リーマン・ショックの後、不動産業界は非常に厳しいニュースも多かったですが、最近は不動産や街づくりで明るいニュースも目にする機会が増えているように感じます。

単に土地を仕入れ、新しいオフィスビルを作るのではなく、“企画力で不動産の価値を上げる”を実現している、株式会社イントランス

価値を上げるために、購入した土地の隣の土地の所有者までも説得する。その労力や交渉の難しさは、きっと想像を超える難易度の高いビジネスなのだと思います。
同社IR担当の菊谷さんに、「企画力で勝負する」不動産ビジネスや、業績の回復状況について伺いました。

Q1: 御社のビジネスは何ですか?わかりやすく教えて下さい。

―― 8月9日付で東京タワーのきれいな写真が載ったプレスリリースが出ていましたが、これは何ですか?

菊谷:
これはですね、東京タワーに隣接した古いオフィスビルを当社が購入し、結婚式場・レストラン(「The Place of Tokyo」)へとフルリノベーションしたプロジェクトの完成をお知らせするリリースです。

このプロジェクトでは、東京タワーの隣という貴重な立地を最大限に活かすため、ガラス張りの天井から東京タワーを見上げる豪華なチャペルを設計しました。さらに、「床を抜く」という手法を使うことで、バンケットの天井を高くし、開放感ある空間をプロデュースしています。

The Place of Tokyo

今年6月の東京スカイツリーのオープンを受け、東京タワーが最注目される時期を狙ってオープンしたこともあって、式場は事業開始前にすでに約130組の挙式予約が入ったと聞いています。

―― このプロジェクトの価値はどのようなところにあったのですか?

菊谷:
今回、当社が通常の結婚式場よりも高い収益が期待できる企画をした結果、この不動産は、周辺の相場を大きく上回る賃料での長期賃貸借を実現しました。
つまり、不動産価値の「バリューアップ」を図ることができたのです。

それこそが当社の存在意義であり、当社の中核事業である「プリンシパルインベストメント(不動産投資・再生)事業」が社会にご提供する価値だと私たちは考えております。

プリンシパルインベストメント事業

(「事業案内」より引用)

―― 「バリューアップ」は御社の事業のキーワードのようですね。
これは、“企画力で不動産の価値を上げる”という意味に理解すればよろしいでしょうか。

菊谷:
ええ、そうですね。当社は、時代や街並み、借り手のニーズ等の変化に対応できていない物件をさまざまな手法で再生します。
対象不動産が持つ潜在的な価値や魅力を最大限に引き出す企画を行い、再生した上で収益不動産として投資家(貸し手)に売却するのです。それが、当社が考える「バリューアップ」です。

ビジネスモデル

(「個人投資家の皆様へ:ビジネスモデル」より引用)

 

Q2: 御社の強み、他社との違いはどこにあるのでしょうか?

―― バリューアップの手法は他にも色々あるのでしょうか?

菊谷:
もちろん、さまざまな手法があります。

たとえば、下記の「杉並プロジェクト」では、等価交換というスキームを用いています。
従来は、敷地面積が小さかったために小規模なマンションしか建てられず、本来の価値を活かしきれていなかった土地について、
- 最適な区画形成や地域特性に配慮した最適なプランを企画立案
- 複数の地権者ごとに地道な権利調整を実施
などを行うことで、等価交換方式の採用を可能にしました。

これにより、当社と隣地所有者は、小さな投下資本で最大限の利益獲得が可能となり、不動産価値を高めたにとどまらず、地域住民の方々にもより快適な住環境を提供することが可能となる点で、駅前の街づくりにも貢献した案件と言えます。

実績事例(杉並プロジェクト)

2011年3月期決算説明会資料 P9より引用)

―― 先ほどお見せいただいた、プリンシパルインベストメント事業のイメージ図では、仕入からバリューアップ、販売まで「型」が決まっているように見えましたが、実際には物件への関わり方は本当にさまざまなのですね。

菊谷:
はい。どの案件においても変わらないのは、ある意味「企画力で勝負する」というスタンスだけかもしれません。本当に物件次第、状況次第で臨機応変に取り組んでおります。

