銀行等で、大量の札を数える機械、TVなどで見たことありませんか?
最近、スーパーやドラッグストアでお釣りが自動的に出てくるレジ、増えましたよね?

「お金を数える」分野の巨人、グローリー株式会社。国内シェアは7割と圧倒的です。

最近はグローバルで最大のライバル企業の買収も完了。中国・インドの成長市場も含め、グローバルトップブランドに向けて、着々と手をうっています。
「国内市場で安定的に稼ぐ」会社から「グローバルに成長する会社」としての今を、同社の犬賀さんに伺いました。

Q1: 御社のビジネスは何ですか?わかりやすく教えて下さい。

犬賀:
私達のコア技術であり事業の基盤になっているのが、「お金を数え、揃え、本物と偽物をきちんと見分ける」技術です。
さらに、「見分ける」から派生した技術として、選挙の投票用紙に書かれた手書き文字を自動で読み取る機械や顔認証システムなども展開しております。

グローリーのコア技術

(「よくわかる!グローリー:グローリーのコア技術」より引用)

編集室注:
技術の詳細をアニメーションでわかりやすく解説した「グローリーのコア技術(リンク)」ページも是非ご覧ください。

―― 確か、大蔵省に硬貨計数機を納入されたのが今日の事業の始まりだったとか。

犬賀:
造幣局さんから注文を頂いた、国産第一号の硬貨計数機ですね。1950年、戦後間もない頃に納品したものです。
その後も硬貨自動包装機、千円紙幣両替機、たばこ販売機などの国産第一号製品を次々に開発し、当社は、日本における通貨処理機のパイオニアとしての地位を確立してきました。

―― 主要な販売先と製品については、どのようになっているのですか?

犬賀:
販売先の割合としては、国内では金融機関(主に銀行)が一番多く、流通・交通、遊技市場(パチンコホール)がこれに続きます。

実は金融機関向けに次ぐ、2番目に大きな割合を占めているのが、海外市場です。
それぞれの市場向けにどのような製品を販売しているかについては、こちらの図でご覧下さい。

事業ポートフォリオ

2012年7月29日 個人投資家向け会社説明会 P5より引用)

事業戦略と市場

(クリックして画像を拡大 : 2012年7月29日 個人投資家向け会社説明会 P34り引用)

金融市場は置き換え需要が多いのですが、流通市場は新規導入もまだまだあります。
主力製品のひとつレジつり銭機は、POSレジスターに接続し、つり銭を払い出す製品ですが、市場にはPOSレジスターが約110万台稼働しています。
それに対して、レジつり銭機の設置台数は30万台に届きません。この数字を勘案すればまだまだ伸びる市場と見ています。

―― レジ釣銭機が自動的にお釣りを計算してお金を出すということですと、人の手によるミスを防止できるのが良い点ですね。

犬賀:
おっしゃる通り、「間違いをなくす」というニーズは近年さらに強くなっていますね。
流通業界における当社の製品導入の理由は、当初は「レジの混雑解消」だったのですが、最近ではあまりレジ待ちの列ができない業態、たとえば外食チェーンやファミリーレストランといったところにも、「間違いをなくす」ために導入する企業が増えています。

Q2: 御社の強み、他社との違いはどこにあるのでしょうか?

―― 御社は、特に金融機関向けでは大変高いシェアをお持ちだと伺っております。

犬賀:
製品によって大分違いますが、7割超のシェアを持っているものもあります。

―― その強さの源泉はどこにあるのでしょうか?

犬賀:
国内事業における当社の強みは、大きく分けて2つあります。

1つは、冒頭でご説明した2つのコア技術に基づく「研究開発力」です。
認識・識別技術、これは本物と偽物を「見分ける」力。
そして「数え、揃える」メカトロ技術。流通している紙幣はヨレヨレのお札もあれば新札もあったりして非常に扱いにくい媒体なのですが、それを一枚も間違えることなく搬送して数えて集積していくのがメカトロ技術です。
これらの技術を核に、新製品開発を含む研究開発に約800名の人員を投入し、毎年90億円を投資する、それが当社の研究開発力を支えています。

2つめは、「販売とアフターサービスのネットワーク網」です。
機械の故障や紙幣づまりなどの障害は必ず起き得るものですが、特に銀行などでは、お金の処理が止まれば業務が滞り、たちまち大きな影響が出てしまいます。この滞りを最小限にとどめるため、当社は国内に100箇所の拠点からなるアフターサービス網を構築しています。

Q3: 事業環境の変化とその対応策は?

