今や、「一皿100円」が大勢を占めつつある回転寿司。その価格を実現し、厳しい競争を勝ち抜くため、回転寿司業界ではコピー食材(人工いくら、人工数の子など)や化学調味料、人工保存料などが当たり前のように使われています。

こうした中、創業時から「コピー食材を一切使わない」「新鮮」「全皿100円」を貫き、さらに全食材から化学調味料、人工甘味料、合成着色料、人工保存料を除去することに取り組んでいるのが、「無添 くら寿司」を運営する株式会社くらコーポレーションです。
同社は、100円回転寿司大手の一角を占める企業として、そのこだわりを貫きつつ、業績を伸ばし続けています。

食の安全に徹底してこだわる理由は?食材へのこだわりと「全皿100円」をどう両立させているのか?などの疑問に、経営戦略部でIRを担当する野島さんがお答え下さいました。

Q1: 御社のビジネスは何ですか?わかりやすく教えて下さい

―― まずは、回転寿司業界の全体像について簡単にご説明いただけますか?

野島:
(財)日本フードサービス協会のデータによると、回転寿司や持ち帰り寿司も含む寿司業界全体の市場規模は、約1兆3000億円。うち、回転寿司は約4割、およそ5,000億円程度の市場と推定されています。

一方、「業界大手3社(編集室注:あきんどスシロー、カッパ・クリエイト、くらコーポレーション)の売上を合計すると3,000億円弱の規模であり、各社とも店舗展開をさらに積極化しておりますので、回転寿司業界は寡占化が進んでいると言えます。

―― 業界大手はいずれも100円均一店のチェーンですね。「安さ」を求める消費者の嗜好はやはり根強いということなのでしょうか。

野島:
ただ安いだけではお客様のご支持は得られません。 お客様が求めておられるのは「安心・安全で」安価、そして美味しいものです。
それは、当社が掲げる企業理念“食の戦前回帰”に合致するものであると、私たちは考えております。

(「ホームページ:企業理念」より引用)

―― なぜ「戦前回帰」なのですか?

野島:
食品添加物が急速に普及したのは、第二次大戦後のことです(編集室注:食品添加物という言葉が作られたのは、1947年=昭和22年)。現在使われている添加物も、大半は戦後になって作られたものですので、わずか50~60年の歴史しかありません。
つまり、それらの添加物が果たして本当に安全なのかどうかは、今後さらに年月を重ねてみなければわからないということなのです。

安全性がわからないのであればそれは極力排除すべきである、そう決めまして、私たちは四大添加物(化学調味料、人工甘味料、合成着色料、人工保存料)を一切使わないという方針で事業を営んでまいりました。

―― 四大添加物だけでもその除去は大変だったのでは?

野島:
はい。取り組みを開始してから実現まで、実に10年以上の歳月を要しました。
何しろ、寿司酢や醤油、わさびなどの基本的な食材はもちろん、ガリやマヨネーズ、お茶、味噌などもすべてメーカーさんに無添加仕様で作っていただいています。

―― ということは、もしかしてお米も特別製ですか?

野島:
もちろんです。国内で流通している大半のお米には農薬が大量に使われていますが、その安全性は添加物と同じく、まだわからない部分が多いのです。
それであればやはり排除すべきであろうということで、当社では10年ぐらい前から北海道と九州の農家に委託しまして、ほぼ無農薬の当社仕様で栽培していただいたお米を使っています。

―― そこまで徹底して「食の安全」に取り組んでおられる理由は?

野島:
創業者である当社の社長は、母親から「大きな商いをする人間になれ」と言われて育ちました。
私たちは、お客様はもちろん、現場で働く従業員のためにも「人体に悪影響を及ぼす可能性がある食品を売っている」という後ろめたい思いをさせたくないのです。

―― それだけ原材料や作り方にこだわれば売値も高くせざるを得ないと思うのですが、「くら寿司」のお寿司は全品100円ですね。なぜこの価格を実現できるのですか?

