2013年1月の最高裁判決により、医薬品をインターネットで販売できる地位が確認されました。
約4年に渡り「お客様の健康づくりをサポートするために、医薬品は欠かせない」という信念で、販売再開を訴えていたのは、ケンコーコム株式会社です。

そこで訴えていたのは、「EC(インターネットによる販売)は、情報通信技術を活用することにより、薬剤師の管理のもとで安全に医薬品を販売することができる」です。

ケンコーコムは薬だけを売っているECサイトではなく、健康関連商品を約20万SKU(種類)も取り扱う大規模ECサイトです。
EC市場が年々拡大する中、同社がどのように成長していくのか、楽天グループ入りしたメリットなど、IR担当の須藤さんにお話をうかがいました。

Q1: 御社のビジネスは何ですか?わかりやすく教えて下さい

Q1-1:事業内容について教えてください

須藤:
ECを通じて、健康関連商品(医薬品、健康食品など)を販売する「リテール事業」が当社のメインビジネスです。

事業内容 セグメント別売上高構成比
(クリックして画像を拡大:会社案内より引用) (グラフは有価証券報告書より編集室にて作成。
事業セグメントの詳細は、第19期有価証券報告書
P10を参照ください)
カテゴリー別売上高の構成比(2013年3月)  

Q1-2:御社は医薬品のインターネット販売を規制する薬事法施行規則の改正に対して行政訴訟を提起し、本年(2013年)1月、最高裁で勝訴を勝ち取りました。
日用品や化粧品などの売上だけでもそれなりのボリュームが確保できる中、それでも医薬品販売の再開に向けた訴訟に踏み切り、最高裁まで戦い続けたその理由についてお聞かせ下さい。

須藤:
「Eコマースを通じて、お客様の健康づくりをサポートしつづけます」がケンコーコムの理念です。当社のすべてはここから発生しています。(リンク:会社案内PDF

私達があくまでも健康にこだわるところで事業をやっていくためには、あるいはそこをより深く追求していく時には品揃えとして医薬品が欠かせませんし、インターネットでもしっかりと安全を確保した状態で売るというのが、当社の使命でもあります。

日用品が安いとか、水が安いとか、そういったことだけでは他のECショップと変わらない存在になってしまう。
自分の存在意義、レゾンデートルとして私達は医薬品の販売に大きなこだわりを持っておりますし、だからこそ後藤(代表取締役社長)も訴訟まで行ったのではないかと思います。

ケンコーコムの訴訟について

(クリックして画像を拡大:2012年度 決算説明資料 P23より引用)

Q2: 御社の強み、他社との違いはどこにあるのでしょうか?

Q2-1:医薬品の販売体制についておうかがいします。
御社は医薬品販売にあたって、どのような安全確保策をとっておられるのでしょうか?

須藤:
具体策は大きく3点あります。

1)薬剤師が電話、メール等で患者さんのご相談をお受けします

ケンコーコムには薬店があって薬剤師が常駐しており、電話やメールなどで薬についてのご相談をお受けしています(土日も含む)。ご購入時の不明点はもちろん、一般的な健康のことについてもご相談が可能です。

2)患者さんのお身体の状態を確認するための事前アンケートを実施しています

お客様がケンコーコムのサイトで医薬品を購入しようとされた場合、お身体の状態を把握するための「注文前アンケート」が表示されます(下図ご参照)。

薬剤師が個別の医薬品ごとに設問を作成しているこのアンケートは、そのお薬の服用が適切ではないことがわかる問診内容になっております。例えば「私は妊娠しています」などの事項にチェック入れると販売ボタンが消えまして、以後の購入手続に進むことができなくなるのです。

購入途中の画面には、常に薬剤師が対応する対応窓口の連絡先(メールと電話)が表示されており、途中で何かご不安になった方は、お問い合わせいただけるようになっております。

3)医薬品の不適切な使用を防ぐために購入履歴管理を行っています

ケンコーコムのサイトでは、1回のご注文で購入できる医薬品の個数についても、リスク分類にもとづいて薬剤師が定め、商品ごとに上限を設定しています。
さらに、特に習慣性のある医薬品や長期連用、過量服用によるリスクが高い医薬品などについては、リスク区分にかかわらず薬剤師が上限を個別に設定しています。

