化粧品を買うなら、デパートか専門店。基礎化粧品は同じブランドで揃えなきゃ。女性誌の化粧品特集に載っている新製品はすぐに買いたくなる
――そんな「常識」は、昔のもの。今や、多くの生活者は「化粧品を比較して自由に選びたい」「宣伝ではなくクチコミの評判を重視」「コストパフォーマンスの良い商品ならノーブランドでも構わない」と考えており、その消費行動を支えているのが、コスメ・美容の総合サイト「@cosme(アットコスメ)」のクチコミです。

店頭で「@cosmeランキング1位」のステッカーを見つけると思わず買ってしまう。新しい化粧品を買う前には、必ず@cosmeのクチコミを確認し、ランキングを示す★の数をチェックする――そんな生活者を増やし続けているのが、@cosmeを運営する株式会社アイスタイルです。

2012年2月のマザーズ新規上場からわずか10カ月後(同年11月)、東証一部に上場した同社の現在から目指す姿までのお話をうかがいました。

Q1: 御社のビジネスは何ですか?わかりやすく教えて下さい

Q1-1:「“生活者中心の市場創造”の実現」がビジョンであるとうかがいました。
具体的にはどのようなことを目指しておられるのでしょうか?

A1-1:
当社は、「企業と生活者をつなぐプラットフォームを作りたい」という想いから始まりました。

創業当時(1999年)、化粧品の情報はマスメディアを通じて企業から一方的に発信され、生活者はそれを受け取るだけ。生活者の考えや感想を企業にフィードバックするすべはありませんでした。
企業としても、目指す顧客層に自社の商品情報が届いているのかわからない状態は、マーケティングとして非効率です。

ところが、インターネットの登場により企業と生活者のコミュニケーションは大きく変わる可能性がでてきました。
インターネットを使ってこの両者をつなぐプラットフォームを作れば業界全体が活性化するのではないか、それが@cosme立ち上げの出発点です。

当社は@cosme(メディア事業)からスタートしましたが、今ではコスメ・コム(EC事業)、@cosme store(店舗事業)、そしてサロン情報を紹介するサイト「ispot」(その他事業)と、徐々にサービスを拡大してきております。

Q1-2:事業の全体像についても、後ほど改めてお話をうかがいたいと思います。
まずは、事業セグメントの中で売上・利益ともに一番構成比の大きい「メディア事業」の内容について、具体的に教えていただけますか?

A1-2:
売上の構成で申し上げますと、約50%がブランディング広告、約20%がレスポンス型広告(バナー)、そして約15%がブランドファンクラブ。残りがその他となっています。

ブランディング広告というのは、タイアップ広告――女性誌の記事広告をウェブに持ってきたようなものとお考えください。
当社のクライアントである化粧品等のメーカー様からは、@cosmeは「ブランディングができる」媒体であると高くご評価いただいています。

レスポンス型広告は、いわゆるバナー広告です。

そして、ブランドファンクラブ、これはブランドごとに@cosmeサイト内に専用のブランド紹介ページを持てるというものです。ブランドのご担当者様が、ブランド紹介ページ内で自由にブログを書いたり、そのページをお気に入りに登録している会員の方にメールを送ったりすることができる月額固定サービスになります。

(サービスページはこちら

Q1-3:ブランディング型広告の内容についてもう少し具体的に教えて頂けますか?

A1-3:
当社の特徴は企画型――つまり、新商品発売の時期にメーカー様に商品のコンセプトや販促面の課題をお聞きし、どのようなプロモーションを行うか、企画からご提案をしています。

@cosmeの強みである消費者の皆様のクチコミを活かしたプロモーション――例えばこの商品ならばこういった層の方が気にいるだろうと分析し、発売前の化粧品サンプルを実際に使用した感想を教えていただいたり、報道関係者向けの商品発表会にご参加頂いて、その感想を書いていただいたり――といったような、単なる広告ではない、会員の皆様やメーカー様と一緒にコンテンツを作るというイメージです。

企業側が一方的に伝える広告ではなく、生活者の方とコミュニケーションを図ることで、生活者の方に本当の商品の価値を感じて頂ける媒体だと評価していただいており、当社の売上の柱になっております。

@cosmeプロモーションサービスメニュー

(クリックして画像を拡大 2013年7月~2013年9月掲載分アドコンテンツ概要:P5より引用)

Q2: 御社の強み、他社との違いはどこにあるのでしょうか?

Q2-1:Q1-3でお答えいただいた「この商品ならばこういった層のユーザーさんが気にいるだろうと分析し、マーケティングをする」ことができる理由は何ですか?