野島:
そこが、当社ならではの特長のひとつです。割高にならざるを得ない仕入れコストを吸収するために、設備や管理面での省力化、ハイテク化を積極的に進めてきました。業界の常識をくつがえす斬新なアイディアを実用化・特許化してきたのが当社なのです。

くらコーポレーションホームページより

存在価値の創出・提供
存在価値とは何か、商品で言えば、他にないものを創りだすこと。
店舗であれば、独自のシステムを創りだすこと。
くらコーポレーションは回転寿司業界の中では後発企業ですが、独自性・存在価値を追求し、発展を続けています。先発企業に学ぶものは少なく、回転寿司事業における商品・店舗・運営方法に先進的なオリジナルシステムを導入。新しい何かを常に創りだしていくマネージメント環境のものと、明確な存在価値を創出し、提供し続けます。

Q2: 御社の強み、他社との違いはどこにあるのでしょうか?

―― たとえば、どのような取り組みをされているのですか?

野島:
こちらをご覧ください。当社の工夫のうち、主なものを記載しております。

有価証券報告書「沿革」より (★=特許取得済み)

平成8年7月飲食店における皿の自動回収装置「自動皿カウント水回収システム」導入開始 ★
平成9年2月飲食物搬送装置「QRコード時間制限管理システム」システム完成・導入開始 ★
平成10年2月お客様のご来店状況を基に、寿司皿の適正量を計測する「製造管理システム」を導入
平成12年12月自動回収した皿枚数に応じてゲームを楽しめる「ビッくらポン」を導入 ★
平成14年4月携帯会員登録で待たずに座れる「epark(順番予約)システム」を導入
平成14年11月簡単操作で注文できる「タッチで注文システム」
平成15年8月リアルタイムの動画中継で店舗運営をサポートする「店舗遠隔管理システム」を導入
平成21年7月ご注文品を高速レーンで素早くお届けする「くら注文レーン」を導入
平成23年11月ウイルスやほこりから守る寿司キャップ「鮮度くん」全店配置を完了 ★

ここには記載されていませんが、現在では回転寿司業界で一般的になった「E型レーン」。これを開発し、2号店(1987年に出店)から導入してきたのも当社なのです。

―― 昔の回転寿司店は、楕円形のレーンでしたね。

野島:
はい。90年代ぐらいまでは、カウンター+ベルトコンベア、つまりO型またはU型のレーンで、寿司職人がその中央で寿司を握る形が主流でした。ですがその後、すしロボットの普及とともに、当社が開発した「E型レーン」、つまり、両側に席があって、フロアに寿司職人がいない店舗の形が増えてきました。

E型レーン

―― E型レーン店舗のほうが、コスト競争力が高いからなのですね。

野島:
もちろんそれもそうなのですが、実は、当社の田中がE型レーンを開発したきっかけは違うところにありました。

2号店の出店を検討していた当時、田中は「周りの目が気になって嫌やわ」という女性のお客さまの声を耳にしたのです。
確かに、当時のO型レーンでは、誰がどんなすしを何皿食べたのか、周囲から一目瞭然です。それが女性客の足を遠ざける要因になっていると感じた田中は、「他の人から自分の食べたものが見えない」店舗としてE型レーンを開発したという経緯があります。

ところでもうひとつ、こうした女性のお客さまへの配慮から生まれた工夫があるんですよ。

―― どれですか?

野島:
お皿の自動回収装置「自動皿カウント水回収システム」です。
お客様が食べ終わったお皿をこの回収ポケットに投入すると、自動でお皿の枚数をカウントします。お皿をテーブルの上に積み上げる必要がないので、女性のお客様も恥ずかしくありません(笑)。

自動皿カウント水回収システム

―― 確かに(笑)。ところで、投入したお皿はどうなるのですか?

野島:
ポケットの先には水が流れており、お皿は厨房の洗い場まで流れていく仕組みになっています。
このシステムは、自動回収したお皿5枚ごとに景品付きゲームを楽しめる「ビッくらポン」とも連動していますので、お子さまも率先してご自身でお皿を下げてくださいます。

これがお客さま満足と同時に、従業員のクリンネスや皿数カウントにかかる手間の削減にもつながりますので、当社は大変少ない人数で店舗を運営することができるのです。

 

―― なるほど、顧客満足とコスト削減の双方に貢献する仕組みなのですね。
ところで、寿司皿の上にかかっているドーム型の蓋のようなものは何ですか?

