住宅を取り巻く状況は、国内は人口減少と急激な高齢化が進んで、以前の「住宅を大量に供給する」時代は終わっています。一方でアジア地域は高成長(所得増)と人口増により、住宅需要が急激に上がっていると耳にします。

住宅設備のメーカー数社で構成される株式会社LIXILグループ (旧:住生活グループ)。
市場環境が異なる、国内、海外市場で、それぞれ異なる戦略でダイナミックに進めています。同社の考える「Good Living」とは何か、IR室の齊藤さん、宇都さんに、伺いました。

長文ですが、是非読み応えあります!

Q1: 御社のビジネスは何ですか?わかりやすく教えて下さい。

―― LIXIL(リクシル)様と言えば、「リクシルって知っテル?」のCMが話題になりましたので、名前は知っているよ!という方も多いのではと思いますが、まずは改めてLIXILグループの事業内容についてお話頂けますか?

齊藤:
LIXILの事業内容はご存知なくとも、「INAX」や「トステム」の名前なら知っているよ、という方は多いのではないでしょうか。

私たちLIXILグループは、そのINAXやトステム、東洋エクステリアなどが一緒になった「株式会社LIXIL」を傘下に持つ、国内最大手の建材・住宅設備機器を扱う企業グループです。
住宅サッシ、エクステリア、バスルームなど数多くの商品で30~60%超の市場シェアで国内1位を確保しており、連結売上高は1兆2,914億円、グループ全体の従業員数は48,163名(いずれも2012年3月期実績)となっております。

宇都:
社名変更前の「住生活グループ」の名前でご記憶いただいている方々もいらっしゃるかもしれません。実は「LIXIL」は、「住生活」を英語に直した造語なんですよ。

(LIXILグループについて より引用)

―― 住(LIVING)+生活(LIFE)ですか!ようやく社名の由来がわかりました(笑)。
ところで先ほど、トステム、INAX、東洋エクステリアなどを合併というお話がありましたが、この事業再編について、その内容や意図などを含め、もう少し詳しくお聞かせいただけますか?

齊藤:
現在のLIXILグループの形ができるまでには幾度かの再編・統合をしてきましたが(当社の沿革についてはこちらをご参照下さい)、中でも最大の改革となったのが2011年4月に実施したこの組織再編――トステム、INAX、新日軽、サンウエーブ工業、東洋エクステリアの5社を統合し、新会社(株式会社LIXIL)を機能別に再編することでした。

―― なぜ、統合と機能別再編が必要だったのでしょうか?

齊藤:
大きく2つあります。1つ目は、業務や機能の重複を解消し、固定費を削減するためです。2つ目は、育ちの異なる会社の販売力を融和させることによって新しい販売力を創造できる可能性です。

私たちは確かに、国内の建材・住宅設備機器市場では圧倒的なシェアを持っていますが、2015年をピークに世帯数が減少に転じることや販売単価の下落、あるいは原材料価格高騰の可能性といった国内住宅市場を取り巻く環境を考えれば、今後は一層厳しい事業環境となることも想定しておかなければなりません。

このような環境認識に基づき、私たちは、国内の既存事業についてはコスト削減と収益体質の強化を行い、そこで生み出した利益を「国内成長事業」と「海外事業」に投入していくことを、中期経営VISION(2011年度~2015年度)の基本戦略としました。

中期経営VISIONの構造

(画像をクリックして拡大 : 中期経営VISION P6より引用)

その最初の2年である2011年度、そして今年度(2012年度)は統合基盤を確立する時期と位置づけ、重点的に構造改革に取り組んでいます。

具体的には、「C-30プロジェクト」――2013年度に、2010年度比で既存事業のコストを約1,100億円削減するという目標――の下で、先にお話しました主要5社の統合と機能別再編に加え、購買の一元化、国内物流やショールームの統廃合、そしてITシステムの統合まで、あらゆる部門で重複業務の見直しを進めてきた等、今年度の第1四半期を終えた段階で全体の63%は手を打ち終えました。さらに今年度は第2四半期に希望退職者の募集も実施しました。

Q2: 御社の強み、他社との違いはどこにあるのでしょうか?

齊藤:
一連の構造改革の中でも、今後の成長につなげる意味で特に重要な取り組みとなったのが、商品の統廃合と品揃えの再構築でした。

これまではグループ各社がバラバラなコンセプトで開発していたものを、今後はLIXILとしてコンセプトを一本化して開発していく、その前段階として、LIXILは今後どういった商品を作るのか、何を目指していくのか――昨年度(2011年度)はそういった「目指す姿」を作り上げ、共有していきました。

宇都:
旧事業会社の名称はLIXIL統合後もブランド名としては残してきましたが、、2012年よりLIXILと5つの各ブランドを組み合わせた「コンポジットロゴ」を導入しています。

コンポジットロゴ

―― LIXILの「目指す姿」とはどのようなものなのですか?

