ビックデータやデータサイエンティストと行った分野がここ最近、流行のIT業界でのキーワードになっています。
データ分析(データマイニング)という分野にいち早く注目し、2004年に設立した 株式会社ブレインパッド

データマイニングとは、大量のデータを分析することで、それま知られていなかった潜在的な法則性を見つけ出す活動(有名な例では、1990年代のアメリカで過去の販売履歴から「おむつを買ったお客さんはビールも良く買う」という法則を発見し、売り場でおむつとビールを並べたところ売上が上がったと言われています)ですが、ブレインパッド社では分析するだけでなく、法則性を見つける部分の自動化ツールや、売上向上のためのツールまで提供しています。

この分野では、圧倒的なリーディングカンパニーの同社。
「ビックデータ市場」の今について、経営企画室長の宍倉さんに、お話をうかがいました。

Q1: 御社のビジネスは何ですか?わかりやすく教えて下さい

有価証券報告書 3【事業の内容】より:

当社は、「データ活用の促進を通じて、持続成長可能な未来をつくる」を経営理念としており、統計学、数学や機械学習といった様々なデータ解析技術(データマイニング)によるアプローチによって、企業が営業活動等の結果取得した大量の販売等データから購買パターンや顧客属性毎の購買確率を当社のノウハウにより分析し、経営・企画立案者が適切な施策、方針立案等の意思決定が速やかに可能となることを支援する事業を展開しております。

(中略)

当社は、大量データの解析技術である「データマイニング」と「最適化」技術を中核とし、企業内で増加しているデータ(顧客データ以外の社内データを含む)を有効活用するための解決策を提供する事業を展開しております。

―― データマイニングに最適化、色々なキーワードがでていますが、ひとことで言うとブレインパッドさんはどんな事業を営む企業なのでしょうか?

カード会社の事例 宍倉:
ひとことで言えば、私たちの仕事は「企業の意思決定を支援する」ことです。
私たちがデータから事実を見つけ出すことで、お客様企業に正しい意思決定をして頂くことができる。当社は、そういったお手伝いをする企業なのです。

―― どのような分野の意思決定を支援することが多いのですか?

宍倉:
やはり多いのはマーケティング分野ですね。
たとえば、ECサイトを運営する企業がお客様であれば、そもそも消費者(顧客)とのコミュニケーション戦略をどうするのかという部分から、戦略の立案や企画の検討、たとえばどの顧客にどういう商品でオファーをすれば一番満足していただけるのかといった“組み合わせ”を見つけるような具体的な施策への落とし込み、まで幅広くご支援することができます。

マーケティング部門の担当者さんに課せられた課題は、限られた予算の中で最大の効果を発揮すること。この課題に対して、データ分析を主軸にすることで、人間が考えつく以上の精度の仮説、あるいは予測を立てることができる。それが当社の大きな特徴だと思います。

(右図:クリックして画像を拡大: 2012年6月期 株主通信:P5より引用)

 

―― 事業セグメントは3つあるのですね。これはそれぞれどのような事業なのですか?

2012年6月期 株主通信:P2より引用)

宍倉:
お客様である企業の課題を解決する、その「入り口」となるのがアナリティクス事業(AS事業)です。
企業様がお持ちの様々なデータ -消費者の購買状況や、ウェブサイトのログ(履歴)など、主にマーケティング分野のデータ-を分析し、業務のご支援や改善のご提案をすることで支援がスタートします。

その分析とご提案の結果にもとづいて、まずはワンサイクル、お客様企業でテストマーケティングを実施していただく。
その結果、当社のご提案によって収益が改善した、すごく効果があったということになれば、「もう少し長く支援して欲しい」とのご要望をいただき、定期的に施策の提案や分析レポートをお出しする契約へと発展する――たとえばそんな展開があります。

アナリティクス事業では、当社がデータを分析しますが、お客様企業が「自分で分析したい」といったご要望や、「手元で分析できる、データが見られるような環境を作ってほしい」というオーダーをいただく場合もあります。
その時は、ソリューション事業(SOL事業)――これは当社が海外で目利きしたデータ分析用パッケージ製品の販売、つまり、これを活用してお客様の社内にマーケティングシステムを構築するシステムインテグレーションなのですが――で、そういったマーケティングのプラットフォームを構築する形でのご支援をいたします。

―― ではASP関連事業は?

