空気や液体が流れる部分を開け閉めする「バルブ」。
身近なところではビルや住宅の水道・下水・ガス・空調の配管で、大きなところでは石油・LNG(液化天然ガス)などのプラントで使われています。
その”バルブ業界”で国内最大手の 株式会社キッツ

国内シェアを固めつつ、「水」と「エネルギー」で世界市場での拡販を狙っています。
同社 広報・IR室の藤岡さんにお話を伺いました。

Q1: 御社のビジネスは何ですか?わかりやすく教えて下さい。

―― 御社の商品の中で一番大きな割合を占めているのが「バルブ」だと伺いました。

藤岡:
はい。キッツグループの事業セグメントは3つあるのですが、売上の7割、利益の9割を稼いでいるバルブ事業が、名実ともに我々のコア事業と言えます。

私たちは、国内外で高品質の「KITZブランド」を確立し、国内では銅製やステンレス製のバルブは高いシェアを保有し、グローバルでは売上7位(2011年度のバルブ売上高をもとにキッツにて推定)の規模を持つ、世界有数のバルブメーカーです。

キッツグループの事業ドメイン

―― 基本的なことをお伺いするようで恐縮なのですが、そもそもバルブとはどのような役割を果たすものなのでしょうか?

藤岡:
少し難しい言い方をしますと、バルブの役割は「流体制御」です。
「流体」というのは水や空気、石油、ガスやオイルなどの液体(または気体)を指します。配管の中を流れるこれらの流体を、開閉によって流したり止めたり、流量を調整したりするのがバルブの基本的な役割となります。(参考:バルブの種類と構造

ではどこで使われているのかと言えば、流体が皆さんの身の回りのあらゆるところに存在するわけですから、「流体あるところにバルブあり」で、バルブもまた、我々の身の回りのどこにでもあります。
たとえばビルやマンション、一戸建てには当然上下水道や空調がありますし、工場では配管があるところや給水設備、あるいは油圧の制御など、そういったところには必ずバルブが使われています。

キッツグループでは9万点の種類のバルブを年間2,200万個作って販売しておりますし、国内では非常に高いシェアを持っておりますので、普段意識されていなくとも、実は皆様のお近くの色々なところに当社のバルブが使われているんですよ。

幅広いフィールドで皆様の豊かな生活を支えるキッツ製品

(クリックして画像を拡大: 会社案内p.2-3より引用)

Q2: 御社の強み、他社との違いはどこにあるのでしょうか?

―― 非常に広い用途があるということがわかったのですが、その中でも特にここが強い、というものがあるとすればどの部分になりますでしょうか?

藤岡:
用途別では、水回りとエネルギー関連。この2つが我々の重要な事業領域ですね。

バルブの材質別では、銅製とステンレス製。
入手可能なデータによれば、当社は、国内の銅製バルブ(主に建築設備用に使われます)やステンレス製バルブではトップシェアを持っています。
当社の売上に占める銅製バルブの割合は約3割、ステンレスは約4割ですから、材質別ではこれらが中核を占める製品群であると言えます。

―― その圧倒的なシェアを支えている御社の強みとは?

藤岡:
ひとつには、品揃えの多さ=総合バルブメーカーである、ということですね。

バルブ業界は、国内でも海外でも小規模な企業が多いんです。
市場規模は世界全体でおよそ6兆円~7兆円程度しかないのですが、バルブメーカーの数は数えきれないほどあります。正確なところはわかりませんが、日本には200社以上あるという人もいますし、中国では6千社あるという話もあります。

そういったものすごい数の企業がどう成り立っているかと言うと、ターゲットを絞り込んでいるんですね。「この製品だけ」「この製品のここの部分だけ」あるいは「このお客様だけに」売るといった、ニッチな市場で生きている企業が圧倒的に多く、当社のように色々なところに製品を提供し、売上でも当社くらいの規模を持つような企業はほとんどありません。

ですから、その品揃えの豊富さ、「キッツに頼めば大体のものは買える」というところは大きな特長と言えるのではないでしょうか。

次に、品質。ここにも私たちの強みがあります。

バルブは、基本的には鋳物製品です。
他社では鋳造設備(鋳物の製造設備)を持っておられるところは少なく、鋳物を仕入れて自分のところで加工・組み立てをされていることが多いのですが、やはり鋳物が悪いといくら精密に加工・組み立てをしても、本当の意味で高い品質を実現することはできません。

