日本は、生命保険の世帯加入率が90%以上、世帯あたりの加入件数は、なんと平均4.1件にのぼる世界一の「生命保険大国」と言われています。
その理由のひとつが、義理(G)・人情(N)・プレゼント(P)の「GNPセールス」による加入が多いこと。
親戚の付き合いで、あるいは職場で薦められて…といった理由で複数の生命保険に加入している人も多いのですが、果たしてその保障内容、契約内容が自分にとって最適なものなのか。しっかりと考えている人はかなり少ないのかもしれません。

ですが、生命保険は、「人生で二番目に大きな買い物」。そして、人々が互いを助け合う「相互扶助」の仕組みとして、これからますます必要になるもの。
だからこそ、生命保険をもっとわかりやすいものにしたい。お客様自身に比較して納得して選んでいただく商品を提供したい。そして、若い世代が安心して子育てをできるよう、保険料を従来の半額にしたい――こうした熱い思いをもって設立されたのが、74年ぶりの独立系生命保険会社である ライフネット生命保険株式会社 です。

「自分たちの友人や家族に自信をもってすすめられる商品しか作らない、売らない」ことをマニフェストのひとつに掲げる、ライフネット生命。ビジョンと特長、そして今後の戦略について、IRを担当している企画部の近藤さんにお話をうかがいました。

Q1: 御社のビジネスは何ですか?わかりやすく教えて下さい

(「2011年度決算説明会資料」P3より引用)

―― インターネット直販という事業形態が「便利で安い」ということは直感的に理解できるのですが、御社の場合は「正直に、わかりやすく、安くて、便利に」と書いてありますね。ここには、どのような思いが込められているのでしょうか?

近藤:
ライフネット生命の設立にあたり、社長の出口は、次の3つのビジョンを掲げました。

  1. 子育て世代の保険料を半額にしたい
  2. 保険料の不払いをゼロにしたい
  3. 比較情報を発展させたい

これらを成し遂げるためには、「正直に経営し、わかりやすく、シンプルで」あることは非常に重要だと考えています。インターネットを主な販売チャネルとすることは、これらを実現する上で最適な手段として選択したものです。

―― 子育て世代の保険料を半額にしたいと考えたのはなぜなのでしょうか?

近藤:
生命保険の基本は、「死亡保険」であると考えると、その必要性が最も高いのは、子育て世代である20代~40代のご家庭です。一方で、日本では今、この世代の平均所得が下がり続けており、彼らには、一般的に月額で1万円を超える従来の対面販売による生命保険会社の生命保険以外の選択肢が必要だと考えました。

―― インターネット販売にすればなぜお手頃な保険料が実現できるのですか?

近藤:
お客さまが支払っている保険料には、保険会社の人件費や宣伝費、事務所費用など、保険会社の運営経費である「手数料」に相当する部分が含まれています。この保険会社の「手数料」に相当する部分を、「付加保険料」と言います。
お客さまが支払う保険料が高いか安いか、多くの場合、それを左右するのは付加保険料、言わば保険会社の「手数料」に相当する部分です。

当社以外の保険会社は純保険料と付加保険料の割合を開示している訳ではありませんが、特に死亡保険の場合、純保険料は各社とも年齢毎の死亡率等、ほぼ同じような水準で計算されていると考えられますので、基本的には付加保険料が安くなればそれだけ全体の保険料も安くすることができます。

保険料の内訳

(「2011年度決算説明会資料」P7より引用)

―― 御社はその付加保険料、つまり自社の「手数料」に相当する部分を抑えておられるのですね。

近藤:
はい。社長の出口はよく、「うちのビジネスモデルは缶ビールのようなもの」と説明しています。
居酒屋でビールを飲むと400円から500円くらいかかりますが、それは、居酒屋のスタッフの人件費や店舗の運営費などがかかっているからです。でも、自分で小売店に行ってビールを買えば、1本200円くらいで済みます。人件費や店舗運営費の部分を節減することで、ビールの「原価」、つまり、保険金や給付金の支払いに充てられる「純保険料」はそのままに、お客さまが支払う保険料を抑えることが可能になるのです。

当社は、唯一の店舗がインターネット上のウェブサイトで、営業職員もおりませんので、その分の人件費や店舗費、光熱費などを抑えることで、営業職員を主体とする販売方式比較して保険料を低水準に設定することができました。

―― それはとてもわかりやすいたとえですね。
それにしても、保険は相当詳しい説明が必要な商品というイメージがあるのですが、その点については、インターネット直販を行うにあたって、どう解決されたのですか?

