システム開発会社の競争力は技術力、品質、スピード、価格、様々あります。
今回お話を伺うのは「匠」を全面に押し出す株式会社クレスコ

SIerと言われるシステム開発会社は、実際の開発は子会社や協力会社に委託するケースが多いのですが、同社は技術者集団で在り続けるのが企業のDNA。
技術者を育てあげる同社の取り組みを、経営企画室の米崎さんにお話を伺いました。

Q1: 事業内容、また強みや他社との違いを教えて下さい。

―― ホームページを拝見しますと、「匠」と大きく書いてあり、驚きました。
事業内容について、改めて教えていただけますか?

米﨑:
独立系のシステム開発会社です。
金融機関の向けの開発実績が多いですが、金融に特化した会社ではなく、各産業向けに幅広くサービスを提供しています。

現在、当社が手がけるシステムは、業務系アプリケーション、いわゆる企業の基幹業務を支える「情報系システム」が中心になっています。

そこだけを見ると他のシステム開発会社とあまり変わらないのでは?と思われてしまいがちなのですが、「匠」の説明に書いておりますように、創業当時からの当社の強みは、業務・業種にとらわれない「ミドルウェア」を核とした基盤システム構築技術(仕様の異なったシステム間の連携やネットワークの構築など)と組込み技術(機器を制御するため、予め製品に組み込まれているソフトウェアの開発)にあります。

アプリケーション開発技術とその土台となる基盤システム構築技術は密接な関係にありますから、ビジネスソリューション事業として一気通貫でサービスを提供する体制を整えています。

また、組込み技術は、ファームウェア開発とも呼ばれ、デジタル家電製品(テレビやカメラなど)や情報通信端末(携帯電話やスマートフォン、タブレットPCなど)、車載機器(カーオーディオやカーナビゲーションシステムなど)等を制御するため、現代の生活には、欠かせないものです。
エンベデッドソリューション事業として、主にメーカー向けにサービスを提供しています。

匠として技術への誇り

ホームページ「サービス情報」より引用)

―― 最近は組込みソフトウェアのニーズが業界全体で高まっていると聞いています。

米﨑:
組込みソフトウェアは、各産業分野で使われている機器の制御を行う重要な部分で、近年では、家庭用、産業用製品で高機能化する機器に搭載され、必要不可欠なシステムとなっています。
また、スマートフォンの急激な普及も無線通信環境やネットワーク環境の整備の進展に伴って、他のシステムと連携、統合することにより機能と利便性の向上を実現しています。

ここで、基本となるのは、組込み型開発特有のプロセッサ、LSI、OS、ミドルウェア、ハードウェアなどに対する幅広く、深い知見です。
今後は、ネットワークやクラウドと相まって「組込み型統合システム」の開発のニーズがますます高まる、と考えています。

市場ではこのような技術者が不足していますが、当社ではシステム開発に関わる組込み技術を体系として理解し、実装できる技術者をたくさん抱えています。
社内には各分野の専門家もいますから、どのような切り口から何をご質問頂いてもお応えできます。匠だからこそできるソリューションのご提供です。

お客様企業からすると、非常に頼れる、便利な会社だと自負しています。

匠の技術と付加価値でサービスをご提供

ホームページ「サービス情報」より引用)

―― 40年の歴史、とありますね。

米﨑:
クレスコは今年、1988年の創業から25周年を迎えました。
前身の会社から数えると40年の歴史です。

メインフレーム時代からオープンシステムへ、オフコンからパソコンへ、Windows 95の登場による革命、インターネットの出現など…。IT時代は、第1世代はハードウェア、第2世代はソフトウェア・情報処理、第3世代は、インターネット・コンテンツ、と変遷してきました。
そういった時代の流れを体感し、実績を積み上げてきたことは、最大の財産でしょう。

ですから当社は、今では対応できる技術者が少なくなったCOBOL言語でプログラミングされた古いシステムのメンテナンスや更改にも対応できます。
ここも強みと言えるでしょうね。

―― 古いシステムに対応できるということは重要なのでしょうか?

米﨑:
日本ではICT投資の80%が保守・運用と言われています。それだけ「今あるシステムをメンテナンスできる」ということは大事なんですよ。
レガシーシステムの更新需要は、新旧のシステムへの理解と実装力が重要になります。

―― なるほど…。ところで仕事の請け方としては、どのような形が多いのでしょうか。

米﨑:
割合としてはやはり大手ベンダー経由で、仕事を請けることが多いですが、経営安定化や業容の拡大、ノウハウの習得といった観点から、5年程前から「エンドユーザーフォーカス」というメッセージを掲げて直取引を増やすための取り組みを進めています。

プロジェクトの内容や規模によって、受注形態は変化しますが、どのプロジェクトでも受注プロセスでは、リスクを想定し、レビューを徹底しています。
お客様の要望にお応えすると同時に、いかにプロジェクトの収益を確保するか、を議論するわけです。