1回ごとの注文に上限があるのなら、複数回に分ければ買えてしまうのでは?というご指摘もあるかと思いますが、もちろんその対策もとっています。
同じ医薬品(同種医薬品)が複数回に分けて注文された場合などは、システムで自動的に「名寄せ」(集約)を行います。そして、制限個数を超えた注文については出荷を保留したうえで、必ず薬剤師が注文者様に直接問い合わせを行い、不審な点がないかを確認するようにしているのです。

 

ここまでの対策をとっている会社は恐らく当社しかありません。
私達ケンコーコムは、ここまでやるからこそ医薬品を安全に販売できると確信しているのです。

最近、後藤がよく申しておりますのは、薬を購入する場合、薬そのものが欲しいわけではなく、治りたいとか健康になりたいというのがゴールである、だからこそ、(薬などの商品、つまり)モノではなくそこに付加される「付加価値」=情報がすごく重要なのだということです。

そして、その付加価値である情報をほぼ無料のコストでやりとり出来るのがインターネットであり、だからこそ、健康とインターネットは非常に親和性が高いのだと。
安全性に関わる情報はその中でも最重要なものであり、だからこそ当社はこの部分には非常に力を入れています。

Q2-2:御社の一番の強みは何ですか?

須藤:
一番はやはり、品揃えですね。
当社では、医薬品だけでなく、健康食品、日用品など幅広い商品を取り扱っていますが、商品の種類は約20万SKU(これは大手のドラッグストアさんと比べると10倍以上です)、医薬品だけでも約4,000SKUを扱っています。
圧倒的な品揃えがケンコーコムならではの特長ですし、「ロングテール」が当社の成長の鍵なのです。

これらの商品を安全に販売できる体制については、Q2-1でお話させていただいた通りです。
現在は、これらの商品をより早く、確実にお手元に届けるため、物流サービスの強化に取り組んでいます。

Q2-3:物流については、本年(2013年)5月に、楽天物流が提供する総合フルフィルメントサービス「楽天スーパーロジスティクス」の全面利用で合意したと聞きました。このねらいについて教えてください。

須藤:
大手EC企業では今、全国に物流倉庫を作り、当日配送を「当たり前」にしつつあります。
そのためには、全国に複数の物流拠点を持つことが必要ですが、ケンコーコム単独でそうした物流体制を作ることは資金的に難しいです。しかし「楽天スーパーロジスティックス」を活用すればそういった物流サービスが実現できます。

さらに、配送料の節減にもつながります。
当社は福岡に物流センターを構えてこれまでやってまいりましたが、今、5割以上のお客様が首都圏にいらっしゃる中では、(配送に)中1日かかるというリードタイム、配送料の両面で負担が大きかったのです。

今回の提携により、福岡を楽天の物流センターへと転換し、当社自身は(楽天支店だけでなく)ケンコーコム本サイトからの商品も楽天スーパーロジスティクスから発送していきますので、これらの問題は解消します。

楽天株式会社との物流構想

(クリックして画像を拡大:2012年度 決算説明資料 P33,35,36,37より引用)

編集室注:
2012年5月に、ケンコーコム株式会社と楽天株式会社は資本業務提携を行い、楽天株式会社は同社の筆頭株主です。
リリース「楽天株式会社との資本業務提携に関する合意及び第三者割当による新株式発行並びに主要株主である筆頭株主及び親会社の異動に関するお知らせ」(2012.5.17)

Q3: 事業環境とその対応は? また、それに対応する成長戦略は?

Q3-1:医薬品のネット販売が解禁されましたが、その後どのような変化が?