野島:
これも当社が開発し、特許を保有出願している「鮮度くん」です。お寿司の乾燥や空気中のウィルス・雑菌やほこりの付着を防ぐ働きがあります。

―― お寿司にプラスチックのキャップをかぶせているのは、他店で見かけたことがあるのですが、それとはまた違うのですか?

野島:
はい。プラスチックキャップの場合、キャップをかぶせるときに職人がキャップの外側を触ります。お客様もお寿司を選んで食べる際にキャップに触ります。お客様はそのキャップを重ねますので、キャップの外側、内側両方に雑菌がついてしまうんですね。なかなかクリーンな状態を保つことは難しいのです。

試していただくとわかるのですが、「鮮度くん」はキャップに直接触れずにふたを開けることができる仕組みになっています。そこが画期的なのです。

(「ホームページ「何もつかない。誰もふれない。日本初!「鮮度くん」登場」より引用)

―― 「おいしくて安全なものを食べて欲しい」という願いが具現化されているのですね。

野島:
そこが私たちの原点ですので。同じく特許を保有している「飲食物搬送装置「QRコード時間制限管理システム」、つまり、一定時間経ったすしを廃棄する仕組みを導入したのも同じ想いからです。

実は、田中がこのシステムの導入を社内で提案した時、現場からは運用が複雑になりすぎるとの反対もありました。ですが田中は「それでもやらなあかん」と、社内で対話を重ねた上で導入にこぎ着けたのです。

―― ところで、御社の店舗ではさきほどの「ビッくらポン」やオリジナルキャラクター「むてん丸」、DSダウンロードコーナーの設置など、他店に比べて子どもが喜ぶ工夫が非常に多いように見えます。
食材や味に関する本物志向とエンタテイメント性、ともに追求していくという方針なのでしょうか?

野島:
作れば売れる時代ではありません。美味しい・安いは当然で、その先に何をもってお客様に来店していただくかを考えなければならないのです。当社は安心・安全も含めた「美味しさ」と「安さ」にはこだわり続けておりますので、その上でご来店いただくためのきっかけづくりとして、アミューズメント性にも力を入れているのです。

当社のメインターゲットはファミリー層、家族連れの方々です。「ビッくらポン」はお客様の声をきっかけに、ゲームの要素を取り入れてお子さま向けに発展させました。今後も当社は、お子さまが喜ぶものを積極的に取り入れていく方針です。

小さなお子さまが、くら寿司に行って楽しかった、食べておいしかったと喜んでくださる。
お子さまが喜んでいると親御さんも喜ぶ。
そして、それを見てお子さまもまた喜ぶ
――そういった和やかな時間を過ごしていただくことが我々の目指すところですし、その楽しい記憶を持ったお子さまが、たとえば15年後、20年後にご自分がお子さまをお持ちになって、またくら寿司に行きたいなと思っていただける、そんな店作りに努めております。

(「ホームページ「むてん丸とは?」より引用)

―― 子供連れをターゲットとした外食チェーンという意味では、ファミリーレストランという業態が今、時代の節目を迎えつつあると言われています。
一方で、御社をはじめとする回転寿司業界はまだまだ発展しておられます。その違いはどのようなところにあるとお考えですか?

野島:
一般論ではありますが、ファミリーレストランに比べますと、回転寿司の場合はメニューのバリエーションも比較的豊富で、摂取カロリーや分量についても、皿数や商品の選び方で調整しやすいと言えます。ですから、その意味でお子さまやお年寄りも含め、ご家族でご来店いただきやすいところはがあると思います。

当社では最近、ラーメンや天丼を発売しましたが、まだまだ色々なものをこのレーンの上でご提供できると思っています。当社はサイドメニューの構成比率も他社さんより少し高いですので、「寿司」という名前はついていますが、その意味では寿司だけにこだわらず、安全・安心で美味しく、かつバラエティに富んだお食事をご提供するプラットフォームと考えております。

編集室注:

くら寿司では、無添加の出汁にこだわったうどんやラーメン、揚げたての天ぷら、最近発売した天丼など、様々なメニューを提供しています。

 「天ぷら盛り合わせ」       「かけうどん」      「7種の魚介醤油ラーメン」

(クリックして画像を拡大)

Q3: 事業環境とその対応は? また、それに対応する成長戦略は?