近藤:
説明が不要なぐらい商品をわかりやすいものにすることが第一だと考えました。
日本で販売されている多くの生命保険商品は、「主契約」の上にさまざまな「特約」がついています。
こうしたわかりにくさをなくすため、私たちは特約を全廃し、シンプルな生命保険商品を作り上げました。

―― なるほど。それでは、ビジョンの残り2つ、「保険料の不払いをゼロにしたい」と「比較情報を発展させたい」をどのように実現しておられるのかについてもおうかがいできますか?

近藤:
実はこの2つも、商品をシンプルにすることが実現につながります。
例えば、数年前に社会問題となったその不払い、その発生原因の多くは支払事由――つまり、どんな時に保険金や給付金が支払われるかがもっとわかりやすいものになっており、かつそれが明示されていれば、不払いの件数も減らすことができたとも考えられます。

ライフネット生命は、商品自体の構造に加えて、支払事由もシンプルでわかりやすいものにした上で、それらを明確に約款に記載し、すべてウェブサイトで公開しています。

―― 保険料の内訳の公開は、業界唯一の試みだとうかがいました。

近藤:
はい。 商品は、極力シンプルにし、徹底的に情報開示を行うことで、お客さまに信頼いただくとともに、お客さまご自身が考え、保険を選択していただけるようにしたいという考えに基づくものです。

保険料の払込や告知の義務、あるいは保険金をお支払いする場合の条件や支払額といった、保険の契約内容のすべてが記載されている保険約款も、契約前にお読みいただき、内容に納得していただくべきものと考え、ウェブサイトで公開しています。

(ディスクロージャー誌「ライフネット生命の現状2012」P6より引用)

Q2: 御社の強み、他社との違いはどこにあるのでしょうか?

―― 「シンプルな商品」とのお話がありましたので、ここで、具体的な商品構成についてもおうかがいできますか?

近藤:
2013年3月現在、4種類の商品を扱っています。開業当初は、定期死亡保険「かぞくへの保険」、終身医療保険「じぶんへの保険」の2商品で、その後、就業不能保険「働く人への保険」、昨年10月に定期療養保険「じぶんへの保険プラス」を加えました。

保険料商品一覧

ライフネット生命の商品

(ホームページ「私たちの商品」より引用)

商品別保有契約件数(四半期ベース)

(クリックして画像を拡大:ホームページ「業績・財務情報」より引用)

―― これらの商品の特長は何ですか?

近藤:
かぞくへの保険(定期死亡保険)」は、低廉な保険料で死亡保障をご提供しています。加えて、死亡原因によって支払われる保険金が変わらないことや、保険金額も500万円~1億円まで幅広く設定できる点などを評価いただいています。

じぶんへの保険(終身医療保険)」は、公的保障でカバーされない差額ベッド代などを保障する商品で、保険料は生涯一律です。病気やケガの種類にかかわらず、治療を目的とした1泊以上の入院からお支払いしています。また、昨年10月に発売しました「じぶんへの保険プラス(定期療養保険)」は入院時の医療費の自己負担部分や、入院前後の外来、そして、がんや先進医療に対応しています。

―― 就業不能保険「働く人への保険」。これはどのような保険なのですか?

近藤:
病気やケガでご自身が働けなくなったときに、毎月お給料のように保険金をお支払いするものです。
日本国内の生命保険会社の中で、個人向けに単品で販売しているのは当社だけです。

―― この商品を作った理由は何ですか?

近藤:
働き盛りの方々にとっての大きなリスクのひとつに、「長患い」があります。
治療や手術の技術も向上し、検査の精度も向上していますので、それこそ今までであれば亡くなられてしまったようなご病気やお怪我でも、生存できる可能性は高まっています。そして、「生存はしているが働くことはできない」、そういったケースは実際には死亡率と同じくらいあると言われています。

今までの保険は「一家の大黒柱であるお父さんが亡くなった場合に備え、家族のために保険をかける」というものでした。ですが、今は世帯のあり方も多様化し、一人世帯や、ご夫婦二人だけで共働きといった世帯も増えています。こうした環境変化の中では、働けなくなる場合を保障する保険が重要になります。そのような観点から、この就業不能保険は「21世紀型の生命保険」とも呼ぶこともできるのではないでしょうか。

―― 確かにおっしゃる通りですね。
ところで、こういった新しい商品を出される時の、御社の基本的な考え方をお聞かせいただけますか?