―― もちろん国内についても今後はそれぞれの市場で伸ばして行かれると思うのですが、やはり海外の成長を大きく見込んでおられると、中期経営計画で拝見しました。エリアとしては特にアジアなのでしょうか?

海外事業戦略

(クリックして画像を拡大 : 2012年7月29日 個人投資家向け会社説明会 P12より引用)

犬賀:
アジアの魅力は、何と言っても経済成長力の高さです。経済成長にともなってお札の流通量はどんどん増えていますが、一方で金融機関の機械化が進んでいませんので、当社にとっては非常に魅力的な市場と言えます。
銀行の店舗数で申し上げますと、日本は5万7千店舗しかないのに対し、中国は19万店舗。これはユーロ圏全体の数(17万店舗)、あるいはアメリカ(11万5千店舗)よりも多い数です。中国以外ではインド、ASEAN諸国も魅力的な市場です。

―― なるほど、経済成長している国ではお札の流通量が増える。
それが御社にとってのビジネスチャンスなのですね。

犬賀:
中国などは、いくらお札を刷っても足らないような状態で、どんどん紙幣の流通量が増えているのですが、銀行の機械化はまだまだこれからです。

―― 高額紙幣がないからお札の量がそもそも多い、ということもありそうですね。

犬賀:
そうですね。中国でも最高額紙幣は100元、つまり1,200円ぐらいの価値しかありませんから、どうしても枚数が多くなるというところはあります。

―― 中国ではどのような体制で営業を進めておられるのですか?

犬賀:
販売拠点は上海と香港にありまして、そこを中心に約50社の代理店を経由して販売しています。できるだけ現地で組み立てて現地で販売する形にしていこうと、工場は蘇州に持っています。

―― 代理店販売なのですね。

犬賀:
これには理由がありまして。
当社は中国に進出してから9年になるのですが、最初の3~4年は業績が伸びませんでした。そこで日本人による営業から中国の有力な代理店へと切り替えたところ、売り上げが伸びはじめました。

―― なるほど、商品の問題ではなく人とのコネクションの問題だったのですね。
販売先(納入先)としては、中国でもやはり銀行が中心なのですか?

犬賀:
中国に限らず、海外向けは現時点ではほとんどが金融機関向けです。
中国では五大銀行(中国銀行、工商銀行、建設銀行、農業銀行の四大銀行に郵便貯金銀行を合わせたもの)を中心に販売が伸びています。先ほど申し上げました中国の19万店舗のうち、五大銀行が10万店舗ほどを占めております。

―― 中国の銀行はこれまでこういった機械を採用していなかったのですか?

犬賀:
これまでは比較的単純な機能の機械が採用されていました。しかし、最近は高機能な機械の導入が増えています。
そのような流れに乗り、グローリーの製品は少し値段は高いけれどもやっぱり正確だし、間違いがないし、偽札もきっちりはじくという事で需要が広がっています。主要製品である紙幣整理機の市場開拓はまだまだこれからです。
今後も五大銀行に加えて地方銀行にも範囲を広げていくため、地方の代理店を探したり、主要都市で展示会を開いたり、地道な活動をしながら拡販をしていきます。

―― 中国以外ではどこが?

犬賀:
今、アジアで中国に次ぐ市場と言えば、インドです。
インドでは今、中央銀行が、市中銀行に対して「正損選別」――きれいなお札と汚いお札を市中の銀行では選り分けることを義務付けたことをきっかけに、紙幣整理機へのニーズが急速に高まっています。

―― なぜ中央銀行がそのような義務付けをしたのですか?

犬賀:
昔は中央銀行が全部お札を集め、損券――状態の悪い紙幣を選別し、廃棄していたのですが、紙幣の流通量がどんどん増える中、中央銀行がその役割を担いきれなくなってきました。それに、どうしても戻ってこない、市中で滞留してしまう悪いお札もありますので、市中銀行の方に正損選別の役割を担わせよう、ということになったようです。
これを受けて、銀行は紙幣整理機を各店舗に導入し、備え付けるようになりました。

―― 海外で販売する製品は日本のものと同じですか?違うのですか?

