎:
米国ではamazonがアマゾンサプライというサイトを立ち上げて事業者向けにMROを販売する事業を始めています。今後、日本でもそういったプレイヤーが参入してくることは十分考えられます。

―― 対応策としてはどのようなことをお考えですか?

山崎:
繰り返しになりますが、それまでにどれだけのお客様を獲得できるか、それにお応えする商品を揃えていけるかということが間接資材を売る上で一番の武器になりますので、そこに磨きをかけていくことがどんな競合が現れても一番の障壁になると考えております。

 

Q4: 今後の成長を見据えて取り組んでいることは?

―― 海外と言えば、御社のIRサイトで「モノタロウが海外事業強化 ノウハウを提供し米国で通販支援」という記事を拝見したのですが、これはどのようなところを意図しておられるのでしょうか?

山崎:
当社の親会社は、米国の間接資材販売最大手のグレンジャー社(株式の53%を保有)なのですが、当社とはビジネスモデルが違っています。グレンジャーは大企業向けに一括購買の仕組みを提供するのが中心で、当社が得意としている中小企業向けの割合は非常に低いんですね。

ですから、当社の方法を使ってグレンジャーが米国の中小企業市場を開拓できるのはと当社の方から提案しまして、2010年にグレンジャーの出資で子会社を作りました。当社からも人を派遣して国内と同様にリスティング広告を使った集客やフライヤー(チラシ)を活用した集客などのノウハウを提供してきたところ、今年になって事業黒字化の目途が立ってきました。

これが黒字に転じれば当社にもサービス手数料的なものが(収入として)入ってきますので、リリースさせていただいた次第です。

―― 海外進出という形というよりは、親会社に対してノウハウを提供したものだと。

山崎:
はい。当社にとってのこの事業の価値は、(モノタロウとして培ってきた)ビジネスモデルが日本特有の物、日本でしか通用しないものではないと確信できたことですね
。今後、(日本と同様に)それなりにMRO市場が成熟していて、通信販売できるだけの配送網が整っているといった条件が揃う市場があれば、海外での事業展開のチャンスがあると考えられるようになったことは重要な成果でした。

もちろん、先ほどお話いたしましたように、今一番力を注ぐべき市場、一番リターンが大きい市場が日本国内であるという認識は当分変わることはありませんが。

―― 日本市場で、グレンジャーのように大企業向けの販売をされるということはないのですか?

山崎:
実は、2年前から大企業向けに購買システムの連携という形で新たなチャネル開拓を始めています。

大企業の場合は工具商さんからそれなりに良いサービスを受けておられるのですが、それでもやはり一点一点を(相対方式などの)アナログで買う事の時間的なロスは結構大きいですし、伝票も「工具一式」となっているので、あとから単品の購入価格を調べることができなかったり、複数の事業所で購入している商品が同じものなのか別物なのかもわからなかったり、そういった点を課題ととらえておられる企業もあります。

―― なるほど。それは内部統制上も非常に重要な視点ですよね。

山崎:
そうなんです。当社のデータベースと連携していただければ、「工具一式」でひとまとめにされてしまっているものの中身もきっちり見え、購買担当者様の時間や手間を削減できる。そういった価値を認めていただける企業様から導入が進んでいます。

―― 導入実績としてはどのぐらいあるのですか?

山崎:
現在連携して頂いている企業数が60社超、その中で順調に購買が増えているのは10社程度ですので、全体の売り上げに対してはまだ3%以下くらいですね。

―― まだまだ「少しでも安い所から買おう」「相見積もりをとらなければならない」とお考えになる企業様も多いのでしょうね。

山崎:
確かにそうですね。ただそこで見積をとって(購入価格を)100円下げるのに一時間かけていたのでは…。

―― その資材購入担当者さんの人件費の方が高く付きますよね。

山崎:
はい。そういった点を訴求することで、この市場でもニーズをつかんでいくことができると思っております。

―― 大企業市場を開拓することで、中小企業を中心とする現在の戦略との間で整合性がとれなくなることはないのですか?

山崎:
中小のお客様向けサービスと矛盾が起こるような取引の仕方は全くしておりませんので、大丈夫です。単純に、中小のお客様向けに販売している当社の商品データベースに大企業の購買システムをつなぎ込んで頂くだけですので。
価格に関してもワンプライス、皆さん同じ値段でお売りしています。価格の透明性を損なってしまっては本末転倒ですからね。

Q5: 個人向けIRの方針および個人投資家へのメッセージをお話し下さい。

―― それでは最後に個人投資家向けIRの取り組みについてお伺いしたいのですが、今、個人向け説明会はどのくらいの頻度で開催されておられるのでしょうか?

山崎:
年2回ほど開催させて頂いています。今年(2012年)は社長も変わりまして、社長の若さや勢いを見ていただきたいですし、実際、当社は会社全体としても非常に若くて活気がありますので、そういったところを感じていただけるよう、直でお話させていただく機会を大切にしています。

■ 新社長就任のご挨拶、執行役メッセージ

(クリックして画像を拡大:2011年12月期年次報告書 P6より引用))

―― その他、IR上の工夫をしておられることはありますか?

山崎:
当社は現在、販管費や粗利は比較的安定しておりまして、売り上げを上げればそれに応じた利益が積み上がっていくフェーズにありますので、月次ベースで売上と新規獲得顧客数をご報告することで(株主の皆様に)安心して成長を見守って頂けるように心がけております。

―― 株主優待については、どのような工夫をしておられますか?

山崎:
当社の事業はBtoB向けですので、一般の消費者(である個人株主)さんにとってはなかなか想像しにくいと思いますので、株主優待は当社のプライベートブランド商品を自由に選んで頂けるものにしております。

100株以上をお持ちの方に一律3,000円までお好きな商品を選んでいただけるのですが、一つひとつの商品が安いので、3,000円あれば相当商品が選べるんですね(笑)。
電球やガムテープ、軍手、日曜大工用品などご家庭でご利用いただける物も多いので、株主の方々からもご好評を頂いております。

株主優待向け商品の一例

(クリックして画像を拡大:ホームページ「株主優待制度」より引用)

―― それでは最後に、個人の方に何か今一番伝えたいメッセージをお話し頂けますか?

山崎:
当社は、「間接資材の購買」という、企業にとってはこれまでずっと放置されていた市場、コスト削減の糸口がわかりにくいと思われてきた購買を効率的にするプラットフォームとなることで、日本のモノづくりを盛り上げていくお手伝いをしたいと考えております。

お客様を100増やす、そして商品も100増えていく…そういった地道な成長になるかとは思いますが、安定的な市場で着実に成長していく企業であるという特長をご理解頂いて、長い目で応援していただけたら嬉しいですね。

―― 本日は、ありがとうございました!