―― それでは、ここで改めて競争環境と成長戦略についてお話いただけますでしょうか。

野島:
競合チェーンも出店を強化しているため、出店を続けることは重要と考えております。当社の店舗数は2013年3月末現在で国内315店舗、海外7店舗です。
激戦区では競合が体力勝負の厳しい戦いをしておりますが、そうした中においても「安全・美味しい・安い」という基本戦略を堅持するため、出店条件の厳格化や出店コストの削減には引き続き取り組んでまいります。

出店地域一覧

(クリックして画像を拡大)

―― 実質無借金だとお聞きしました。

野島:
はい、営業キャッシュフローの範囲内で出店することを基本戦略としております。

―― 出店は年間何店舗ぐらいをお考えですか?

野島:
年間約25店舗です。上述のような出店条件や財務上の方針、人材の確保と育成などを考えますとこれが現在の当社にとっては適正なペースだと考えております。

有価証券報告書「対処すべき課題」より:

(1) 効率的な店舗運営

「安全・美味しい・安い」そして「楽しい」食事を提供し続けるため、さらなるコストパフォーマンスの向上に取り組み、業界最先端のIT化とともに、アミューズメント機能を充実させ、顧客満足度を高めてまいります。ますます多様化するお客様のニーズを敏感に捉えた商品・サービスの提供を迅速かつ確実にする体制を整えてまいります。

(2) 店戦略

「くら寿司」ブランドを広く周知していただけるよう出店地域の拡大を図りつつも、不採算店を出さないために出店条件の厳格化、及び一層の出店コスト削減に取り組みます。今期の新規出店は23店舗を予定しています。

(3) 人材の確保・育成

市場規模の拡大が期待できない外食産業の中で、激化する競争を勝ち抜くためには人材の確保・育成が重要な課題と認識しております。平成23年4月1日に新卒社員167名を迎え入れました。

お客様にご満足いただくためには、安全で高品質な商品を安価にご提供するとともに、従業員の接客力向上が大切であると考えております。

“教育日本一企業”を目指して、「大阪狭山研修センター」においては、社長が講師を務める“社長塾”をはじめ、パート・アルバイト従業員を対象にした研修会も実施しておりますが、さらに、海外展開に備えたカリキュラムも充実させ、グローバルな人材育成にも注力してまいります。

―― 出店要請も多いのでは?

野島:
はい。おかげさまで当社店舗の集客力をご評価いただきまして、日常的に(出店要請は)ございます。
その意味では、我々の出店基準に沿っていて、なおかつ良い条件での出店を選別できる状況ではあると言えます。

―― 店舗のリニューアルも進めておられるとお聞きしました。

野島:
はい。タッチパネルの高機能化や、注文品を素早くお届けする高速レーンの導入などを進めております。現在、7割ぐらいの店舗に導入しており、今後すみやかに全店へ導入していく予定です。

Q4: 個人向けIRの方針および個人投資家へのメッセージをお話し下さい。

―― それでは最後に、個人投資家の皆さんにメッセージをお願いいたします。

野島:
当社は、創業以来の行動指針である「見えないところを大切に」を旨として、日々の業務に取り組んでおります。
見たり、触れたりすることができず、実感することが難しい「安全・安心」を、いかにすればお客様に実感していただくことができるのか――四大添加物の除去や商品の鮮度管理などのさまざまな取り組みは、すべてがこの行動指針と、“お客様に安全・安心なお寿司を召しあがっていただきたい”との強い思いに基づいております。

私たちは、引き続きお客様の声に真摯に耳を傾け、お客様に本当の安全・安心をお届けするための取り組みをさらに進化させながら、持続的な売上・利益の成長を果たしてまいります。皆さまには、是非長い目で当社にご期待をいただけましたら幸いです。

―― 本日はありがとうございました!