当然、アプローチの方法もベンダー営業とエンドユーザー営業は異なります。
お客様側のご担当者も技術に詳しい方ばかりではありませんし、経営層と現場担当者に同じパターンでの提案はできません。タイプの異なるご担当者とどう仕事を進めていけばいいのか、戸惑いの中、直接お客様と顔を合わせ、お客様が持つニーズを肌で感じながら、営業担当者一人ひとりの意識やお客様との接し方が変わって来ました。

それにつれて社員の意識も少しずつ変わってきました。
一番大きいのは「要求仕様を満たして品質の高いシステムを作る」のはもちろん「お客様の利益を創出する」と技術者自身が考えるようになったことです。

―― 5年前というと、すぐ後にリーマンショックがあったのでは…?

米﨑:
そうなんです。そこで業界全体の需要が極端にシュリンク(縮小)しました。
ですが、当社はその頃にはエンドユーザーに深く入り込み、仕事を待つのではなく、提案して、仕事を作り出すことができるようになっていた。

「言われたものを作る」から、「仕事自体を作り出す」姿勢へと変わったこと、直取引ができるお客様が増えてきたことが、今のクレスコの“第二成長期”を支える基盤になっています。

編集室注:
2008年~2009年、リーマンショック後のシステム開発業界は大変厳しいものでした。
業績の急低下はもちろん、解散に追い込まれる会社も多数出ています。
そうした環境の中でも、クレスコの売上高は2008年度(第21期)から2009年度(第22期)への減少はわずかなものにとどまり、その後は成長軌道に復帰しています。これが、技術力や上述の「変化」の成果と言えると感じます。

CRESCO REPORT2011 P2から引用)

―― 御社がお客様企業に一番評価されているポイントは何なのでしょうか?

米﨑:
ずばり、技術と品質です。

「匠」という言葉で表現しております通り、クレスコの原点はモノ作りの職人、技術者の集団ですから、技術と品質に徹底した「こだわり」をもっています。
言い換えれば、技術に裏打ちされた提案と実装力、そこが強みなんです。

―― なるほど。無責任なことをフワッと語るわけではないと。

米﨑:
そうです。システム開発は、「お客様の思い(要求)」を受けて、予算やシステム化の目的等に照らし、提案としてまとめますが、「作る人や使う人は別」のようなスタンスで臨むことはありません。(編集室注:大手SIerではプロジェクト管理だけして、システム開発はしないというところが多い)
当社の提案活動はいわゆるカッコいいコンサルテーションではなく、お客様と一緒に汗をかきますと、ある意味、泥くさいスタンスです。

お客様には「親身になって提案してくれる」とご評価いただいています。
お客様のことを思い、ときには厳しい商談になったとしても、「もの作り」の匠が、ITのプロフェッショナルとして、真摯に対応する、そういったところも当社の強みになっています。

Q2: 事業環境とその対応は? また、それに対応する成長戦略は?

――  今、事業環境としてはどのようになっているのでしょう?
受注の単価は厳しい状況が続いているのでしょうか。

米﨑:
そうですね。事業環境は、欧州債務危機や円高、日中韓の領土問題に端を発したアジア経済の減速など懸念も多く抱えていますが、営業状況から判断すると、企業のIT投資は、確実に改善基調にあります。
確かに、2008年以降、受託開発の人月単価は一気に落ちました。リーマンショック前から比べると2割以上低下しています。

一度落ちた単価はなかなか上がらないものです。
それどころかさらに下げ圧力があることもしばしば。
IT業界全体もいわゆるデフレのスパイラルに入っている状況です。

特に受託開発は、エンジニアリングサービス(労務提供型サービス)の場合、まさに価格競争になっています。価格破壊を招くような単価で提案する事業者も多く、お客様のコスト低減要請に拍車をかけている面も否めません。

―― 厳しい事業環境の中でどのようにして行かれるかというと…

米﨑:
職人気質なのか、「収益性よりも、まずはいいものを作り、お客様に喜ばれることが大切」という意識がどこかにあったことは否定できません。
これは大切な考え方なのですが、企業である以上、収益を生み出し、企業価値、株主価値を増大させなければなりません。

リーマンショック以降は「利益の出る体質、体制への改善」をスローガンに、徹底したスリム化とコスト削減に取り組んできました。評価指標も売上高、プロジェクト利益率に加え、営業利益、営業利益率を重視し、意識改革も合わせて行っています。

  • お客様のニーズと開発コストの最適化
  • 御用聞き営業からソリューション型営業へ
  • 収益性の高いサービスビジネスの創出

一方で、オフショア開発やニアショア開発を通して開発コスト(原価)の低減化も進めています。
これら複数の施策の実行が功を奏し、最近の業績にも反映されています。

―― 成長を続けていくための鍵は?

