業務用のマヨネーズ、ドレッシングを製造している ケンコーマヨネーズ株式会社。
実は、今の主力商品は「サラダ」です。外食、中食、コンビニエンスで売っているサラダ、ケンコーマヨネーズ社製のものが多く使われているんですね!

30日も保つ「ロングライフサラダ」、「ごぼうサラダ」、これも同社が開発したもの。開発秘話は、相当面白いです(笑)。
広報部の渡辺さん・杉山さんに「サラダ文化・サラダ市場」の広がりを伺いました。

Q1: 御社のビジネスは何ですか?わかりやすく教えて下さい。

――  株主通信「ケンコーレポート」の創刊号(2011年6月発行)を開くと、“サラダNo.1企業を目指して”という文字が目に飛び込んできました。
御社は社名が“マヨネーズ”なのですが、このページの記述には「マヨネーズからサラダへ」とも書いてあります。まずはこのあたりの考え方や現在の事業内容からご説明をお願いできますでしょうか?

(リンク先PDFを表示して拡大 : ケンコーレポート 創刊号(第55期第2四半期)pp.1-2 より引用)

渡辺:
当社は食用油脂の販売からスタートし、業務用のマヨネーズやドレッシングへと事業を拡大してまいりました。
2012年3月期末の実績ですと「マヨネーズ・ドレッシング類」の売上が2番目で、最も大きな割合を占めているのは、サラダなどの「調理加工食品」です。

商材別売上高構成比

(2012年3月期決算説明資料 P11より引用)

なぜそうなっているのかと申しますと、それは私どもが、単にマヨネーズやドレッシングを売ってきたのではなく、お客様である外食産業や中食を提供する量販店やコンビニエンスストアなどのお客様向けにその用途(=メニュー)をご提案し、実際にそれを商品化し続けてきた企業だからなのです。

こちらの年表をご覧いただきながら、もう少し具体的にご説明しましょう。

当社売上高の推移と主な出来事

(クリックして画像を拡大 : ケンコーレポート 第2号(第55期)pp.3-4 より引用)

当社が1977年に発売した初めてのサラダ――業界初の「ロングライフサラダ」は、製パン会社様からの要請でサンドイッチ用に開発した商品でした。

今から30年以上も前ですから、当時は街のパン屋さんの冷蔵設備も十分ではなく、コンビニエンスストアもありません。ですから、夏場になると、パン屋さんはジャムサンドやハムカツサンドといった腐りにくいものしか売ることができなかったんですね。

でも、暑い季節だからこそお客さまはさっぱりしたものを食べたい。タマゴサンドやポテトサラダのサンドイッチが食べたい。
だから、夏場でもいたまない、サンドイッチにはさめる具材を作ってもらえないか?と、以前から取引があった大手製パン会社様からご相談をいただいたのが「ロングライフサラダ」誕生のきっかけになりました。

―― どうやって日保ちさせたのですか?

渡辺:
真空パックに入れたサラダを加熱殺菌しました。
ただ、マヨネーズは熱に弱いですから、この方法を実現するためには、加熱に耐えられるマヨネーズも新たに作る必要がありました。

その2つの研究開発を同時に進めて、ようやく生まれたのが未開封なら冷蔵で30日、35度の気温下でも2~3日は保存可能な「ロングライフサラダ」です。

―― これはどのくらいの時期からヒットしたのでしょう?

渡辺:
何しろまったく新しいジャンルの商品ですから、正直、最初はなかなか大変でした。
ですが、1982年に日本食糧新聞社制定の 「業務用加工食品 優秀ヒット賞」を受賞しましてね。これをきっかけに広く認められて、その後は急速に伸びていきましたね。

Q2: 御社の強み、他社との違いはどこにあるのでしょうか?