齊藤:
LIXILとして目指す姿は「住まいと暮らしの総合住生活企業」です。その実現のために、今、私たちは3つのビジョンを掲げています。これは、当然ながら今後の商品開発の指針にもなるものです。

Good Livingを実現するための3つのVISION

(2013年3月期第1四半期決算説明資料P12より引用)

―― VISION2で「生涯価値の実現」を掲げておられる理由は何ですか?

齊藤:
これまで、家というのは時間とともに価値が下がっていくもの、いずれは住み替え、あるいは建て替えをしなければならないものだと考えられていました。ですが、住宅の耐久性が向上するにつれ、そういった認識にも変化が起きています。
一度購入した家は、家族の人数やライフスタイルに合わせて内装や間取りなどを変えることで、ずっと住み続けられる。そう認識される方々が増え、後ほどご説明しますが行政もその後押しをしてきた結果、今、リフォームのニーズは急速に高まっています。

一方で、LIXILの一番の強みは、何と言っても「ワンストップ」です。
日本はもちろん、世界を見渡しても、建材・住宅設備機器部門でものづくりをしている企業が持つ製品は、多くて2つか3つです。
日本の同業他社は、トイレ・バス、またはキッチンを中心とした水回り設備専業メーカー、または窓回り専業メーカーがほとんどです。それに対し、LIXILグループはワンストップで何でも供給できる。これが私たちならではの特長です。

その強みを活かし、住宅にまつわるお客様の変化に対応するためには、私たちは今、そういったお客様との関わり方を根本的に変えていかなければなりません。
たとえば子供ができた時。あるいは成長する過程。そして、子どもが独立して夫婦二人に戻っていく時。そういった、人々の暮らしの節目にいつでも関わってお手伝いしていく。「物を売っておしまい」ではなく、その後もいろいろな形で関わっていくのがLIXILグループであり、それこそが国内住宅市場で成長を続けるための戦略となります。
「生涯価値の実現」は、そういった意味で定めました。

―― では、VISION3「自然・環境との共生」については?

齊藤:
たとえば風向きを考えた採風で家の中に風の通り道を作り、無駄にエアコンを使わないようにしたり、サッシやカーテンなどで断熱効果を上げたり。エネルギーを使わないで快適に暮らす方法は、色々あります。
家電メーカーさんが取り組んでおられる機械そのものの省エネや創エネによる環境への取り組みをアクティブなエコとするならば、LIXILグループが目指すのは、設備や機器の改良に加えて光・風・水といった自然の恵みを上手にコントロールする、いわば「パッシブな(受け身な)エコ」。すでに様々な環境配慮商品・省エネ商品を発売しています。(リンク)

宇都:
大学との共同研究も進めています。
東京大学駒場リサーチキャンパス内に立てた共同実証実験住宅「COMMAハウス」(コマハウス)では、ソーラーパネルで電気を作り、冷暖房は地中熱を活用する「創エネ」と、風の通り道を作ったり日陰を作ったりと様々な工夫による「省エネ」を組み合わせることでエネルギー使用量0の「ゼロエナジーホーム」を実現したいと、東京大学生産技術研究所との間で様々な研究に取り組んでいます。

共同実証実験住宅「COMMAハウス」

(画像をクリックして拡大: 株主通信(2011年9月中間ご報告)P7より引用)

Q3: 事業環境とその対応は? また、それに対応する戦略は?

―― 先ほど、「生涯価値の実現」に関するお話で、政府もリフォームを後押ししているという話がありましたが、これについてもう少しお話いただけますか?

齊藤:
今年(2012年)3月、国土交通省は「中古住宅・リフォームトータルプラン」を発表し、“2020年までに中古住宅流通・リフォーム市場を倍増させる”ことを目標に掲げました。

戦後、日本の住宅政策は、人口増加と住宅の量的不足に対応することを目的に、新築市場偏重で進められてきました。その政策が転換期を迎えたのが、2006年です。この年に制定された「住生活基本法」は、今あるストック――つまり既に建てられた住宅ですね、現存する住宅の質を上げることを重視すると宣言しました。

2012年の「中古住宅・リフォームトータルプラン」は住生活基本法の理念をより具体的な方針と数値目標にしたもので。今後は、このプランに基づいてリフォーム市場の整備に向けた施策が進められていくこととなります。

―― 数値目標はどのように設定されているのですか?