当社は鋳造設備や技術を持っておりますので、自社で鋳物を吹いて(編集室注:溶けた鉄を型に流すことを「鋳物を吹く」と言います)、加工・組み立てまで一貫で生産を行います。
もちろん、取扱種類も多いので、すべての製品で鋳物から生産ということではないのですが、一貫生産ができるというのはこの業界では特長になると思います。

―― 国内で鋳造から…となると品質は高くなる一方で、コスト競争力が課題になると思うのですが、その点についてはいかがですか?

藤岡:
当社の商品は汎用品が多いので、すべてを日本国内で生産していたのでは価格面で合わないというところはあります。
その点は、中国(4箇所)、タイ(2箇所)を含む10箇所の海外工場を活かしたグローバルな最適地生産を図っています。鋳造設備は海外にもあるんですよ。

Q3:事業環境とその対応は? また、それに対応する戦略は?

―― 次に事業環境についてお伺いしたいのですが、日本で非常に高いシェアを持っていらっしゃるという中で、一方でその日本の国内の需要というのは、今は減少気味、あるいはあまり大きく伸びないといった状況なんでしょうか?

藤岡:
そういった面は確かにあります。
国内の年間生産額も過去には5,000億円を超えていたこともあるのですが、現在は4,000億円をちょっと切る水準になっていると思います。

ただ、当社が大きなシェアを持っている建築設備用の銅製バルブなどの需要は、そう簡単に減りません。特に日本の場合は、マンションの大規模修繕やビルのメンテナンス時のリプレース(取り替え)需要が非常に多いのです。
もちろん、傾向としては人口の高齢化、少子化が進めば、今後の新築住宅の着工は傾向としては下がっていきますが、リプレースの割合が大きいので安定した需要が見込めるのです。

―― 御社のバルブ事業は国内の売上のほうが多いのですか?

藤岡:
はい。バルブ事業でいうと、売り上げでは約7割、利益はさらに国内で稼いでいます。
リーマンショック時を含め、営業利益においては、当社が過去に一度も赤字になった事がないのは、この安定したリプレース需要と、販売先が分散していることが理由です。

―― 販売先の分散ですか?

藤岡:
たとえば今は、半導体業界があまり良くないですよね。
こういった時に半導体に取引先が偏っていると赤字という事もあり得るのですが、当社の場合は、建築設備関連もあれば石油関連もある、そういった形で様々な製品を作っていますから、カバーし合えるところがあります。

Q4: 今後の成長を見据えて取り組んでいることは?

藤岡:
国内は「安定」だけではありません。
当グループが2010年に掲げた「KITZ Global Vision 2020」で、2020年には売上2,500億円、営業利益200億円という数字を掲げていますが、その中身をご覧いただければわかりますように、国内も伸ばす計画としております。
当グループのバルブ事業の国内売上は前期実績で550億円くらいですが、これを800億円強まで積み上げていく計画になっています。

―― 御社はすでに国内で高いシェアを持っておられますし、国内市場は全体としては縮小傾向にある中で、この目標をどのように達成されるのでしょうか?

藤岡:
先ほど日本国内のバルブ生産は約4,000億円と申し上げましたが、当社の前期の国内売上は550億円ですから、単純計算ではシェアは14%ぐらいしかないわけです。
確かに、建築設備向けに多く使われる銅製のバルブや、石油および機械装置など工業向けに多く使われるステンレス製のバルブは高いシェアを保有していますが、全体を見ればまだまだ手を付けてない分野や弱い分野、今の市場は小さくても今後伸びる市場--たとえば環境であったり新エネルギーであったり、そういったところにもしっかり売っていく事が必要なんですね。

環境関連で注目しているのは、「水」です。
当社自身がもともと水まわりに強いということもありますが、何と言っても、2020年には世界で110兆円に達すると言われている、世界の水ビジネス市場の成長力を取り込むことは重要です。
そのため、当社は今、キッツグループ各社の水関連ビジネスやソリューションを集めての「KITZ Water Solutions」というプロモーション活動を展開しています。

