世界的に、経済成長・人口増加は、新興国を中心に起こっています。
経済が成長すると、生活水準が上がり、食生活も変わり、結果がんや生活習慣病が増える。
一方で、受けられる医療の質も高まり、薬の使用も増える。何より、病気を発見するために、まず検査から始まります。

病気の診断や検診に欠かせない検査薬を主に開発している栄研化学株式会社。
(便潜血検査試薬はシェア5割超!?の国内最大手)

同社広報部の戸田さん、渡辺さんに、『「ヘルスケアを通じて、人々の健康を守ります」をグローバルで実現する』について伺いました。

Q1: 御社のビジネスは何ですか?わかりやすく教えて下さい。

渡辺:
私たちは、臨床検査薬の総合メーカーです。
「臨床検査」などと言いますと難しく聞こえるかもしれませんが、皆様が病院や保健センターなどで病気の診断や健康状態をチェックしていることが臨床検査です。

戸田:
患者さんの体から採取した血液や尿・便、細胞など――これらを「検体」と呼びます――を調べる検査は、臨床検査の中でも特に「検体検査」と言います。

当社の製品の大半を占めるのが、この「検体検査」用の試薬で病気の診断をサポートする体外診断用医薬品です。

その他、これらの検査に使用する医療機器(自動分析装置)も開発・販売*しています。

*製造についてはOEMで外部に委託しています。

売上高比率

(第74期報告書 P3より引用)

―― 体外診断用医薬品(検査用試薬)としては、どのような製品があるのですか?

戸田:
代表的な体外診断用医薬品としましては、

1) 便潜血検査用試薬『OCシリーズ』(種類:免疫血清学的検査用試薬)
便潜血検査用試薬『OCシリーズ』(種類:免疫血清学的検査用試薬)

大腸がんの早期診断のためのスクリーニング検査に使用されます。
(写真:採便容器)

 

 

 

 

2) 尿検査用試験紙『ウロペーパーIII』(種類:一般検査用試薬)

尿中の潜血、蛋白質、ブドウ糖など10項目までの検査が行える尿検査用試薬です。
(写真:ウロペーパーⅢ)

 

 

 

 

3) 微生物検査用培地『ポアメディア』・薬剤感受性検査用培地『ドライプレート』(種類:微生物検査用試薬)

検体中の細菌等の検出、抗生物質に対する感性・耐性の判定に使用します。
(写真:ポアメディア)

などがあります。

 

 

 

 

 

 

 

―― 検査用試薬では、医療用途以外のものも扱っておられるのですか?

戸田:
はい。当社は臨床検査だけではなく、食品環境衛生検査用試薬という分野も扱っておりまして、こちらは食品検査や環境検査に携わる方々向けとなっております。
たとえば、調理をする方の手の衛生状態を調べるために使う、人の手の形をした「培地」もあるんですよ。

―― それを使って、手に付いた細菌を調べるのですね。
自分のその結果を見たらすごく落ち込んでしまいそうです…。

戸田:
いえいえ(笑) でも、手には必ず常在菌を含めいろいろな細菌がついていますからね。そのため手洗いと消毒が大切になってきます。
飲食店で食中毒が発生してしまうともう本当に死活問題ですので、自主的なものではありますが、こういった検査に力を入れているお店は多くあります。ですから、この分野も今後、ある程度伸ばしていけるものと考えております。

からだの言葉

編集室注:
下記URLより会社案内ビデオを視聴することができます。是非ご覧ください。

http://www.eiken.co.jp/company/video.html

Q2: 御社の強み、他社との違いはどこにあるのでしょうか?

―― 臨床検査に関する国内の事業環境と申しますか、市場見通しについてはどのように見ておられますか?

渡辺:
日本では今、医療費を抑制するために予防医療に力を入れていますし、高齢化が進むとともに検査もやはり増えていきますから、国内の需要については、当面は増加するでしょう。
ただし、一方で少子化による人口減少の影響もありますので、中期的に見れば国内臨床検査薬市場の伸びは、微増程度に抑えられる公算が大きいと思われます。

したがいまして、当社が持続的な成長を遂げていくためには、やはりグローバル展開が不可欠と考えております。

―― 先ほどご紹介いただいた製品群の中で、グローバル展開をしているのはどの製品ですか?

