メカニカルシールって知ってますか?
船のスクリューやカーエアコンで使われる小さな部品なのですが、この分野でグローバルでトップ3に入るイーグル工業株式会社

同社総務部の山本さんに、メカニカルシールが今後どういう分野で使われていくのか、グローバルでどう戦っていくのか戦略を伺いました。

Q1: 御社のビジネスは何ですか?わかりやすく教えて下さい。

―― 事業内容を拝見したのですが、そもそも「メカニカルシール」とはどんなものか、というのがわからないのですが・・・まずはそこを教えていただけますか?

山本:
ポンプやコンプレッサーなどの“軸を回す”といった回転する動力機械を「回転機械」と言います。
メカニカルシールは、回転機械の軸部分に付けられるパッキンの一種です。

わかりやすいように、船の例でご説明しましょう。こちらの図をご覧ください。

(クリックして画像を拡大)

船を動かす力は、船体の下についているプロペラが動くことで得られます。このプロペラは、エンジンが軸を回転されることで動くのですが、ここでひとつ問題が生じます。

軸は船体から海中に出ていて、軸と船体の境部分は自由に動くように隙間をあけて設計されています。ですが、隙間が空いていると海水が船体の中に入り、船は沈没してしまいますし、かといって、船体と軸の隙間を埋めるほど締め付けてしまうと、軸がすりへったり、回転できなくなったりしてしまいます。
「締め付けすぎずに、軸を回転させる」――この難しい課題を解決するのが、メカニカルシールなのです。

右端の図の軸と釜の接合部分がメカニカルシール設置箇所です。
回転する軸の動きを妨げない。つまり、軸を自由に回転させつつも、水の侵入を防ぐ。さらに、メカニカルシールには、船の油を海中に漏らさないという役割も持っています。

> 参考:「メカニカルシールとは?」

 

―― 船以外の用途もあると思いますが、どんな用途が一番多いのでしょう?

山本:
当社の場合、自動車・建設機械業界向けです。
連結売上高は約1,000億のうち、自動車・建設機械の売上高が500~600億なのですが、この大半が自動車向けです。

次に、一般産業機械(ポンプやコンプレッサーなど)向け、舶用、航空宇宙・・・と続きます。












Q2: 御社の強み、他社との違いはどこにあるのでしょうか?

―― 自動車向けは、特定のメーカーではなく幅広い対応をされているのでしょうか?

山本:
当社の強みのひとつは、自動車・建設機械業界向けメカニカルシールにおけるグローバルシェアの高さです。

中でもカーエアコンのコンプレッサーに使われるシールはグローバル85%のシェアを有しております。国産自動車であれば、完成車メーカーを問わず当社のメカニカルシールが使われています。

―― すごい数字ですね!なぜそんなにシェアが高いのでしょう?

山本:
自動車・建設機械業界向けのメカニカルシールは、日本の自動車産業の黎明期より当社が手がけていたことが大きな理由です。

当社は、1964年にNOK株式会社(証券コード:7240)のメカニカルシール製造部門が独立して設立された会社です。
なお、NOK株式会社は、現在では、自動車、エレクトロニクス製品向けなど様々な産業への綜合部品メーカーとして成長してまいりましたが、設立当初は、輸送用機器向けの部品を中心としたメーカーでした。これらの経緯もあり、当社の自動車・建設機械業界向けメカニカルシールも、両社協働で伸ばしてきたところがあります。

Q3: 事業環境とその対応は?

―― 自動車は海外生産が増えていると思うのですが、御社の海外展開の現状は?

山本:
現在の自動車・建設機械業界向け事業の国内海外生産体制比率は、国内が7割、海外が3割ほどなのですが、欧州地域(オランダ・フランスの生産拠点)を中心に順次生産ラインを移管しており、来年度には国内・海外比率を5:5まで引き上げる予定です。

―― 成長市場といえば、やはり新興国でしょうか?

山本:
そうですね。自動車業界が今、注目しているのはメキシコで、当社も進出することになりました。もちろん、BRICsにもまだまだ成長余地があります。

その他には、欧州での成長が期待できます。
当社はカーエアコン向けシールのシェアが高いとお話したと思いますが、実は、欧州の車にはもともとエアコンがついていない車種が多かったんです。それが今、急速にエアコン採用率が高まっていまして、当社の製品への需要も伸びています。

―― 今後は販売先の拡大もお考えでしょうか?

山本:
自動車・建設機械業界向け事業においての、当社の海外進出は基本的に、お客様の進出先に併せて当社も進出する形が基本です。
が、今後は販売先を現地のメーカーへと拡大していきたいと考えています。

ここ2、3年で中国と米国、欧州に自動車・建設機械業界向け製品の販売専門会社を作り、営業担当も出向してローカルメーカー向けに営業をしてきた結果、販売実績も少しずつ積み上がってきました。

Q4: 今後の成長戦略は?

―― 御社の部品はすべて「売り切り」なのでしょうか。

山本:
自動車・建機向けは、基本的に売り切りです。
一方、当社で2番目に大きいセグメントである一般産業機械(以下、一般産機)向け――これは、大きいところでは石油精製や石油化学、鉄鋼などのプラントに使われるのですが、こちらはメンテナンス等「アフターサービス」があります。

―― 磨耗していくんですね。

山本:
おっしゃるとおりです。摩擦等でシールの各部品が劣化したりすり減ってしまいますので、交換・メンテナンス等、なんらかの「アフターサービス」が必要となります。
この「アフターサービス」でも利益をあげることができますので、その点で、自動車・建設機械業界向け事業とはビジネスモデルが異なります。

―― メンテナンスで利益を得られるのは大きいですね。
市場としては有望なのでしょうか?