A2-1:
当社が、商品・クチコミ・会員の3種類の強いデータベースを持っているからです。

クチコミを書いているということは、実際に購入して使ったということ。メーカー様は自社の会員データはお持ちですが、本当に知りたいのは他社の商品を使っている方の情報です。
どういう肌質の人が何を購入し、どういう化粧品を組み合わせているのか、実際に使ってみてどう感じているのか(どういうクチコミを書いているのか)。それをわかっているのは当社だけです。

メーカー様に「競合はどこだと思いますか?」とお伺いすると、たいていの場合、同じような価格帯の化粧品を販売されているブランド名をお答えになるのですが、実際には消費者の方がスイッチ(購入の切替)をした先は100円均一ショップの商品だった、そんなケースも珍しくはありません。
メーカー様にはわからない、こういった情報をデータベース化しているのは、私達の大きな強みだと思います。

Q2-2:広告市場は全体では縮小傾向にある中、御社は2013年6月期に既存顧客の単価向上を達成し、取引社数も増加しました。
その秘訣はPV、あるいはUU(サイトの訪問者数)の増加などのメディア力向上にあるのでしょうか? (編集室注:@cosmeの月間UUは2012年度・月間614万人 → 2013年度・月間813万人に増加)

メディア事業 売上平均単価およびクライアント社数の推移

(クリックして画像を拡大 2013年6月期 通期決算説明資料:P18より引用)

A2-2:
当社の売上上位クライアントの単価は、ほぼ毎年上昇しています。
メディア事業の場合、単発の契約ではなく、春夏シーズンの次は、その結果を受けて「次の秋冬シーズンはどうしましょう」という話になりますから、成果が出ればどんどん継続していく傾向があります。
単価が上昇しているのは、前期の成果が上がったと評価していただいている、その結果であるとお考えください。

ではその成果をどこで見ているのかですが、それは(UUやPVではなく)「店頭で商品が売れる」ことです。

@cosmeでクチコミの評価が高くランキングの上位になれば、リアルの店舗でも売れる、@cosmeのクチコミ1位のステッカーやシールがあれば、店頭での売れ行きが違う――そのような声をメーカー様からお聞きするようになりました。

その意味では、@cosmeはPVやUUに依存していないメディアです。ブランディング広告の価格設定も、PVに連動しているわけではありません。

Q2-3:店舗事業についておうかがいします。売上が18.71億、利益が1億を超えメディア事業に次ぐ分野として育っています。また利益率も年々上昇して直近では5%を越えています。
これは小売店舗としてかなり高い利益水準だと思うのですが、なぜこの数値を実現できるのでしょうか?

A2-3:
大きな理由としては、2つあると考えています。

1点目は、店舗で小売以外のサービスを提供できるようになったことです。
具体的には店舗をプロモーションの場としてメーカー様に提案しています。店頭にデジタルサイネージ用の巨大ディスプレイが何台かあり、それがウェブと連動していたり、陳列棚をジャックしていただいたりといった活用を進めてきた結果、物販以外の売上が増加しています。

店舗におけるプロモーションの様子

2点目は、昨年、すべてのサービスを1つのIDで使えるようにするようにシステムを連携させたことです。
この結果、@cosmeで付与されたポイントが使える場所として、店舗(@cosme store)とEC(コスメ・コム)、サロン情報サイト「ispot」への送客を進めることができました。ここ最近はO2O (Online to Offline)と言われるオンラインから実店舗へのご案内をしています。

これまでは@cosmeのユーザーの方でも店舗やECの存在を知らない方も多く、1年ほど前はEC事業の年間成長率は1ケタ台にとどまっていたのですが、ID連携後は20%台まで伸びています。

また店舗では、フラッシュマーケティング的な取り組みも行っており、ポイントサイト「おトク de @cosme 」でクーポンを出したり、ゲリラ的に「新宿店で先着◯名様に豪華なサンプルをプレゼント」といった形で店舗に誘導したりといった取り組みを進めてきました。

Q3: 事業環境とその対応は?また、それに対応する成長戦略は?

Q3-1:O2Oの話が出たところで、モバイル環境の変化についてもおうかがいしたいと思います。
この1-2年、一般的にウェブサイトを見る端末が、PCからスマートフォンへ急速にシフトしています。しかし、スマートフォンの場合、PCとくらべるとどうしてもタイアップやバナー広告の掲載スペースが少なくなりますので、メディア事業の収益に影響するのではと懸念するのですが、この点についてはいかがでしょうか。

A3-1:
確かにスマートフォン(以下、スマホ)からのアクセスは急速に伸びています。
ただ、@cosmeの場合、PCの利用者数が落ちていない、むしろPCも伸びているという特長があります。シフトしているというよりも、PCのアクセスにスマホからのアクセスが上乗せされているイメージです。

長いクチコミを読んだり、リッチなコンテンツを使ったりするにはやはりPCのほうが便利、というところがあるのかもしれませんが、移動中や買物中はスマホで(ランキングの)星の数だけチェック。じっくり読むのは自宅に帰ってPCで――といった形で使い分けておられる方が多いのではないでしょうか。

むしろ、(これまでにはなかった)スマホ向けのキャンペーンをメーカー様には新たにご提案できるような状況になっていますので、「スマートフォンの普及によってメディア事業が減速するのではないか」という点については、まったく心配しておりません。

Q3-2:今期は@cosmeの「プレミアム会員」(=有料会員)のユーザーさんを増やすとの説明がありました。目標数値(会員数の◯◯%など)や具体的な施策について教えていただけますか?