「臨機応変」というのはどういうことなのかをご説明する時、当社ではよく、ケーキづくりを例に出してお話しています。
ケーキを作って販売するまでには、大雑把に分ければ「スポンジを作る」「周りを生クリームで塗る」「さらにデコレーションをする」といったプロセスがありますよね?
その時に、スポンジを作っただけで売ってしまうのか、あるいはクリームまで塗ってから売るのか、それともデコレーションまですべて終えてから売るのかというのは、その時の状況によります。

たとえば、先ほどご紹介した「杉並プロジェクト」は、権利関係を調整して建築確認をとった段階――期間としては約1年――で売却してしまいましたが、当時資金調達ができていれば、うわもの(建物)建てて売るところまで行い、さらに高い利幅を得ることはできたかもしれません。
そのあたりは売り手・買い手の状況に加えて、当社の資金政策なども総合的に勘案して、当社にとって一番良い状況の時に売っていくことになります。

 

Q3: 事業環境の現状は?

―― そういえば、株主通信にはプリンシバルインベストメント事業が黒字転換した理由を「短期間でバリューアップした物件を早期売却」と書いてありましたが。

菊谷:
2008年秋のリーマン・ショック後、金融収縮や地価下落などの不動産市場減速の影響を受けまして、2009年3月期、2010年3月期と2期連続の赤字を計上しておりました。
こうした状況下、直近ではリスクの低減と、物件の早期収益化に軸足を置いてまいりましたため、物件の早期資金化と、利益率の高い「ソリューション事業」への注力に努めてきたところはございます。

ですが、そうした施策が功を奏しまして、前期(2012年3月期)決算ではプリンシパルインベストメント事業が黒字に転換し、さらに、販管費はソリューション事業でカバーできる収益体質を確立しました。また、金融機関からの資金調達環境も急速に回復してきました。

今後は「早期売却・早期資金化」だけにこだわらず、建替えや開発など中長期的な難易度の高い不動産のバリューアップを行い、高収益が期待できる事業展開を進めていく予定でございます。

プリンシパルインベストメント事業要旨

経常利益の推移

(上図:第14期株主通信 P2より、 下図(クリックして拡大):第14期株主通信 P3より引用)

Q4: 今後の成長のために取り組んでいることは?

菊谷:
今回、冒頭でお話した「The Place of Tokyo」という話題性のあるプロジェクトを手がけることができましたが、今後はこういった大型案件をいかに増やしていけるかが重要です。
不動産市場も徐々に活性化していくと見ていますし、当社としましては、不良債権化した物件の価値を高め、不動産市場、金融市場に戻していくことで社会に貢献していきたいと考えております。

―― 具体化している案件にはどのようなものがありますか?

菊谷:
直近の株主通信(第14期)では、二つの案件をご紹介しています。

ひとつは、「沖縄プロジェクト」です。
当社は、沖縄県那覇市のランドマークであった那覇タワーを購入し、現在、リノベーションの計画を進めております。那覇タワーは、1973年築の老朽化した建物ですが、那覇市の一等地である国際通り沿いの位置する、この地区を代表する建物です。当社はその不動産価値を最大限に引き出す方法を企画・立案していきます。
(写真:沖縄タワー)

 

今ひとつは、「虎ノ門プロジェクト」です。
東京メトロ銀座線虎ノ門駅から徒歩3分の商業地域に立地する築年数が古い3物件をまとめて購入しました。1物件は2011年3月に隣地所有者へ売却が完了しております。
新橋・虎ノ門エリアは2014年度に通称マッカーサー道路が竣工する予定であるため、残り2物件は建物を解体し、容積率を高めた開発を行うなど、好立地を活かした付加価値の高い開発を企画しております。

 

Q5: 個人投資家の皆様にひとことお願いします。

―― 今後は「攻め」のステージに入られるとのことで、大変楽しみに存じます。
それでは、最後に個人投資家の皆様にメッセージをお願いいたします。

菊谷:
当社は不動産事業を営む企業としてはまだ規模は大きくはありませんが、その分、成長した際の伸び率は大きいと思います。
今後は、外部環境に左右されにくい身軽な経営体質を維持しながら成長スピードを加速させ、事業収益を拡大することにより株主・投資家の皆様のご期待に応えてまいりたいと思いますので、是非、今後の当社にご注目いただけましたら幸いです。

―― 本日はありがとうございました!