米﨑:
やはり「ヒト」、これに尽きます。

プログラムコードは自動生成することもできるようになりましたが、システム開発は、「考える」「作りこむ」「実装する」等々、すべて「ヒト」が介在しなければできない。

当社に限らず、創業20年以上のIT企業が、共通して悩んでいる経営課題は「代替わり」の時期をどう乗り切るか、それを乗り越えて、未来に向け、どう変わっていけるのかにあります。
これまで企業の成長と発展を支えてきた世代は、そろそろ引退の時期を迎えます。
彼らが第一線から退いた時、経営を受け継ぐ次世代人材は育っているのか、先進技術に対応できる人材がどれぐらいいるのか・・・。そこは株主様にとっても最大の関心事だと思いますし、業界全体にとってもこれからますます重要な課題になってくるでしょう。

―― 「ヒト」は自社での育成ですか?それとも外からの採用でしょうか。

米﨑:
やはり社内での育成が望ましいと思います。
会社というのは、25年、50年の流れの中で、紆余曲折があって、困難を乗り越えながらだんだん強くなっていくものですから。

それを「人が育っていなければ外から連れてくれば良い」と単純に発想してしまうようではまずい。やはり自社の歴史を知った人間、プロパーの社員が育って会社を背負っていくことが必要なんです。

―― 人の育成としては、OJTや研修なども実施されていると思いますが、
その他にはどのような取り組みをなさっておられますか?

米﨑:
やはり「技術と品質」という、当たり前の原点に戻りましょうという取り組みを進めています。
技術は、当社にとって「魂(たましい)」と同じです。

お客様から認められ、選ばれる「技術と品質」を追求すべく、次世代クレスコの創生の一環として、2012年4月、技術研究所と品質管理室を新設しました。
あるべき姿を整理し、監視する管理組織ではなく、社内外に役立つもの、収益を生み出すサービスや仕掛け、仕組みへと結実させ、実践する組織です。

2~3年後に1つでもうまくいけばよい、当たればいいとか悠長な話ではなく、3ケ月から半年後にはサービス提供できるようにしよう、といった取り組みを、若手中心で進めています。

―― 若手にこだわる理由は?

米﨑:
次世代を担う、新鮮な感性に溢れた人たちが「考え、実行する」ことが大事なんです。
(過去にとらわれたり、言われたことだけをやるのではなく)こうしていきたいという気持ちを若手自身が持つことがものすごく重要。
柔軟な発想で若い人たちが自発的に色々なチャレンジをし、ある意味、経験を積んだ人たちはそれをフォローしていけばいい。

そういう、上も下もない組織を若手中心で動かすことで人を育てています。

―― 技術以外にも伝えていくものは?

米﨑:
仕事の考え方のような、明文化されていない、クレスコイズムみたいなものも伝えていきたいですね。多少古めかしい世界かもしれませんけれど、匠として伝えるべきことは、必ずありますから。

口頭伝承と合わせて、可能な範囲はきちんと明文化して伝えていこうという取り組みも進めています。
技術コミュニティ活動は、具体的な取組みの一例です。

―― これまでお伺いした内容以外で、今後の成長のために取り組んでおられることがあれば、お話いただけますか?

米﨑:
自社サービスの育成と知財化ですね。
受託開発は、納品時に知的財産、著作権を全て開発元に渡してしまうのが業界の慣習になっています。ですから特異な技術やシステムを横展開することは事実上ほとんどできていないのですが、先程もお話しましたように、単価の下落、あるいはシステムの軽量化が進む中では、我々としても開発実績やノウハウをベースに新たなサービス展開を行わないと高い収益性は望めません。

そこをどう解決するか。今のところ、大きく、2つあります。
ひとつは、自社開発したシステムの一部機能を部品(モジュール)化、もしくは、サービスパッケージ化するという形。
もうひとつは、お客様と特許や知財を共同で管理する形。
これらを進めることで、新たな収益の柱にしようという取り組みを開始しています。

Q3: 個人投資家の皆様にひとことお願い致します。

米﨑:
私がIRをやっていて一番悔しいのはね、IT関連会社、通信セクターの中で十把一絡げにされてしまうことです。
大手ITベンダーや冠企業がクローズアップされ、それ以外は皆同じ。「受託会社はどこでも一緒でしょ?」と言われるのが、すごく悔しい・・・。

我々なりのサービスポジションがあるわけです。
ですがそれも十分に情報発信できず、伝え切れていないこともよくわかっています。

受託開発という仕事柄、開発実績やお客様の状況を簡単に開示するわけにもいきませんから、自社ホームページでは、どのIT企業でも書いておられるような表現に最後落ち着いてしまって、個性が出にくくなっている…そこはすごく歯がゆいですね。

慌てず急いで、まずはできる範囲から――IRサイト、ソリューションサイト、クレスコレポート(事業報告書)と、徐々に変えていきたいですね。もっと個性を出していくことで、皆様に本当のクレスコの姿と社員の熱感をお伝えしたい、そう思っています。

―― 本日はありがとうございました!