「めっき」と言えば、金めっきをついイメージしてしまいますが、現代のめっき「機能性めっき」は超ハイテク。
スマートフォンの微細配線加工に広く使われています。(もちろん、金属の表面を”守る”分野でも進化しています)

表面処理の総合メーカー 株式会社JCU 。旧社名の荏原ユージライトをご存知の方もしれません。
ここにも、ものづくり日本をささえるグローバル企業が、ありました!

今回は、管理本部長の上谷さんにめっきビジネスとグローバル展開についてお話を伺いました。

Q1: 御社のビジネスは何でしょうか?わかりやすくお教えください。

上谷:
めっき薬品と、その機器を提供しているメーカーです。
売上の7割、売上総利益の9割を自社で開発・製造している薬品が占めております。

―― めっきと言えば、私には“金めっき”のイメージしかないのですが…。

上谷:
めっきは、綺麗に見せるための「装飾めっき」が広く知られていますが、めっきには他にも重要な用途があります。たとえば、金属を錆から守ったり、硬くしたりもできます。
最近では、スマートフォンやタブレットPCをはじめとした電子機器の、高性能でありながら小型を実現するための微細配線技術においても、その配線方法として「銅」めっきが用いられています。

このように、多種多様な用途で使われるめっきを最近では「機能性めっき」と言っています。

弊社では、自動車外装部品への装飾や防錆めっきから始まり、今では電子分野向けの微細配線めっき薬品やエッチング薬品の開発へと事業を拡げています。

―― 分野別では自動車と電子部品、どちらが多いのですか?

上谷:
現在は、電子関連が3分の2、自動車関連が3分の1です。
これは、自動車が減少したということではなく、電子の伸びが非常に大きいので、このような割合になっています。

―― 電子分野では何が伸びているのですか?

上谷:
ええ。最近では、スマートフォンの中のCPU基板やプリント配線板向けの「銅」めっき薬品が伸びています。

スマートフォンのプリント配線板には「エニーレイヤー構造」と呼ばれている特殊な手法が用いられており、この手法を使うことで、小さな電子機器の中にも複雑な多層の配線板を作ることができるのです。
今この分野の需要が大きく伸びておりまして、グローバルシェアは約50%、これがかなりの売り上げになっています。

先ほどめっき薬品の売上が全体の7割と申し上げましたが、この内の10%近くを韓国の大手企業が買って下さっています。

―― ということは、これはGALAXYにも使われているのですね?

上谷:
はい。また米国大手企業にも生産元である中国、台湾の会社を通じてお使いいただいています。ですから人気の韓国製スマートフォンにもアメリカ製スマートフォンのいずれにもご使用いただいているとお考え下さい。

さらに、スマートフォンは人口の多い新興国への普及が急速に進んでおり、韓国製や米国製以外の機種にもエニーレイヤーの導入が進んでいます。
そういった機種への導入も順次進めております。

―― どちらを買っても御社の技術が入っていると。

上谷:
おそらく。

―― それは素晴らしいですね。
ところでここに御社のめっき薬品が採用された理由は何なのでしょうか?

上谷:
品物の良し悪しももちろんありますが、実は、めっきビジネスで大事なのは技術的なサポートです。

めっき技術の現場では色々な不良が起きるのですが、「何がその原因か」を突き止め、直し、歩留りをよくすることが現場にとっては非常に重要なのです。
そういったサポートが万全なら、薬品が少々高くても受け入れてもらえると考えています。

そもそもめっき薬品が最終製品に占めるコストの割合は、そんなに大きくはないわけですから、歩留りが改善されれば大きなメリットになるはずです。
ですから、当社(単体)では現在、研究所に100名ほどが所属しているのですが、うち半分は新製品の開発、そして残りの半分が世界各国を飛び回って現場をサポートしています。

―― 「サポートではこれまでの経験がものを言う」、ということなのでしょうか。

上谷:
お医者さんと同じです。学校を出たてのお医者さんでは頼りにならないのと同じ(笑)。
ですから当社の場合は定年になった技術者にも、お客様から「○○氏に引き続きサポートをして欲しい、嘱託という形で面倒を見てくれないか」と、かなりの確率で名指しのご指名があるぐらいです。

仮に他社さんが全く同じ薬品を作ることができて、それをインターネットで売ろうとしても、サポート力がなければ売れないと思っています。

Q2: 御社の強みと特長についてお教え下さい。

―― ところで先ほど「エニーレイヤー構造」というお話がありましたが、これはいったい何ですか?