齊藤:
現在、リフォーム市場は約6兆円、中古住宅売買市場は約4兆円あると言われていますが、これを2020年にはそれぞれ倍の、12兆円と8兆円、合わせて20兆円のマーケットにするとしています。年率換算ではおよそ7%の成長ですね。

―― 日本国内にすごい成長市場が出現することになるのですね…!

齊藤:
その通りです。したがって、この成長市場のニーズをいかに取り込むかが、LIXILグループの国内事業にとって、最大の成長の鍵となります。
その実現のためには、リフォームに合ったバリューチェーン(商流)をいかに速く、他社に先駆けて構築できるかが重要と考えています。

―― 新築と中古では、バリューチェーンはどのように異なるのでしょう?

齊藤:
新築住宅の場合、建築計画があって、6ヶ月間ぐらいの間に、ちゃんと工程管理されながら、徐々に造られていくんですね。したがって、納期管理もスムーズです。
加えて、特にハウスメーカーさんやパワービルダーさんが作る場合、大量に造る分、1回あたりの注文量は多くなりますので、スケールメリットを出すことができます。

一方、リフォームの場合は納期が非常に短い上に、注文量も1回あたりは非常に小さい。たくさんの住宅が一度にリフォームをするわけではありませんから致し方ないのですが、効率が非常に悪い。そしてこれこそが、リフォーム専門で大きくなった企業がほとんど存在しない原因となっています。

―― LIXILグループとしては、この状況にどう対応していくのですか?

齊藤:
戦略の1つとして「建デポプロ」――工務店さんや職人さんが、好きな時に、必要なだけの資材を購入することができるプロ専用の店舗です。

砂利1袋、ボルト一本から何でも買えるコンビニエンスストア、あるいは倉庫のような存在として便利にご活用いただきつつ、LIXILグループとしては、リフォーム用資材供給においてもスケールメリットを出していくことができるのが、この「建デポプロ」です。

出店開始からわずか2年半で全国に61店舗を展開し、会員数は35万(個人・法人含め)を超えるまでに成長しましています。

建デポプロ

―― なぜ「建デポプロ」を展開することができたのでしょう?

齊藤:
実は、私たちLIXILグループの「ビバホーム」は、日本に於けるホームセンターの草分け、パイオニアとして30年以上の歴史とノウハウを持っています。その購買力、何でも揃うという強み、これを活かすことができたわけです。

Q4: 今後の成長を見据えて取り組んでいることは?

―― 中期経営VISIONでは、「グローバル」も成長戦略に掲げておられましたが、こちらについても、現在の状況と今後目指す姿についてお話しいただけますか?

齊藤:
私たちはこれまで非常にドメスティックな――海外売上比率も3%に満たない状態がずっと続いていた企業です。
ですが、国内からアジアへと視野を広げれば、日本のすぐ隣に成長市場があるわけです。人口動態を考えましても、今そこに進出しないとチャンスを逃してしまう。アジアを市場ととらえることで、我々LIXILグループもともに成長し、それによってアジアの方々にもGood Livingを提供していきたい。

そういったことで、まず手を打ったのが、衛生陶器メーカーであるアメリカンスタンダード社・アジアパシフィック部門の買収でした。アジア10カ国に拠点を持ち、15カ国に販売している同社は、販売網はもちろん、バックオフィス(ITシステムや人事、経理、ガバナンス)もしっかりとした体制をすでに持っています。ところが、売っているのは衛生陶器だけだったんですよ。

―― ああ、なるほど。それではもったいない、ということなのですね。

齊藤:
ええ。そこで、いわゆる衛生陶器以外も、彼等の基盤を使って売っていきましょうというのが今、アジア戦略の核になっています。私たちは元々アジアに工場は持っておりますので、モノづくりの方は問題なく提供できるんですね。あとは、それを販売していくディストリビューションチャネルが必要だったのです。

―― 今、御社の高品質な製品を使った「Good Living」を求める方々は、アジア各国に増えているのですか?