宍倉:
これはマーケティング活動における「出口」の部分です。
ASP関連事業(ASP事業)は、マーケティングデータの分析結果を活かした施策の実行――たとえばある層の顧客層に指定したタイミングでメールを送ったり、ECサイトで商品をおすすめ(レコメンド)したり――といった、エンドのお客様(消費者)にアプローチする部分を自動化するサービスです。

―― なるほど。具体的にはどのような製品をお持ちなのですか?

宍倉:
たとえば、レコメンデーションシステムがあります。
最近ではスマートフォンの利用が増えていますので、消費者(顧客)が今検索しておられるものや、今おられる場所に合わせて、その場でレコメンドやオファーをするという、リアルタイム性がかなり要求されるようになっています。
そういった場面でも、当社のデータ分析やデータマイニングは効果を発揮します。

「人」が分析する場合、分析結果をもとに施策を考えて、その施策に沿ったWebのシステムを組み込む、そういった進め方になります。
それではどんなに急いでも一週間や二週間はすぐかかってしまい、やっとシステムができた時にはすでに旬の時期を逃してしまう、そんな状況になってしまうんですね。

その点、当社が持っているデータ分析の高度な技術を使えば、即座に計算して、リアルタイムでレコメンドできる、つまり、消費者(顧客)が興味を持っているその時に、オファーをすることが可能になるのです。

 

ASP事業の主要製品 (クリックするとサービスページにリンク)
SOL事業の主要製品 (クリックするとサービスページにリンク)

Q2: 御社の強み、他社との違いはどこにあるのでしょうか?

―― 事業内容についてはわかってきました。次に、御社の競合についてお伺いしたいと思います。
最近では特にビックデータのキーワードで、大手ITベンダーさんが大きく広告宣伝をされていますが、ああいった企業さんが御社の競合になるのでしょうか?

宍倉:
競合というよりは、どちらかと言えば「一緒に提案しませんか」という協業のご相談を受けるほうが多いと思います。

大手システムベンダーさんは、大きなシステムを導入するとか、データを高速に処理する、あるいは集めるといった技術力や仕組みは当然ながら非常に優れたものをお持ちです。
ただ、ビッグデータで難しいのは「有効なデータだけを、どう見つけ出すか」という技術で、そこは――少なくとも今のところは、統計とか数学の知識がある人(データサイエンティスト)がデータ全体を俯瞰して、「この辺がいいんじゃないか」というところをピックアップする、その能力が非常に重要になります。

我々はその部分に、創業来9年間の知見がありますので、システムベンダーさんからは「一緒にやってもらえませんか?」とお話を頂いたり、我々の持っているソリューション製品にご興味をお持ちいただいて、「お客様にCRMシステム提案したいんだけど、このツールを使えませんか?」といったご相談をいただいたりすることが、最近は結構多いです。

その意味では、大手ITベンダーさんは、競合というより補完し合うというポジションだと思っています。

―― 投資家としてはどうしても「競合他社と比較」をするものなのですが、御社の場合、そういう相手は、特段いないというということになりますかね?

宍倉:
そうですね…、当社より若干小規模のところはいくつかあるのですが、少なくとも、上場していてデータ分析、マーケティング全般で、というところでいうと、当社以外にはないと思います。
比較しにくいが故に、投資家さんにとってわかりにくいというところは確かにありまして、そこは悩ましいのですが。

Q3: 事業環境とその対応は?また、それに対応する成長戦略は?

―― ビッグデータというキーワードは聞く機会が本当に多くて、成長市場であろうとの期待を持っておられる投資家も多いと思うのですが、実際のところ、どのぐらいの規模の市場で今後はどの程度成長していくと見ることができるのでしょうか?