犬賀:
類似していますが、少し違いますね。形とか頑丈さとか。

―― タフさ、頑丈さは日本よりも重要になるということですか?

犬賀:
2つの意味でそう言えます。ひとつは、セキュリティ。すぐ壊されないように鉄板なども厚くしていますし、なかなかこじあけられないようにもしています。
もうひとつは、異物混入への対応ですね。インドではお札をホッチキス止めする人がまだまだ多い(禁止されてはいるのですが…)。それ以外にもクリップや汚れなど、色々なものが混ざっていますので、異物混入対策は日本以上にしっかりした機種を開発しています。

―― なるほど…日本の常識で考えてはいけないのですね。
ところでインドの営業体制はどのようになっていますか?

犬賀:
インドに関しては、以前はシンガポールの拠点を中心に代理店で販売しており、営業体制としては手薄な地域となっていました。
ですが今後は、インドでもトップシェアを取ることを目標に、昨年6月に設置した現地拠点(デリー)を活用して、営業とメンテナンスの双方に力を入れていきます。

編集室注:
アジアにおける事業展開については、第66期中間報告書のpp.3-6にも詳しく記載されていますので、是非ご覧下さい。

Q4: 今後の成長を見据えての取り組みについて、お聞かせ下さい。

―― インドに限らずアジアで、或いは他の海外諸国で、御社と競合する企業は多いのでしょうか、それとも数はそれほど多くないのでしょうか?

犬賀:
グローバルではいくつかありますが、数としてはそれほど多くはありません。
最大の競合であった英国のタラリス社については今年7月に買収が完了し、経営権を取得しています。

―― この買収のメリットは何でしょうか?

犬賀:
販売網を手に入れたことです。
この図の中で、黄色はグローリーが元々販売網を持っていた国ですが、タラリス社は緑色で示した国々に直販網を持っていました。そこに一気に拡販できるというのがこの買収の一番の狙いです。これによって、当社の海外戦略はまたひとつ、大きく進展したと考えています。

タラリス社の株式取得について

(クリックして画像を拡大 : 2012年7月29日 個人投資家向け会社説明会 P27引用)

―― 世界トップブランドを目指す上で、今後の課題は?

犬賀:
メンテナンス網の整備ですね。
国内は100箇所の拠点がありますが、海外はまだまだ代理店任せになっていますので、タラリス社の買収をきっかけにメンテナンス網もきっちり整備していきたいですね。ただし、メンテナンス網の構築はコストがかかりますので、いかに効率よく拡大していくか、そこが課題です。

また、まだ販売できてない国もありますので、今後どうやってさらに販売網を充実させていくかも次の課題と考えています。

Q5: 個人投資家の皆様へのメッセージをお願いいたします。

―― これまでの御社は、業態としても業績面でも「安定」というイメージが強かったのですが、今後はそれがグっと伸びていく、あるいは伸ばして行こうというステージになっておられるということで、投資家さんの期待も高まりそうですね。

犬賀:
そうですね。投資家さんの見方も「成長銘柄」に変わったような印象はあります。
海外の機関投資家さんからの取材も増えつつあります。

―― どういったあたりに特に興味を持っておられるのですか?

犬賀:
やはり、今後のグローバル成長ストーリーへの関心が高いですね。
その他には、直近ではタラリス社の買収が大きなニュースでしたので、同社とのシナジー効果(相乗効果)を今後どうやって出して行くのか、といったあたりも聞かれます。

―― この2つを明確できれば、かなり成長は見えてくるという理解なのでしょうね。
数値目標として、何年後にどのぐらいというものは今どのようなものを持っておられるのでしょうか?

犬賀:
タラリスの買収完了に伴い、昨年(2012年)11月に中期経営計画の目標値を見直しました。
2014年度の時点で売上高2,100億円、営業利益210億円、海外売上比率40%、ROE6%以上の達成を目指します。

中期経営計画

(クリックして画像を拡大 :2014中期経営計画の改訂について P2より引用)

そのため、海外事業戦略においては、販売・メンテナンス体制はもちろん、製品開発や生産・調達に関してもタラリスとの統合を進め、「One GLORY」の早期実現によるシナジー創出を図ります。

―― 本日はありがとうございました!