水関連の新たな国際的プロモーション活動

新エネルギー関連では、水素ステーション用バルブ市場への本格参入を進めています。
燃料電池車の燃料を供給する水素ステーションは、燃料電池車の需要の広がりとともに、今後高い成長が望める市場です。
水素ステーションで使われるバルブ(水素用高圧バルブ)は、技術的には非常に難しいのですが、NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)から委託を受けて開発、製品化をすすめ、今秋から販売を開始しました。

水素ステーション用高圧バルブを開発・発売

―― 「水」と「エネルギー」は海外における成長戦略の柱となるのですか?

藤岡:
そうですね。やはり得意とするエリアや市場から強化していくのが基本ですので、エリアとしてはアジア、市場では「水関連」と「エネルギー」が中心となります。

エネルギーについては、現在の当社のラインアップは石油精製・石油化学向けが圧倒的に多いのですが、今後、エネルギーの主役はガスに、そして新エネルギーに移っていくでしょうから、それに対応できる新製品を開発していかなければならないですね。

―― 海外に営業をかけていく上での課題としてはどのようなものがありますか?

藤岡:
まずは、品揃えですね。海外のニーズ、マーケットに合う製品を提供しなければなりません。
今の当社のビジネスというのは、海外においてもほとんどがハイエンドで非常にクオリティの高い製品を提供するもので、それによってブランド力が培われているというところはあります。しかし一方で、海外にはミドルマーケットも当然あるわけですから、そこにも対応していかなければ現状以上にシェアを上げることはできません。

次に重要なのは、販売ネットワークです。
海外における当グループの販売ネットワークはまだそれほど強くはありませんので、代理店のネットワークをきちんと整備することが重要です。
そのために昨年、シンガポールに現地法人を新設し、ASEAN10カ国に対する販売網の強化をスタートしました。

その他では、プラントビジネスに力を入れています。
昨年、当社の収益が非常に低下した理由は、海外のプラント案件で赤字になったものがあったことによります。
その反省があり、プラント関係についてはプロジェクト統括部を昨年12月に新設し、動き始めました。

最後に、価格と納期です。
当社の製品はハイエンドなために、どうしても価格が他社に比べて高く、価格競争で劣勢に立たされる事が多くあります。
また、納期面においても、必ずしも優位に立っているわけではありません。
グローバルに収益を拡大していくためには、コストダウン等によるグローバルコストの実現と受注から納品までのリードタイムの短縮による納期対応が重要だと考えています。

―― プラント関連の受注はどのように進めておられるのですか?

藤岡:
日系のエンジニアリング会社を通じて海外のプラントに納めています。
ただ、その企業自体も調達はグローバルにしておられますので、納期や品質、価格、色々な面で世界との競争に勝たなければ採用は叶いません。
海外メーカーとの競争にも勝てる製品を開発し、グローバルコストを実現し、納期を守る。
もちろんサービスも向上させることで、採用率を高めていかなければなりません。

―― プラントは石油関連が主ですか?

藤岡:
現状ではそうですが、今後は市場も石油からガスに移っていく中で、ガス関係にも力を入れていきます。

―― プラントのエリアとしては中東がメインでしょうか?

藤岡:
中東はプラント関連の非常に大きいプロジェクトが多く目立ちますけれども、実際には東南アジアやオーストラリア、そういったあたりにも中小型のプロジェクトは多いです。当社としては、そういった需要もとっていきます。

Q5: 個人投資家の皆様へのメッセージをお願いいたします。

―― それでは最後に、個人投資家の皆様へのメッセージをお願いします。

藤岡:
当社は、1951年に創業し、今日では、高品質の商品「キッツブランド」を確立し、国内外のお客様から高い評価をいただき、アジア最大手のバルブメーカーとして成長を遂げてまいりました。
今後は、グローバル化した市場と事業環境を踏まえ、2020年度には、「グローバルトップ3」を実現するために、海外市場の収益拡大など「真のグローバル企業への進化」を目指してまいります。

また、キッツグループの経営方針のキーコンセプトである「選択と集中そして成長」を図りながら、投資家の皆様のご期待の応えてまいります。

―― 本日はありがとうございました!