宍倉:
ビッグデータビジネスの規模は2013年度でだいたい2,000億ぐらい、3年後か5年後には4,000~5,000億ぐらいになるという予測があります。
この数値の中にはいわゆるハコ代、つまりシステムの金額も入っていますので読めないところはありますが、この市場の中でどのくらいのシェアを取っていけるかが我々のビジネスの分岐点になるのは間違いないですね。

当社の場合、今のところ明確な競合はありませんし、色々な会社さんと連携を組むことが可能な事業形態ですので、市場の成長に合わせて伸びていく可能性、ポテンシャルはかなりあると思っております。

編集室注:

ビッグデータ市場のポテンシャルの大きさを表す資料としては、たとえば下記があります。

■ビッグデータ市場に関する調査結果2012(矢野経済研究所調べ)
http://www.yano.co.jp/press/press.php/000931

■世界のビッグデータの分析は未だ1%未満(EMCジャパン調べ)
http://japan.emc.com/about/news/press/japan/2012/20121212-1.htm

■アメリカでも2018年にはデータ・アナリストが14~19万人不足
(出典:Harvard Business Review 2013年2月号)

―― ありがとうございます。
ところで、おそらくこの事業環境とも関連するのだと思うのですが、本日是非、お伺いしておきたかったのは、売上構成の組み換えについてです。
割合で見るとアナリティクス事業がかなり縮小していくように見えるのですが、このあたり、何故こういった方向性をとられるのかなど、今の状況を含めてお話をお伺いできればと思います。

2013年6月期 第2四半期 決算説明会資料:P10より引用)

宍倉:
当社のデータ分析ビジネス自体は、競合がまだいないということもあり、今後もある程度、高付加価値なサービスであり続けると思っています。 ただ、アナリティクス事業(AS事業)の人的なサービス――これはもちろん当社の強みなのですが、一方で、労働集約的な側面も有り、売上を倍にしたければ人も倍の人数を雇用しなければならないという構造を持っています。
景気や需要の変動もある中でどこまで人を抱えていくべきか、また収益率をどう上げていくかという課題があります。

これらの課題をどう解決するかという時に、先ほどソリューション事業(SOL事業)のところで申し上げましたように、人ではなくツールで支援するというところへと切り替えていく、汎用的なマーケティング施策はASPサービスなどに組み立てていく――つまり、今までに積み上げてきた経験、ナレッジ(Knowledge)をサービスに変えていく、そういったサイクルを回していくことが重要になると考えています。

相対的にAS事業の割合を減らしていきながら、SOL事業のシステムでストックの収益を稼いでいく、そういったビジネスモデルへと徐々に転換していきたい。経営的に云えば、安定的に収益を伸ばすような構造を造っていきたいと考えておりますので、見え方としては、AS事業が相対的に減っているような形になります。

―― SOL事業とASP事業はストックとしての性格が強いということなのですね。

宍倉:
SOL事業は、ライセンス製品の販売から入りますので、フローの収益と言いますか、スポットで入る収益もあります。
その後はシステム保守とか、サポートの部分がストックになりますので、これはじわじわ積み上がっていくという構造ですね。

SOL事業構造

(クリックして画像を拡大 2013年6月期 第2四半期 決算説明会資料:P23より引用)

―― SOL事業では、すでに3分の1ぐらいがストック売上になっているのですね。
売上全体でいっても、ASPと合わせると全体の4割近くがストック売上になっています。
今後もストックのものを増やしていく。ストックを増やすというのは、売上の安定ということもありますけども、利益率を高めるという目的のほうが強いのでしょうか。

宍倉:
利益率ですね。

―― AS事業自体の収益率を高めるという意味では、どのような取り組みをされるのですか?

宍倉:
細々した作業的な部分のさらなる効率化をSOL事業やASP事業へと転換していくことで、AS事業はもっと高度な課題に向かって行くことができます。
その結果、短期的にお客さんから頂けるフィーが高くなるということと、高度な課題に注力し、解決していくことで、R&Dではないですが技術力が高まる、それが競合との差別化になっていく、そういったところも目指しています。

―― お客様企業から持ち込まれる課題の中で、御社の中に既にある程度の答えがあるようなものは、どんどんシステムに。ある程度答えがあってもシステムになっていないものは、大連(ブレインパッド大連)に、といった方向性でしょうか。

宍倉:
大連はまだ、規模としては非常に小さいです。コモディティ化した分析サービスの一部を大連のほうにシフトすることで、本社側のリソースを高度な方に振り替えていくといった取り組みを行なっています。

(クリックして画像を拡大 2013年6月期 第2四半期 決算説明会資料:P13より引用)

Q4: 今後の成長を見据えて取り組んでいることは?