戸田:
便潜血検査薬です。これは、大腸がんの一次検査に使う検査薬です。
大腸にがんやポリープなどがありますと、便が出てくる時に擦られて血液が付着することがあります。便の中に潜んでいる目には見えないほど微量な血液も調べることができるのが、この検査キットです。

渡辺:
現在、当社の海外売上の大半はこの製品が占めています。
これは、国内でも当社が約6割のシェアを占めておりますので、皆さんが便潜血検査をされる時、知らずにお使いになっているのではないでしょうか。

―― この検査薬のどのような点がグローバル展開上の強みになっているのでしょうか?

戸田:
当社の検査薬は潜血を検出する際に「免疫法」という方法を使っておりますが、海外ではこれまで「化学法」という手法が主流でした。

ですが化学法には、検査前の食事が検査結果に大きく影響する――例えば検査の2~3日前に肉を食べてしまうと、これが血液と判断され、潜血として検出される――という難点があります。
このため、化学法では疑陽性(=本当は陰性であるのに検査結果では誤って陽性と出ること)が多くなり、二次検診の受診者が増えてしまうため、医療費が高くなってしまうという問題もあります。

この点、免疫法は、ヒトヘモグロビン(人間の血液)のみにしか反応しませんので食事制限等も必要ない。さらに疑陽性も少なく、自動化装置もある。などの点が欧米諸国を中心とする海外で評価されるようになりつつあります。

戸田:
2010年に出されたEUの(大腸がん)検査ガイドラインでは「免疫法の自動化装置を使用した便潜血検査法がベストである」との推奨がありまして。今後、EU諸国、そして米国も免疫法へのシフトが進むと見ています。

―― それは実際に兆候として見えつつあるのでしょうか?

戸田:
イタリアは早くから免疫法を採用していただいていまして、大腸がん検診の検査薬シェアは当社製品が9割以上に達しています。

渡辺:
米国ではまだ化学法のシェアが6~7割を占めていますが、これも徐々に免疫法にシフトしつつあります。

 

Q3: 今後の成長を見据えて取り組んでいることは?

―― ところで、「遺伝子検査」というのは御社の研究開発面の強みでもある、とホームページに書いてあったように思います。研究開発面における主要な取り組みについてもお話いただけますか?

戸田:
当社の研究開発の3本柱は、遺伝子検査(LAMP法)と免疫検査、微生物検査でして、それぞれ独自性のある技術をオリジナル製品へと展開しています。ここでは、中でも注目度の高い「LAMP法」についてお話します。

渡辺:
当社独自の遺伝子増幅技術であるLAMP法は、従来のPCR法と呼ばれる手法に比べて「反応を促す温度設定が一定」「反応も速い」などの優れた特徴があり、短時間に低コストで検査を行うことができます。
このため、医療分野では結核やマイコプラズマ、インフルエンザ等の検査に使われているほか、食品、環境(水質検査)など、医療以外の分野でも活用されています。

戸田:
LAMP法を用いた製品の開発にあたっては、国内外の多くの企業とライセンスや共同開発契約を締結して進めています。
なかでも現在、当社が最も力を入れているのは、ビル・ゲイツ氏が運営する財団(ビル&メリンダ・ゲイツ財団)が出資する基金であり、WHOの関係機関でもある「FIND」との共同研究です。

―― これはどのような研究なのですか?

渡辺:
これは、設備の整っていない途上国でも安価かつ簡単・迅速に遺伝子検査での感染症診断――特に結核の検査ができるキット(結核菌群検出試薬)を開発するというプロジェクトです。
2005年の契約以来開発を進め、途上国でも扱える画期的な試薬および装置の開発に成功しております。

すでに日本では発売済みとなっておりますが、現在は結核高蔓延国での臨床性能試験を進めています。今後は販売条件が整った国から販売を開始しつつ、引き続きWHOの推奨獲得を目指していきます。

結核菌群検出キット

Q4: 個人投資家の皆様へのメッセージをお願いいたします。

戸田:
当社の海外売上比率は、現段階では全体の7パーセント程度に過ぎませんが、今後は「便潜血検査薬」と「LAMP法による遺伝子検査(結核菌群検出試薬)」の海外展開を一層進めていきます。

渡辺:
この2つは、当社としてもその技術や市場性には大いに自信を持っております。
私たちは、まずはこれら2製品をしっかりと育成することで、診断薬分野におけるグローバルトップ企業群に伍していけるだけのプレゼンスを確立していきます。そして、経営理念である「ヘルスケアを通じて、人々の健康を守ります」をグローバルで実現する企業を目指してまいります。今後の当社にどうぞご期待下さい。

―― 本日はありがとうございました!