A3-2:
今までは無料会員の方にプレミアム会員になっていただこうという考え方をしていたのですが、今はUU(ユニークユーザー)の方に対象を広げてという発想で目標を決めています。

約800万の月間UU、これらの方々にプレミアム会員になっていただけるよう、入会プロセスも改善(編集室注:無料会員にならなくても、いきなりプレミアム会員になることができるように変更)したり、ゲームや動画などのコンテンツを拡充したりといった工夫もしておりますし、人員も充てております。

Q3-3:店舗の拡大方針について教えてください。今後、積極的な出店をして行くのでしょうか?

A3-3:
これまでの出店を通じて、比較的大型の店舗が最も効率が良いということがわかってまいりましたので、既存店の増床については今後検討していきたいですし、新店についても良い場所があれば検討したいと思っております。

積極的な拡大というよりは、良い場所があれば出店していくという方針です。

Q4: 今後の成長戦略は?

Q4-1:今後の国内市場の成長余地についておうかがいします。メディア事業では、主要なメーカーさんはすでに御社のクライアントになっておられるのではと思うのですが、今後の伸長についてどのように考えていけば良いのでしょうか?

A4-1:
化粧品メーカー様は、国内に約8,000社あるとも言われています。
当社とお取引いただいているクライアント数は800社に届きませんので、まだ拡大していく余地はあると考えています。

また、企業としてはお取引があっても、ブランドとしてはお手伝いしていないものは、まだまだありますから、そこは増やしていけると思っています。その結果、(Q2-2で回答した要因に加え、ここでも)1社あたりの単価が上がってくるということになります。

事業環境といたしましても、こちらの図(※「化粧品・トイレタリーの広告市場の変遷」)にありますように、マス媒体の減少とインターネット広告の増加は追い風です。
広告市場の規模としては小さくなっていますが、インターネット広告は今後も増えていく、その中で当社のシェアをどれだけ伸ばしていけるかだと思っております。

化粧品・トイレタリーの広告市場の変遷

(クリックして画像を拡大 2013年6月期 通期決算説明資料:P35より引用)

Q4-2:決算説明会では、今後の事業展開について、コンシューマーやプロシューマーなどの言葉を使って説明しておられました。この部分についてもう少しご説明いただけますか?

A4-2:
「企業(メーカー)」「小規模法人(店舗等)」「プロシューマー」「コンシューマー(生活者)」4つの軸でそれぞれのグループ(=ビジネス対象)に対して、当社がどういうサービスを提供していけるのか、その考え方を示したのがこちらの図(※「事業領域の拡大方針」)です。

具体的な数値目標ということではなく、当社グループが事業を展開するドメインのイメージとして見て頂きたいのですが、月に30万払ってくださる企業が1,000社、月3万円払って頂ける店舗が10,000社、3000円払って頂ける方(プロシューマー)が10万人、300円払って頂ける会員の方が100万人…となれば、30億円の売上の事業が4つ生まれるということになります。

当社は化粧品メーカー様向けのサービスを提供する「広告マーケティング」から事業をスタートしましたが、その後コンシューマー(生活者)向けのサービスとして「小売」、「プレミアム課金」を行っています。

事業領域の拡大方針

(クリックして画像を拡大 2013年6月期 通期決算説明資料:P26より引用)

2012年にはエステサロンの情報を掲載するサイト「ispot」を運営している会社を買収し、その他事業として小規模法人様向けのサービスを開始いたしました。

これまで収益基盤の強化を図るため、「企業(メーカー)」「コンシューマー(生活者)」「小規模法人(店舗等)」と拡大してきましたが、今後新規サービスとして考えているのがプロシューマーサービスです。いわゆるセミプロと言われる方向けのサービスを提供していきたいと考えております。
詳細につきましては、リリース等で発表させていただきたいと思いますので、ご期待ください。 

Q4-3:海外事業については、現在どのような段階ですか?

A4-3:
@cosmeのような口コミサイトを海外で構築するのは時間がかかりますので、各国に合ったビジネスモデルを模索しつつ、展開しているのが現在の状況です。
投資につきましては、一定の金額内においてタイミングが来たら一気に力を入れていきたいと思っております。

Q5: 個人向けIRの方針および個人投資家へのメッセージをお話し下さい。

―― それでは最後に、個人投資家へのメッセージをおうかがいしたいと思います。

IR担当者:
東証一部へ上場させていただいたとはいえ、まだまだ規模も小さな会社です。
いろいろ模索しながら進んでいる状況ですが、「生活者中心の市場創造」というビジョンのもと、ユーザーの皆様、企業の皆様双方に価値を提供すべくグループ一丸となって取り組んでおります。

コスメやサロンなど、男性にはあまり馴染みのない業界で事業を展開しておりますので、私たちも工夫をして、わかりやすい情報をお届けしていければと思っております。

また@cosmeの知名度が高いため、それにフォーカスされがちですが、様々な事業を展開しておりますのでグループ全体の事業や戦略をきちんとお伝えしていくことも課題として認識しております。

試行錯誤しながらですが、投資家の皆様へ分かりやすい説明や開示に努めてまいりますので、本日のお話や今後のIRをご覧いただき、長い目で応援して頂ければ幸いです。

―― 本日はありがとうございました!