須藤:
医薬品販売が規制されていた期間は、売上の伸びがかなりセーブされていました。
医薬品を販売できない中でも売上を伸ばしていくために、当社としてはある程度利益率の低い(低出荷単価)商品の取扱い増加や、広告宣伝費の増加といった施策を容認してきた、容認せざるを得なかったところがあります。

ですが、医薬品の販売が開始されれば売上が10%近く伸びることは予想できていましたので、(医薬品販売が解禁された)2013年1月以降は、キャンペーンや利益率の低い低単価商品などの取扱いを見直し、健康食品や医薬品の品揃えを充実させるというように、商品構成を見直すことでコスト構造を整え直し、利益率を大きく改善させることができました。

このコスト構造改革に先ほどお話した物流コストの削減が加わります。
当期に入ってから4半期ベースで黒字化しており、現在はもう一度成長を図っていくフェーズに入っています。

限界利益率の推移/粗利率の推移

(クリックして画像を拡大:2013年度第1四半期補足資料 P16(左),P15(右)より引用)

Q3-2:薬の販売規制がかけられていた間も投資を続けてきた、その根幹にはマーケットの先行きへの確信があるということなのでしょうか。

須藤:
絶対にマーケットは拡大すると確信しています。
EC化率がまだ2~3%の健康関連市場の中で、近い将来これが10%くらいまで伸びれば、(健康関連のEC市場だけで)1兆円規模になります。

当社はその市場の中で突き進んでシェアを取りに行かなければいけない、売上を伸ばす成長努力は絶対に止めるわけにはいかない、伸びていくこの市場で絶対に勝つ、というのが一貫した想いとしてずっとありました。

もちろん、この成長市場を狙って、多くの競合――Eコマースの国内最大手企業やドラッグストアをはじめとする多くの企業が参入していますし、絶対にシェアを取るという意気込みで今は赤字を出しながら参入している企業さんもありますので、品揃えと価格の両面で競争は激化しています。
それでも、その中で1位になる、リーディングカンパニーになっていくというのが当社の目標です。

国内マーケットとポジション ケンコーコムを取り巻くEC業界動向

(クリックして画像を拡大)

(クリックして画像を拡大)

2012年度 決算説明資料 P46(左),43(右)より引用)

Q4: 今後の成長戦略は?

Q4-1:こうした競争環境下でどのような戦略をとっていくのですか?

須藤:
今期の重点施策は、(1)商品戦略の再構築、(2)医薬品ネット販売の強化、(3)楽天株式会社との協働(物流構想)、(4)海外ビジネスの再構築です。

「(1)商品戦略の再構築」を具体的にいうと、Q3-1でお話しましたが、医薬品・健康食品の品揃えを強化し、利益率の低い低単価商品の見直しをするということです。

来期の施策

(クリックして画像を拡大:2012年度 決算説明資料 P29より引用)

Q4-2:今期の施策「海外ビジネスの再構築」はどういった内容でしょうか?
また、現状はどのようになっていますか?

須藤:
目標は、アジアの健康関連EコマースでのNo.1です。中国とシンガポールを主要拠点として、日本の安全かつ高品質な健康関連商品をアジアのお客様へのお届けしたいと考えています。

当社は本年(2013年)7月に、中国最大のB2Cインターネットモールである「天猫(Tmall)」で、中国向けに日本の健康関連商品を個人輸入で販売する店舗を先行出店しておりましたが、9月には正式に「kenko 海外旗舰店」をオープンしました。(リリース:中国におけるEC事業の開始に関するお知らせ(2013.9.25))

今後は、Tmallの知名度を有効に活用しながら、当社のEコマースのノウハウを横展開し、当社の取り扱う健康関連商品の中国における販売拡大を図ります。

Q5: 個人向けIRの方針および個人投資家へのメッセージをお話し下さい。

―― それでは最後に、個人投資家へのメッセージをおうかがいしたいと思います。

須藤:
一番お伝えしたいのは、やはり当社の理念である「Eコマースを通じて、お客様の健康づくりをサポートしつづけます」、やはりこれに尽きます。

当社は頑固なぐらいこの理念を唱え続け、本当にこの理念の実現に寄与すること、お客様が求めるところに邁進してきましたし、今後もそうしていくつもりです。

Eコマースも健康もイノベーションが非常に激しい世界であり、今後まだまだ発展する可能性があります。
ですから、医薬品の販売開始は全くゴールではなく、もっともっと次につなげていきたいという思いがあります。

当社は、この伸びていく市場の中で自らも変化しつつ、それをわかりやすく開示していくことに努めたいと思っておりますので、皆様、是非当社を、そして「健康とEコマース」の市場に注目していただければ幸いです。

―― 本日はありがとうございました!