―― 同じく80年代に発売されたごぼうサラダ、こちらも御社が開発して世に出したものだと聞きましたが。

渡辺:
ごぼうサラダはですね、実は、失敗作になりかかったあるドレッシングの用途として開発したものだったんですよ。

その頃、当社は「和風あわせ味」という、マヨネーズにしょうゆを加えたような味のドレッシングを開発しましてね。

当時はドレッシングと言えばフレンチドレッシングぐらいしかない時代でしたから、これは新しいジャンルだ、自信作だということで、このドレッシングを使った和風メニューとして、サラダうどんやサラダそばを外食チェーン様などにご提案していきました。

サラダ開発の歴史

(画像をクリックして拡大)

―― そういえば、サラダうどんが世の中に出てきたのはいつぐらいでしたか…

渡辺:
比較的最近でしょうね。少なくとも当時はまだ新しすぎたようです(笑)。
一部ではメニューとして採用いただいたのですが、なかなか売れなくてですね…そうこうしているうちに、このままでは「和風あわせ味」を廃番にしなくてはという話まで出てきましたので、当社のメニュー開発部隊があれこれ試行錯誤いたしまして、和風味のドレッシングなのだから和風の素材と合わせれば良いのでは、ということで出てきたのがごぼうでした。

当時は、ごぼうの用途と言えばきんぴらや煮物ぐらいで、サラダに使うなんていう発想はまったくありませんでした。でも、やってみましたら、これが非常に合いましてねぇ。
そこで「ごぼうサラダ」を新メニューとしてご提案しましたところ、お惣菜屋さんを中心にご好評をいただくことができました。

―― それで売れるようになったのですか?

渡辺:
ところがですね…実はごぼうサラダって、作るのが結構大変なんですよ。
シャキシャキした食感を残しながらきちんと火を通すのは結構難しい。

ということで、お客さまから「ごぼうサラダも、ケンコーマヨネーズの“ロングライフサラダ”で作れないか?」とのご要望をいただきまして。

―― 作るのが大変だから作った状態でちょうだいよ、と(笑)。

渡辺:
私どもとしましてもポテト、マカロニに次ぐ新しいロングライフサラダの材料を探していたところではありましたから、それではということで開発し、売り出しましたところ、お惣菜屋さんだけではなく、外食チェーンでも広く採用されるヒット商品になりました。

―― 80年代といえば、繊維系ドリンクが発売されたりしてファイバーブームが起きた時代でしたね。

渡辺:
そうなんです。そのファイバーブームとうまく合致しまして、一時は日本中のごぼうがなくなったんじゃないかという状況に(笑)。

私どもとしても、そこまで急にヒットするとは予想しておりませんでしたので、ごぼうの調達が非常に大変で。
当時、私自身も営業を担当していたのですが、注文を頂いても生産が間に合わなくて大変だった記憶があります。

―― 色々お話をうかがっていますと、御社の強みはそういった商品開発力やメニュー提案力にあるということが理解できます。

ケンコーマヨネーズAS渡辺:
創業の頃からそこは一貫していますね。
そもそも、当社が創業4年目に発売した「ケンコーマヨネーズAS」自体が、お客様への提案として生まれたものですから。(写真右)

―― マヨネーズ自体が、提案だった・・・?

渡辺:
ええ、そうなんです。
「ケンコーマヨネーズAS」以前の当社は、食用油脂(サラダ油など)を煮豆屋さん(お惣菜屋さん)に販売する企業でした。

当時、お総菜屋さんでは、当社から購入した油を使って肉やコロッケを揚げたり、マヨネーズを作ったりしておられました。
それ自体は難しいことではないのですが、手作りのマヨネーズは粒子が不均一で、ちょっとしたことで分離してしまいます。卵も殺菌して使うわけではありませんし、作る場所も常時揚げ物をしていてとても暑いところですから、マヨネーズもいたみやすい。それがお惣菜屋さんの悩みだったわけです。

それならば、当社でマヨネーズを作ってお総菜屋さんに販売すれば良いのではないか、そう考えたのが、私どもが業務用マヨネーズを作り始めたきっかけでした。
そしてさらに、マヨネーズを販売する時に「こんなサラダを作りましょう」というご提案もしていった。その取り組みが今につながっているんですよ。