山本:
当社は一般産機向けでのグローバルシェアはまだ20%程度にすぎません。
中東や東南アジアなど、海外には大型プラントの建設プロジェクトが多くありますので、営業に注力してこうした案件を受注できれば、シェアを伸ばす余地は大いにあると考えています。

―― 海外のプラント案件を受注するのは大変ではありませんか?

山本:
当社の一般産機向け事業は、2004年よりドイツのブルグマン社とのアライアンス(合弁事業体制)「イーグルブルグマンアライアンス」にて事業を展開しております。
ブルグマン社は一般産機向けメカニカルシールの大手企業です。

海外の石油精製・石油化学プラントともなると、まずはクライアント側のリスト(シールを供給できる企業の一覧。ベンダーリスト)の上位にあがっていなければ、検討の土俵に載ることもできません。ブルグマン社とのアライアンスにより、メカニカルシールのグローバル企業のトップ3に入り、リスト上位に載るようになりました。

これを足がかりに、各種プラント向け営業活動については、日本・ドイツのみならず世界各国の拠点の営業担当と協働で「インターナショナルプロジェクト」として受注活動に向けて鋭意推進中です。

―― その他に「船舶」や「航空宇宙」などのセグメントがありますが、こちらも今後後伸ばして行くイメージなのでしょうか?

山本:
船舶のビジネスモデルも、一般産機向けと同様、定期的な船のメンテナンス(5年に1度程度)に合わせてのアフターサービスが実施するため利益率が高い傾向にあるのですが、新規船の受注残が底をつくと言われている「2014年問題」を控え、新規受注を望みにくい状況も想定され厳しい局面を迎えるものと考えられます。

航空宇宙のほうは、特に民間航空機用次世代エンジンの需要増に期待しています。
当社の航空機向けシールは、国産のジェットエンジンには当社製品が採用されるといった実績がありましたが、これらの実績をもとにボーイング、エアバスを始めとした民間航空機市場への本格参入が大きな課題でした。
航空機エンジン開発については開発計画延期などビジネスとしては難しい局面も多々ありますが、一部製品については量産化に見込みが立っておりますので量産に向けて準備を現在も継続しております。

なお、民間航空機エンジンについての性能向上ならびに騒音等の環境規制は、大変高度なレベルにあり、シールの性能もこれに合わせて改良していくことが求められますが、国内の航空宇宙産業の歴史と共に歩んできた当社にはそれだけの技術蓄積があるものと自負しております。

また、火力発電所向けのガスタービンにつきましてもジェットエンジンと同様の構造・技術が使われていますので、航空宇宙業界向け事業で生産するブラシシールが使用されています。

―― そうなんですか!

山本:
発電用ガスタービン向けブラシシールは、1990年頃、もともと航空機ジェットエンジン用シールを発電用ガスタービンに転用したことを端に発しています。

国内では震災後の電力需要の高まりからガスタービンによる発電も見直されていること、ならびに既に納入し稼動しているガスタービンのアフターサービス依頼も東南アジアを中心に入ってきており、これまで、特定のお客様への販売に偏っていたものが、販売形態の多様化・安定化が進んだことにより、航空宇宙事業において安定した製品に成長してきております。

―― 原子力関連事業の需要の動向はいかがでしょう?

山本:
国内の原子力発電に関しては福島第一原子力発電所の事故以降厳しい状況にありますが、一方で発電所の安全対策のため一部製品の引き合い納入もありました。

なお、世界的には原子力発電は新興国を中心とした建設計画を俯瞰する限り成長の余地もあり、市場は海外に向いているといえます。当社の原子力事業の海外展開については現時点でどのようにというコメントはできませんが、引き続き注視が必要な分野であるとは考えております。

Q5: 個人投資家の皆様にひとこと、お願いします。

山本:
メカニカルシールは「なくてはならない」部品です。当社はこの分野のパイオニアとして、自動車向けでの圧倒的シェアに加え、成長分野の取り込みにも努めてまいります。

具体的には、プラントや航空機、エネルギーなど伸びる分野での受注をグローバルで獲得すべく、自動車分野では関係会社のNOK、一般産機向けではドイツのブルグマン社という頼もしいパートナーをとともに海外展開を積極化しています。

現時点では、目立った個人投資家向けのIR活動に取り組めてはおりませんが、今後もHPや年次・中間報告書のコンテンツ改善など既存のIRツールの充実については積極的に取り組んでまいりたいと考えておりますので、どうぞご期待ください。

―― ありがとうございました!


編集室注:

イーグル工業の社名の由来は鶴(クレーン)に勝つのは鷲(イーグル)!?
こういう話って、勢いがあっていいですね!

出典:「寸言 荒鷲は大空に羽ばたく

「メカニカルシール業界にはジョンクレーンと言う怪物が居り、それではクレーンより強い鳥は何だと言う事になり、当時ワンマン社長であった鶴 正吾が「クレーンに勝つのはわししかおらんだろう。」という発言が決定打となりワシ、すなわち鷲が当選、直ちにイーグル工業という名前が新社名になったと言う何かうそ臭い話も残っております」