近藤:
基本的には「生命保険に入れない人をなくす」、「困っているところを保障する」という点を重視しています。それは、保険の原点である相互扶助の精神に立ち戻るという意味で重要ではないかと考えています。

―― つまり、御社のコアバリューはそこにあるということですね。
最近、「ライフネット生命は決して安くない」といったご意見を見かけることもあるのですが“安さ”が価値なのではなく“必要な人に、必要な保障を”“わかりやすい内容で”かつ“適正な価格で”提供することに、重きをおいておられるという理解で良いでしょうか。

近藤:
その通りです。もちろん、当社の保険を検討されるきっかけとして、保険料が安いという点で選ばれることはあると思いますが、当社はマニフェストにお示ししている通り、「わかりやすさ」や行動指針の中にある「自分たちの友人や家族に自信をもってすすめられる商品しか作らない、売らない」といった点も非常に重視しています。
こういった点にご共感いただき、当社を選んでいただいているお客様は一定数いらっしゃると理解しています。

編集室注:
ライフネット社の「生命保険マニフェスト」全文はこちらからご覧いただけます

  1. 私たちの行動指針
  2. 生命保険を、もっとわかりやすく
  3. 生命保険料を、安くする
  4. 生命保険を、もっと手軽で便利に

Q3: 事業環境とその対応は? また、それに対応する成長戦略は?

―― 契約者数については、今年2月に10万人を突破したというリリースを出しておられましたね。
契約者は、総じて言うとどのような層なのでしょうか?

近藤:
年齢層としてはご契約者の4分の3近くが20代・30代で、残る4分の1も大部分が40代の方々ですから、その意味では当初想定した通りの年齢層のお客様にご契約いただいていると考えています。

契約者の年齢層別構成

(ディスクロージャー誌「ライフネット生命の現状2012」P68より引用)

※1 2012年3月期に新契約が成立した35,953名のデータを集計 出所:ライフネット生命保険 新契約データ(2011年度)
※2 社団法人生命保険協会 年次統計「年齢階層別・男女別統計表」(2011年度)

当初は自分で保険を選んで契約することができる金融リテラシーが高い方が中心だった印象ですが、少しずつ認知度が上がるにつれ、最近ではその裾野が広がりつつあると感じています。

―― 今後その流れを加速していくためにはどのような課題があると考えておられますか?

近藤:
やはり、認知度を上げていくことが重要です。
当社の認知度は、インターネットの調査でも4割弱程度しかないという結果が出ていますから、インターネット以外も含めた一般の認知としては、ベースではもう少し低いと考えています。
そのため、認知度を上げていくこと、同時に安心感や信頼性を高めていくことが、保有契約者数、保有契約件数の増加につながる一番の戦略だと考えています。

―― 認知度を上げるために、具体的にはどのような活動をしておられるのですか?

近藤:
テレビCMや広告といった一般的なマス向けの広報・広告に加え、当社ならではの独自施策としてソーシャルメディアや経営者による講演会、書籍の執筆などの両建てで活動しています。

(2011年度決算説明会資料」P9より引用)

―― テレビCMの効果は大きいですか?

近藤:
当社はインターネットを主な販売チャネルとする会社ですので、当初はテレビCMを流すという戦略は取っていなかったのですが、地域限定などの形でテストしてみたところ、やはり効果が大きかったため、現在は戦略的に行っています。

契約者にアンケートをとると、一番多いのは「テレビCMで知りました」という結果ですし、信頼性を獲得する上でも貢献度は大きいと考えています。

―― 講演会については、確か「10人以上集まってもらえるのであれば全国どこでも」経営陣が行きます、というご方針だとか。それは(時間の使い方として)効率が悪いのでは?と思ってしまうのですが、実際はいかがなのでしょう。

近藤:
社長の出口は今でも、10人以上集まればということで全国回ってお話をさせていただいています。
その実感で申し上げますと、あまり多すぎない人数の中で、対面でお話をすると伝わる内容もだいぶ濃いものになりますね。特に、直接経営者が行ってお話しをすることで納得感と言いますか、当社に対する認知度や事業に対する理解度、そして信頼度も格段に増しますので、非常に効果的かなと思っています。

また、当社も積極的に活用していますが、ツイッターfacebookなどのソーシャルメディアの普及で、「濃い」認知を受けた個人が情報を発信し、他に影響を拡散しやすい状況が生まれていることも見逃せないと考えています。

―― ああ、なるほど。会場に400人おられても、実際に保険に加入される方が何人いるのかと考えれば、10人~20人の会場で密度の濃いお話をされる場合とあまり変わらないのかもしれませんね。

近藤:
そうですね。あとは生命保険商品の特性として、日常生活においてはなくても別に困らないものなので、申込みを検討される機会の多くは(就職や結婚、出産などの)ライフイベントがきっかけというところがあります。
そのタイミングで当社を検討していただけることは非常に重要だと考えていますので、その場ですぐに契約につながらなくても、やはりそういう話をさせていただく機会は重要ですね。

―― 講演やソーシャルメディアというのは、実際には集客のところでは、かなり効果が大きいと言えるのでしょうか?