―― なるほど、創業の頃からお客さまのニーズに応えて商品を開発してきたのですね。

渡辺:
製品をただ持って行くだけでは売れません。
有名なメーカー、強いメーカーでしたらそういったやり方もあるかも知れませんが、当時は名も知れない零細企業だった当社がお客さまから信頼を得るには、やはり使い方や、こうしたら良いですよ、といったご提案から入ることが必要です。

私どもにとって「提案型営業」はまさに原点ですし、当社の製品であるマヨネーズやドレッシングをもっとお使いいただくためには、サラダの地位を高め、その可能性をもっと広げるご提案を続けることが重要です。

こういった意味で、私どもは「サラダを食卓のメインディッシュに」「サラダNo.1企業になる」といったメッセージを発信しております。

Q3: 事業環境とその対応は? また、それに対応する戦略は?

―― 御社は、現・中期経営計画のテーマとして「市場演出型企業」を掲げておられます。
その中に「サラダ料理を確立し、市場を演出」という表現があったのですが、サラダ料理とは具体的にどのようなものを指しておられるのでしょうか?

中期経営計画のテーマ

(2012年3月期決算説明資料 P19より引用)

渡辺:
私どもが考えるサラダは、単純に野菜とドレッシングでできた添え物ではありません。
肉や魚、あるいは乳製品、そういった色々な食材と野菜を組み合わせて、ドレッシングやマヨネーズを使い、それらを調理して華やかに演出したもの、それが「サラダ料理」です。

このところの健康ブームもありまして、国内ではサラダの種類がだいぶ増えてきましたが、私どもとしてはまだまだ色々な提案ができると思っています。
日本国内はもちろん、世界の各地にある色々な素材やサラダ、郷土料理をうまく組み合わせることで、サラダはまだまだ進化できると私どもは考えています。

世界のソースシリーズ杉山:
すでに「世界のソースシリーズ」という商品を開発しておりまして。(写真右)

このガーリックバターソースは魚介類、特にイカの炒め物などに使っていただけますと最高に美味しいんですよ。もちろん鶏肉にも合いますし。
もっと簡単に食べるなら、フランスパンなどにちょっと塗ってトーストするだけでガーリックトーストを楽しめます。

バジルの方はピザやパスタはもちろん、サラダのちょっとした味付けにしてもいいですね。

―― 外食のお店では非常に重宝されそうな感じがしますね。

杉山:
はい。おかげさまで、ガーリックバターソースは、最近流行りのステーキとサラダバーのチェーン店などでもお使いいただいています。
お子さん向けの給食や社員食堂などにはガーリックがないほうが良いと、いうお声もいただきましたので、ガーリックを抜いたバターソースを出しましたところ、こちらも順調に売上を伸ばしております。

―― 最近、けっこう凝ったソースの料理を出すお店が増えたなと 思っていたのですが、その裏には御社がおられたのかもしれませんね。
ところで、国内の需要と言うと一般的には縮小という見方になるかと思うのですが、御社の場合は食の外部化や嗜好の変化という環境もあり、外食と中食の双方に関わっておられるといったあたりを考えますと国内においてまだ売り上げを伸ばす余地は十分ある、という理解になりますでしょうか?

渡辺:
さすがに高度成長期のようなわけにはまいりません。
ですが提案次第でまだまだ伸ばせる余地は大いにあると思っております。

その意味において、今後ともこれまで以上に国内事業も深耕、深掘りしていくことがまず重要となります。

Q4: 今後の成長を見据えて取り組んでいることは?

―― 中期経営計画では「グローバル企業への展開」も掲げておられます。これはどのような取り組みをしておられるのですか?

渡辺:
当社の海外事業の始まりは、2005年です。
当時、中国にサラダ文化を根付かせたいという大きな野望を持ちましてね(笑)。

ご存知の通り、中国では生野菜はあまり食べません。野菜は加熱して食べるという文化の国でサラダというのはどうなんだろう、という懸念はありました。
また、マヨネーズは日本の大手企業が10年以上も先行している中では、マヨネーズで行っても厳しい。やはり我々の一番得意なサラダで市場を切り拓こうということで、まずはポテトサラダやごぼうサラダ、かぼちゃのサラダといったロングライフサラダで参入しました。

これをパン屋さんで総菜パンに使っていただいたり、回転寿司の軍艦巻きにツナサラダを載せてもらったりといった形で販売を進めていったんです。

―― これは日本企業だけをターゲットにしたということではないのですね?