上谷:
エニーレイヤー(Any Layer)とは、「任意の多段層設計が可能」という意味です。
電子機器がどんどん高機能になっていくにつれ、機器の中にはより配線密度の高い多断層基板(「ビルドアップ多層配線板」)が使われるようになっています。

従来は、この多層配線板を作る際には「スタック構造」という方法を使ってきました。
これは、基板に貫通穴(以下:スルーホール)を空け、その穴の壁面だけに銅めっきをする方法で、パソコンやデジカメなどの周辺部品では、この方法で充分な性能向上が得られていました。

ですが、スマートフォンに代表される、高性能モバイル端末の場合は「エニーレイヤー構造」の方がより適していると言えます。エニーレイヤー構造ではスルーホールもコア層も不要ですので、ビルドアップ基板の薄板化とコスト削減が同時に可能となります。さらに、高出力デバイスの場合、放熱性や伝導性にも優れるというメリットもあります。

スタック構造とエニーレイヤー構造

2011年3月期(第51期) 中間期 株主・投資家のみなさまへ P5より引用)

Q3: 事業環境をどう見ておられますか?また、それに対応する成長戦略は?

上谷:
こうしたメリットが理解され、エニーレイヤー構造に使われるめっき(ビアフィリングめっき)の売上高は今、右肩上がりで伸びています。

フィリング用藥品売上高推移 / スマートフォンおよび携帯電話の世界出荷台数の推移

(クリックして図表を拡大)

―― 電子部品関連については、まだまだ伸びそうですね!
それではもうひとつの分野である、自動車産業向けについてもお教え頂けますか?

上谷:
トヨタさん、日産さんではすでに海外の生産比率が半分を超えていますし、日産さんは、生産台数でビッグスリーを抑えてメキシコでNo.1、25%のシェアを持つまでになっておられます。なんと言っても、メキシコは米国への地の利が良いですからね。

当社もこういった環境を受けて、2003年から海外進出を積極化していまして、自動車分野では海外の伸びが大きいです。今後はメキシコでも現地生産を開始し、技術要員・営業要員も日本から派遣します。

そのほかには、インドネシアですね。昨年7月、新たに子会社を作りました。

インドネシア進出について

(クリックして画像を拡大:2012年3月期(第52期) 株主・投資家のみなさまへ P4より引用)

―― 車種や地域の特長は?

上谷:
当社が強みを持っているのはプラスチック部品へのめっきなのですが、中でも一番面積と数が多いのはフロントグリルです。この分野で最も大きな需要は高級車市場ですから、当社のマーケットとしては「高級車が作られる所」、たとえば中国、あるいは米国、メキシコといったところになります。
日本では軽自動車の割合が増えていることに加え、国内の生産台数も頭打ちとなっていますので、やはりこの分野では海外が重要です。

フロントグリル

Q4: 個人投資家の皆様にひとこと、お願いします。

上谷:
当社は、8月3日に第1四半期の業績を踏まえて今期の上方修正を行いました。
利益率の高いスマートフォン向け薬品が引き続き順調に伸びていることから、売上高、利益ともに前回予想を大幅に上回るものと予想しました。
上方修正にともなって、配当も同時に増配を発表しましたのに加え、社名変更にともなう記念配当もあり、今期の年間配当金は前年度比20円アップの80円となる予定です。

―― 社名変更をされたのですね。

上谷:
はい、本年10月1日より社名(商号)を「荏原ユージライト株式会社」から「株式会社JCU」へと変更致しました。新社名でも引き続き、皆様の熱いご支持を賜れましたら甚大です。

―― 本日はありがとうございました!