―― ではここで、もう少し中長期的な視点で、今後の成長に向けた取り組み、あるいは今後どういった市場で成長していくのか、というあたりをおうかがいしたいのですが。

宍倉:
おかげ様で当社は、マーケティングデータのアナリティクスにおいては先進的な様々な事例やお客様の課題について把握することができています。

ただ、今後はこれまでお付き合いがなかったような会社様の課題を発見して、今何が起こっているかという新しい知見を貯めていくこともリーディングカンパニーとして必要なアクションだと思っておりますので、今はマーケティング以外の領域にデータ分析の仕事を広げていく――たとえば、センシングデータやテレマティクス*といった新しい領域に広げていくというところに目線が向いております。

(*)テレマティクス (Telematics) :テレコミュニケーション(Telecommunication=通信)とインフォマティクス(Informatics=情報工学)から作られた造語で、自動車などの移動体に携帯電話などの移動体通信システムを利用してサービスを提供することの総称。

センシングデータと一口に言っても非常に定義が広いのですが、たとえば、将来的にはという話ですが、スマートフォンのような移動する機器(移動体)のデータや、車両や交通インフラから発信される情報には注目していますね。

テレマティクスでは、エコドライブとか、危険運転を予測するといったところに何かデータ分析の技術を使えないか、と。

あとは、今政府が進めている、いわゆるオープンデータ活用みたいなところにも何か関わっていけないかなと考えています。

―― いわゆる「オープンガバメント」(*)とはまた違うのでしょうか?

(*)オープンガバメント:政府や自治体において、積極的な情報公開を行い、開かれた行政を実現するための政策や活動の総称。オープンデータとは行政の公開情報のこと。

宍倉:
いえ、それに近いですね。要は政府統計データをどういう風に利活用するか、みたいなテーマのところでお話をいただいていることもあるので、そこから新たなビジネスを創出できないかなぁとは思っています。

あとは医療系などの専門分野ですね。金融や医療系の分野にはそれ専門のスペシャリストの会社さんがありまして、なかなか新規の我々ベンチャーが参入するというのはハードルが高いところはあるのですが、リアルな医療データを活用してヘルスケア、予防医療といったところで世の中に貢献できたらとも考えています。

―― すでにあるカルテなどのデータではなくて、これから生まれてくるデータをつかんでいく、といったイメージでしょうか?
たとえば健康ログ、ライフログのようなものを今後皆さんが持たれて、そのデータを使っていくとか?

宍倉:
そうですね。ここで既存の領域のところにいくと、やっぱりデータをお預かりするサービスになってしまいますので、当社の自社サービス「ReceReco」のように、我々が直接データを持てる新規領域を探していきたいな、と思っております。

―― なるほど、とすると、ReceRecoについてもそのあたりに進出の狙いがあると?

宍倉:
そうですね、将来的には、蓄積したデータをビジネスに活かすことも考えています。

公式Facebook: https://www.facebook.com/receipt.recorder

Q5: 個人向けIRの方針および個人投資家へのメッセージをお話し下さい。

―― それでは最後に、個人投資家へのメッセージをおうかがいしたいと思います。

宍倉:
当社は去年初めて上場後の株主総会を開催したような状況ですので、まだ明確な方針というのはないのですが、長く投資家さんとお付き合いできる関係をつくるのが一番いいと思っておりますので、我々がどんなところ、どんなビジネスをやっているかというのはもちろんですが、これに加えて、人と技術をお伝えする努力をしていきたいですね。

(創業者・現代表の)草野がどういう想いでこの会社を作ったとか、草野の人柄をアピールしたいということと、働いているメンバーやその技術力、どういった技術を持っている会社なのか、そういったこともお伝えしていければと思います。

ビックデータビジネスの中でも突出した分析力・人材力を有する企業だと自負しておりますので、今後もその最前線を走りつづけていきたいと思います。

―― 本日はありがとうございました!