それぞれの業種で扱う多様な部品・材料を、メーカーに代わって仕入れてくれるくれる専門商社。製造業で資源商社、ハイテク業で半導体商社等がありますが、バイオ研究の分野で、基礎研究を支える専門商社、コスモ・バイオ株式会社

取り扱う商品数は、世界中の600社から仕入れた280万製品!必要なものは何でも揃います。
研究用試薬とは何か、日本の基本研究の市場の状況について、同社の鈴木常務、北原さんにお話を伺いました。

Q1: 御社のビジネスは何ですか?わかりやすく教えて下さい。

鈴木:
当社はライフサイエンスの研究に使われる研究用試薬や機器、臨床検査薬などの輸入と販売を行う専門商社です。
特に、バイオ分野の基礎研究に使われる試薬を中心に、約280万点と、大変多数の商品を取り扱っているのが当社の特長の一つです。

北原:
仕入先は、国内・海外を含め600社以上あります。販売先は、バイオ関連の研究開発を行っている大学・公的研究機関・企業等の研究者が中心となっております。

―― すみません、わからない言葉が多いので、一つずつ教えて下さい。
まず、「研究用試薬」とはどのようなものを指すのでしょうか?

鈴木:
通常、研究を行おうとすると、仮説や推論を証明するために、また現象を確認するために実験を行う必要があります。
たとえばある物質を検出したり合成したりする等の実験で、これらは小さな規模で行われます。この実験に使用される薬品全般を総称して「研究用試薬」と呼んでいます。
試薬は高純度に精製した物質として販売されています。

研究用試薬

―― なんだかずいぶん小さそうなものばかりですね…。

鈴木:
本当にそうなんですよ。当社が販売している商品の分量は、液体の場合通常100マイクロリットル、粉末では100マイクログラムです。ほとんど目に見えない(笑)。

北原:
100マイクロリットルの液体というのは、見えるか見えないかぐらいのものすごく小さな水滴です。ですから、納品した後に「中身が入ってないよ!」というお問い合わせをいただくことも実は多くて(苦笑)。

鈴木:
いや、液体はまだ見やすい方ですよ。本当に見えないのは、粉末。
水分を飛ばしている分だけ長持ちしますし、品質の安定性もありますから粉末でお出ししている製品は多いのですが、これはもう、本当に何も見えないです。
入ってないよ!というお問い合わせには、「何にも見えなくても、とにかくそこに水を入れて溶かしたら実験が出来ますから」と申し上げるしかない(苦笑)。

北原:
100マイクログラムあれば、50回とか、方法によっては100回や1000回の実験ができますからね…。

――  今、実験とおっしゃいましたのでお聞きしたいのですが、「基礎研究」というのは実用化前の実験段階、と理解すれば良いのでしょうか?

北原:
それは、大学院で複合糖質の糖鎖構造・機能を研究していた元・研究者の私からお答えさせてください。
研究開発は、大きく「基礎研究」「応用研究」、そして「開発研究」の3つに分けられます。
うち「基礎研究」は、特別な用途や応用を直接には想定せず、新しい知見を得るために行われる理論的、または実験的な研究のことを指します。

これに対し、「応用研究」は基礎研究で得られた成果を実用化に近づけるための研究、そして「開発研究」は応用研究の成果を活用し、実用化・製品化に向けて行うものです。基礎研究から開発研究へと進むにしたがって、製品・商品化、つまり収益に近づいていくイメージでとらえていただけると、わかりやすいかと存じます。

鈴木:
当社はこの3段階の中で「基礎研究」を支援する試薬などを中心に取り扱っていますため、販売先は大学の医学部や薬学部等、また公的な研究機関が中心となります。

―― なぜ、基礎研究用ですと販売先が大学の医学部などになるのですか?

鈴木:
基礎研究というのは、一般的にはこれらの3段階の中で一番時間がかかる上に、不確実性が高い、つまりすぐに収益化できる(=お金になる)仕事ではないわけです。ですから、この部分を負担できる体力がある民間企業は、残念ながらそう多くはありません。

北原:
もちろん、企業の中でも製薬会社、特に新薬の研究開発を行っている製薬会社では基礎研究も実施しておられることが多く、当社のお客様になっておられます。その他には業種で申しますと化粧品メーカーや食品メーカーもありますが、民間では圧倒的に製薬会社の割合が高いですね。

ライフサイエンス研究とユーザー層

(クリックして画像を拡大:2012年6月個人投資家向けセミナー資料 P16より引用)

―― 「ライフサイエンス分野」というのは、今おっしゃった医薬や化粧品、食品などの産業に関わりある分野全般ととらえれば良いのでしょうか。

北原:
そうですね、おおむねそのあたりがライフサイエンスの領域です。
あとは、「環境・エネルギー分野」も加えていただくとさらに良いかと思います。

鈴木:
当社はもともと、丸善石油(現・コスモ石油株式会社)の新規事業開発の一環としてスタートしてその後独立した企業ですから、実は出自は「環境・エネルギー」分野なんですよ。

(当社の沿革についてはこちらをご参照下さい)

Q2: 御社の強み、他社との違いはどこにあるのでしょうか?