齊藤:
増えていますね。いわゆる中間層が豊かになってきた結果、「いい暮らし・いい住まい」に目が向くようになっています。

―― エリアとしては中国が中心となるのでしょうか。

齊藤:
いや、すべてですね。中国ももちろんそうですが、東南アジアも。
アメリカンスタンダードは10カ国に拠点があると申し上げましたが、商品は1アイテムだけだった。これを10商品へと増やし、地域と商品のマトリックスの穴を埋めていく「テン・バイ・テン(10×10)計画」を進めています。

もちろん、国別に、求められる優先度は当然異なりますので、国と商品の組み合わせについてはマーケティングをしながら商品開発を進めている最中です。まだ始まったばかりではありますが、これによってアジアの売上を大きく成長させていきます。

―― 今お話いただいたのは住宅分野におけるアジア戦略ですが、住宅の他に、オフィスビルをもうひとつの柱に掲げておられると聞きました。

齊藤:
はい。私たちはオフィスビルも「住空間」だと考えておりますので…。
この分野でのグローバルポジションを確保する足がかりとして買収したのが、カーテンウォール事業で世界No.1のペルマスティリーザ社です。

ペルマスティリーザ社

(図表:株主通信(2011年9月中間ご報告) p.5、及び2012年3月期決算説明資料 添付資料P10より引用)

ここに記載されている通り、売上高はコンスタントに毎年1千2百億円前後、営業利益は6%弱程度を安定的に出している企業です。彼らは、高層ビル向けでは世界一の技術力を持っていまして、世界中の設計事務所と付き合いがあるんですね。

もう本当に世界中なんですよ。北米、ヨーロッパ、中東、アジア、オセアニアと。
ただし、利益の出ない物件には手を出さないので、カーテンウォール部門だけでは成長を続けるのは難しい。そこで彼らが成長を求めたのがオフィスビルの内装だったんですね。何しろ設計事務所とは付き合いがありますので、インテリアに進出しようということでやり始めた。ところが彼らはインテリアに提供する商品をたくさんは持っていないわけです。

そういった意味で、LIXILグループに入ることは、彼らからすればインテリア建材が手に入るというメリットがあります。LIXILグループとしても有望な供給先を確保することができますので、両社の連携で同社の売上を成長させていきます。

―― 確かに高層のオフィスビルであれば、質の高いもの、より良いものというのが求められるので、そこは非常にマッチするわけですよね。

齊藤:
その通りですね。
ペルマスティリーザ社は世界中でいわゆるランドマーク的なオフィスビルに絞って手がけています。こういったオフィスビル向けは、通常であれば景気の波に左右されるという課題があるのですが、彼らのすごいところは、世界中に拠点があるのでひとつのマーケットに固執しない、というところにあります。
いい物件があったら取りに行って、そこにプロジェクトチームを作る。完成したら解散。それを繰り返すわけです。固定費を持たない経営が非常に進んでいて、ですから今回の欧州危機の影響もほとんど受けていないんですよ、実は。

―― 別に欧州マーケットだけで勝負しているわけではないから…?

齊藤:
はい。直近の第1四半期決算の結果を見ますと、アジアが非常に落ち込んでいるのですが――これは欧州危機の煽りですね。中国などの景気悪くが悪くなっていますので――今、逆に米国では伸ばしています。米国は今、景気が良くなってきていますので、そういったオフィスビルのプロジェクトが沢山あって、そこを取りに行ったと。アジアが落ちた分をアメリカが補うという形ですよね。このように、景気の影響を受けにくい構造になっています。

―― 御社にしてみればはこういったのをベンダーリストという形で乗るのではなくって、常に優先的に調達先になってくるというのは非常に大きいですよね。

齊藤:
そうです。設計事務所に直接売り込めるわけですからね、これは大きいです。
設計事務所を通じてネットワーク作りもできますし。

―― なるほど。アジアの住宅とグローバルな住空間としてのオフィスビル、両分野とも非常に楽しみな展開ですね。数値目標について改めてお聞かせいただけますか?

齊藤:
今申し上げた2つの分野だけでは中期経営VISIONに掲げた目標の1兆円には届きませんので、引き続きM&Aについては検討していきます。具体的には、北米・南米・あるいは欧州、そういった市場がターゲットとなります。もちろん、無理なM&Aは致しませんが、ビジョンとしてはそういう方向性であるとお考え下さい。

Q5: 個人投資家の皆様へのメッセージをお願いいたします。

齊藤:
私たちLIXILグループは、世界でも数少ない建材・住宅設備機器業界のコングロマリット企業として、世界を相手に新たなビジネスモデルを構築し、住まいと暮らしの“総合住生活企業”としてのグローバルリーダーを目指します。

そのビジョン実現に向けた第一歩が、2015年度までの「中期経営VISION」です。
まずは国内既存事業の構造改革を進め、創出した利益を、リフォームを中心とする国内成長事業へ、そして海外事業に投入していく。その挑戦に是非ご期待いただき、株主として、あるいはお客様として、私たちの成長ストーリーに参加していただけましたら幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。

―― 本日はありがとうございました!