渡辺:
ええ。当時、日本の商社さんと一緒に出て行ったのですが 、取引先の開拓はなかなか大変でした。
そうこうしているうちに、上手くパートナーが見つかりまして、やはり現地の企業とも組んで行かなくてはいけないだろう、ということで、その商社さんとも関係の深い台湾の頂新グループとの合弁事業を開始しました。

今年の3月には杭州にマヨネーズ・ドレッシング・ソース類の工場を完成させましたので、これまで持っていたサラダの工場との両輪で、中国の業務用ルートを開拓していきます。

中国事業の展開

(2012年3月期決算説明資料 P29より引用)

―― 経済発展にともなって、食の安全や健康への意識が高まっていると聞いていますが、実際そうなんでしょうか?

渡辺:
そうですね。パン食も広まっていますし、まだ沿海部が中心ではあるのですが、富裕層を中心に生野菜のサラダを食べる人たちもだいぶ出てきているようです。そういった層が徐々に広がっていることは、当社にとっても大変明るい材料ですね。

―― 現中計期間は、中国を中心にグローバル戦略を展開することになりますか?

杉山:
基本的にはそうなりますが、もうひとつ、今後に向けて進めていくのがインドネシアです。
こちらも今年、現地の有力企業と合弁契約を結び、政府の認可も取れましたので、来年の4月スタートを目途に工場建設に着手しました。

当面はマヨネーズ、ドレッシングからのスタートにはなりますが、インドネシアもパン食はかなり増えてきているようですので、我々の得意な惣菜パンなども将来的には有望な市場になり得ると期待しております。

―― グローバル化の他には、事業領域の拡大ということで卵やポテトに関する取り組みを挙げられていましたが、これはどのような内容なのでしょうか?

渡辺:
卵は、現在でも厚焼き卵や錦糸卵、タマゴサラダといったタマゴ加工品は幅広く手がけているのですが、静岡県富士市にタマゴ総合工場の建設を予定しており、2014年4月に操業を開始する予定です。

技術・製法を改良し、味と品質の両面から商品の競争力を高めていきます。
また、原料・素材に近い新たな商品作りを行い、販売機会の拡大を目指します。

―― ポテトに関しては?

渡辺:
実は当社は、日本でも5指に入るぐらいポテトを使用している企業なんです。1位、2位はポテトチップメーカーさんなんですが、その次ぐらいに来るのが当社でして。
今はその大半はポテトサラダにしか使っていないのですが、この購買力、仕入れ力を生かし、こちらも加工品の需要をもっと喚起するような取り組みをしていきたいですね。

杉山:
じゃがいもの加工に関しては、2012年3月にこちらの番組で放映していただいていますので、是非ご覧ください。(TOKYO MXテレビ:企業魂


―― 食の安全という面では、どのような管理をしておられるのでしょうか?

渡辺:
品質を落としてしまうと食品メーカーの場合は本当に致命傷になってしまいます。
ですから、そこはどれだけ厳しくしても厳し過ぎることはないという管理体制をとっております。

たとえばじゃがいもについても、マヨネーズの原料についても何がいつ工場に入ったのかという履歴管理をしっかりしておりますから、何かあった時には全部そこから追うことができます。
そして、出来上がった製品についても、当然品質検査をしっかりとしております。

杉山:
今年の春からは放射能の検査設備を拡充しまして、自社で放射能を検査できるようになりました。
業務用だけでなく一般の消費者の方からのお問い合わせもいただきますから、そういったお声に応えていくことは大変重要と考えております。

Q5: 個人投資家の皆様にひとことお願いします。

渡辺:
当社はこれまで、業務用のマヨネーズ、ドレッシングの専門メーカーという立場で、「縁の下の力持ち」として歩んでまいりましたが、今回の東証一部上場を機会に、「市場演出型企業」へと脱皮していきたいと考えております。
今後ともご支援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

―― 本日はありがとうございました!