―― おかげさまでだいぶ事業内容のイメージがつかめてきましたので、次は御社の強みや特長についてお伺いしたいと思います。
先ほど「取扱点数の多さが特長」とおっしゃっておられましたが、なぜそのような戦略をとっているのか、その点をお聞かせいただけますか?

北原:
ライフサイエンス分野の基礎研究というのは、非常に広範囲でさまざまな分野の研究が行われています。さらに、研究者ひとりひとりがそれぞれ異なったテーマで研究を行っていますので、試薬についても多種多様なものが必要とされますし、実際、そういったご要望に応えるために多くの製品が開発・販売されています。

多くの試薬会社さんでは、ある程度領域や分野を絞り込んだ品揃えをしておられますが、当社は、幅広く品揃えすることで「まずはコスモ・バイオで探そう/コスモ・バイオに聞いてみよう」あるいは「こんな試薬があるなら、こんな実験もできる!」とお考えいただける、“研究者様から第一に選んで頂ける” 企業を目指しています。

鈴木:
仕入先が600社以上あるとお話しましたが、多種多様な製品(試薬など)の作り手であるメーカー、つまり仕入先の多くは、最先端の技術力はあっても販売力や営業展開力を持っていません。

一方、これら製品の買い手である研究者達にも、これらのメーカーを一社一社あたって必要な商品を探し出すことは困難ですし、そもそも(研究以外の)そういったことに時間を費やすこと自体が研究者の本分からは外れてしまいます。

当社は、豊富な商品点数を持つことで、こうした作り手と買い手双方の「困りごと」を解消し、両者を結びつける役割を果たしていることも、申し添えておきたいと思います。

膨大な商品・情報(シーズ)と多様なユーザーニーズのマッチング

(クリックして画像を拡大:2012年6月個人投資家向けセミナー資料 P13より引用)

―― 膨大な商品から必要な商品を効率良く探し、ご活用いただくための「商品検索システム」をお持ちだとうかがいましたが。

鈴木:
はい。当社はこの業界でどこよりも早く商品検索システムを導入した企業でして、大変ご好評を頂いていました。ただ、そのリニューアルが今ひとつ追いついていなかったという状況がございましたので、2年前から本格的に取り組んできまして、昨年末(2011年末)にはソフトの基本がほぼ完成しております。
今年度(2012年度)はその“中身”の部分を充実させようということで、商品情報の整備・充実と検索機能増強に取り組んでいます。

―― それにしても、280万以上の製品について在庫をお持ちになるのは大変だと思うのですが…。特に、“ナマモノ”も扱っておられるということですので、管理が難しそうに思えます。

鈴木:
もちろん、それだけの製品をすべて在庫で持っているわけではありませんよ。
過去に売れたものをベースに、また研究トレンドを踏まえ、私たちの手元に持つものと、メーカーさんの側に置いておくものとを分けています。

北原:
商品が“ナマモノ”というのは、試薬の多くがタンパク質や細胞など、生体由来の物質であるという意味です。そのため、保管に関しては、温度管理が大変重要です。中には常温で保管できるものもありますが、たいていは摂氏4度~マイナス20度。中にはマイナス70度での保管が必要なものもあります。

商品の保管・管理

2012年6月個人投資家向けセミナー資料 P15より引用)

―― マイナス70度ですか!!

北原:
ええ。たとえば、細胞などはこの温度で一時保管しますね。長期保存には、もっと低温の液体窒素(マイナス196度)で保管しています。生きている細胞をうまく凍結させて、超低温の環境で眠らせておき、使う時にはそれを人肌ほどの温度まで戻すことで、うまく起こすのです。実験に使わない間や輸送中は、凍結させておくのが一般的です。

鈴木:
とは言え、どんなに慎重に扱っても、細胞は凍らせると品質が劣化しやすい。これは、避けられない問題でした。しかし細胞を輸入してくるには、凍結させるしかない。

そこで当社では昨年、温度を一定に保てる輸送容器を独自に開発しました。
これを専用の培地とともに使うことで「生きた細胞を凍結せずに輸入」することが可能になったのです(来年から一部細胞についてサービスを開始する予定です)。これにより、研究者の皆様により良い状態で細胞をお届けできるものと期待しております。

Q3: 事業環境とその対応は? また、それに対応する戦略は?