近藤:
もちろんテレビCMと比べるとリーチできる人数は限られますが、CMや雑誌媒体、広告といった一般的な施策も取りつつ、本の執筆や講演、ソーシャルメディアといった当社独自の施策もとっていく、これらの両輪でPRをしていくことは、お客様との接点を増やすという意味で非常に効果的だと考えています。

―― 今後の拡大についてですが、基本的には若い方がターゲットであるということを考えると、少子化の影響や、日本においてはまだまだ伝統的な「生保レディの職場セールス」が非常に強いといったことがあり、そういった状況を、新規契約者を獲得していくための市場環境としてどのようにとらえておられますか?

近藤:
少子化とは言いながらも大体、年間に100万人以上の方が新社会人になっているというのが現在の環境です。
その毎年100万人の方がその後10年位の間に生命保険を検討すると考えれば、そこに特化するだけでもまだまだ市場は大きいと言えます。当社は、先日ようやく契約者数10万人を突破したぐらいですので、全体の中ではまだまだ伸びる余地はあるのかな、と考えています。

今後を考えた時にも、若い世代であればあるほど、インターネットに対するリテラシーが間違いなく高く、情報を比較検討し、選ぶということに慣れているという現実があります。
それを鑑みれば、若い人ほど生命保険についても比較的抵抗なく「じゃあインターネットで選ぼうかな」という選択肢をとるのではないかなと思っていますので、そういう点からもポテンシャルはあると考えています。

―― 事業展開エリアとしては当面は国内が中心ですか?

近藤:
国内の市場規模は世界第2位の保険大国ですので、非常に大きいものです。
当社はまだ社員90人の小規模な会社ですので、リソースが限られているうちは、特に20代・30代の子育て世代に注力をしていくことが優先だと考えています。

そして、規模が大きくなれば、もちろん選択肢を広げていくことも視野に入れていかなければなりませんが、今の時点では、まだそういう規模ではないかな、というふうには考えています。

Q5: 個人向けIRの方針および個人投資家へのメッセージをお話し下さい。

―― 2012年3月の上場から約1年が経過しました。この1年を振り返ってどのように感じておられますか?

近藤:
信頼性の向上は上場の大きな目的のひとつでもありましたし、この1年、実感してきた効果でもあります。
お客様にご契約いただく際、上場企業なら安心だと思っていただけることは非常に大事ですし、だからこそ今後もしっかりとした情報公開を続けることで安心してご契約いただける、株主の皆様にも安心して株を保有し続けていただける、そういった広報IR活動をしていかなければならないと思っています。

―― 投資家からはどのように見られていると感じておられますか?

近藤:
生命保険業界はそもそも上場企業が少ない(編集室注:他の上場生命保険会社は第一生命、ソニーフィナンシャルホールディングス、T&Dホールディングス)ですし、他の企業は皆、規模が大きくなってから上場しています。そういった意味で、当社のようなスタートアップ段階の生命保険会社が今後どうやっていくのか、ビジネスモデルがどこまで通用するのかといったところを含めて、投資家からはご興味を持っていただいていると感じています。

生命保険会社は息が長いビジネスになりますので、IRにおいても長期的な信頼関係を築くコミュニケーションが重要だと認識しています。そこは当社としてもまだまだな部分だと思いますので、たとえば個人投資家向けに生保の会計をわかりやすくご説明することも含め、今後も模索しながらやっていきたいですね。

―― では最後に、個人投資家の皆さんへのメッセージをお願いします。

近藤:
当社は、すべての軸を「マニフェスト」に置いています。まだまだ小さな会社ではありますが、今後業界を少しでも変えていきたい、良い方向に持っていきたいという思いで頑張りますので、まずはマニフェストをお読みいただき、私たちの考え方や行動に共感し、応援していただければ本当に嬉しく思います。

生命保険会社の会計は一般事業会社と比べ、少し特殊な面もありますので、なかなか手を出しにくいというところもあるかもしれませんが、私たちも工夫をして、わかりやすい情報をしっかりとお届けしていきますので、どうぞよろしくお願いします。

―― 本日はありがとうございました!