鈴木:
市場規模としては、民間の調査会社さんの試算によれば、ライフサイエンス研究用試薬の市場は約1,000億円。機器の市場がこれとほぼ同じくらいありますので、全体で2,000億円ほどの市場ということになります。
規模はそれほど大きくありませんが、ニッチな市場で新規参入は厳しくなっています。

―― この市場規模が伸びるかどうかは、国の予算によるところが大きいのですね?

北原:
はい。先ほども申し上げましたように、基礎研究で生まれてくるものを実用化する研究(応用研究、開発研究)に関しては民間企業においても非常に熱心なのですが、基礎研究部分まで負担できる体力を持った企業となると数は限られてきます。しかし、日本は基礎研究分野への予算の重点配分が行われており、今年度も文部科学省の科研費予算は前年比5%アップとなっています。

民間では、製薬企業約25社の研究開発費は合計で1兆4千億~1兆5千億円くらいあるのですが、このうち基礎研究に充てられるのはわずか数%に過ぎないと言われています。

ライフサイエンス研究の市場環境

(クリックして画像を拡大:2012年6月個人投資家向けセミナー資料 P21より引用)

こういった状況ですので、当社の同業他社さんの一部は、7割~7割5分ぐらいは大学や公的研究機関が販売先だと公表しておられます。当社の場合は民間にも力を入れていますので、ここまでの割合ではないのですが、やはり主力という意味では公的な部分が大きいです。

鈴木:
ただ、国も今、基礎技術を民間に橋渡ししていくところに予算を付けて真剣に取り組み始めましたので、そういったところが新しい事業フィールドのターゲットとなってゆくのではと見ています。

Q4: 今後の成長を見据えて取り組んでいることは?

鈴木:
こうした中、当社自身も子会社(株式会社プライマリーセル)と連携しながら、自社ブランド品の開発に力を入れております。

北原:
当社では、大学や公的研究機関が持つ技術や成果を、株式会社プライマリーセルと共同して商品化し、自社ブランド品として世界へ発信しています。
昨年販売を開始した商品の一例で申しますと、糖尿病や肥満の研究に欠かせない「糖代謝」を測定するキットを、世界ではじめての手法を用いた画期的なキットとして販売開始するなど、さまざまな成果を上げております。

このような開発型の自社ブランド品のほか、他社に委託製造してもらって商品化し、コスモ・バイオのラベルを貼って販売する自社ブランド品も数を増やしております。

商品探索力の強化と自社ブランド商品の充実

2012年6月個人投資家向けセミナー資料 P30より引用)

―― 今まで埋もれていた研究の成果が実用化されて行くことは大変有意義だと思います。ところでその販売先というのは国内に限定されないということでしょうか?

鈴木:
海外販売網の拡充も加速しておりますので、せっかくの日本発の技術を国内にとどめておくのではなく、海外にも発信していく、使っていただくことは当社のミッションとしても重要と考えております。

海外販売網の拡充加速

2012年6月個人投資家向けセミナー資料 P28より引用)

北原:
自社ブランド品の拡充は緒についたばかりで、売上規模としても未だ微々たるものではありますが、この数年以内に二桁(の売上比率)を出せるようにしたいと思っております。

 

Q5: 個人投資家の皆様へのメッセージをお願いいたします。

鈴木:
当社は、社名に「バイオ」が付いているためかベンチャー企業と思われることもあるのですが、業歴はすでに30年。構築してきた事業を基盤に、安定的な成長を続けてきた企業です。

現在は、その上に自社開発品などの高付加価値品を加えて事業フィールドを広げたり、海外の販売網を拡充したりといった、拡大のステージにあります。
こういった「安定性」と「成長性」をご理解いただき、当社の将来にご期待いただけますと幸いです。

コスモ・バイオ株式会社の歩み

2012年6月個人投資家向けセミナー資料 P6より引用)

鈴木:
当社は、国力の要である科学技術の基礎研究を支える、非常に意義ある事業を営んでおります。
個人投資家の皆様にも是非その点をご理解いただき、社会にとってなくてはならない会社としてご期待いただきながら、末永く当社の株主として見守っていただければ幸いです。
そのためにも、私たちは皆様にとってよりわかりやすいIR情報をお届けできるよう努めてまいります。

 

―― 本日はありがとうございました!