前編:グレーゾーンの開拓でライブ市場のさらなる拡大を目指す

中編:バリューチェーンの内製化は「攻め」と「守り」両面の施策

後編:守りを固めつつ、新たな挑戦も続けていく

海外市場では、時間をかけて着実に地歩を固めてきた

―― 新たな挑戦の話が出たところで、新規市場開拓の進捗についてもお聞きしたいと思います。海外での事業は伸びていますか?

宮腰:
利益面ではまだまだですが、いくつかの成果はあがっています。
例えば、台湾では、東京で開催されていた「新海誠展」を2017年12月22日から台北市で開催します。また、来年1月にはONE OK ROCKの野外ライブ(日本人が海外で実施する単独イベントとしては過去最大の2万人規模で、チケットも即日完売)も開催します。これらはこれまで時間をかけて現地で実績を積み上げてきたからこそ実現できたことで、大きな意味があると考えています。

写真2:新海誠展
写真2:新海誠展
写真3:ONE OK ROCK
写真3:ONE OK ROCK

(出典:2018年3月期 第2四半期 決算説明会資料)

―― やはり、日本のコンテンツを海外に持っていくという形が多いのでしょうか?

宮腰:
いえ、それだけではありません。海外での取り組みの方向性には、①日本のアーティスト/コンテンツを海外で売る「アウトバウンド」、②海外のアーティスト/コンテンツを日本に持ってくる、あるいは出資する「インバウンド」、③海外のアーティスト/コンテンツを海外で売る「アウト-アウト」の3つの方向性があります。

―― ②ではブロードウェイへの投資があると、以前お聞きしました。③のアウト-アウトにはどのような事例がありますか?

宮腰:
台湾では、慢慢説(マンマンシュオー)など台湾のアーティストのマネージメントをしていますし、米国でも同様の事例を作ろうとしています。シンガポールではAFA(アニメフェスティバルアジア)の座組みに入ることができました。

―― 海外市場に挑み続ける理由をお聞かせください。日本への観光客が増加する中、インバウンドに力を入れるという方法もあるのでは?

宮腰:
確かに、(イベントなどは)日本国内で開催するものに、インバウンドでお客さんを呼んでくる方法もあると思います。現に当社もノンバーバルのコンテンツであるフエルサ ブルータ「WA!!」では、東京ワンピースタワーで培ってきたインバウンド対応のノウハウを生かしています。

リンク:フエルサ ブルータ「WA!!」公式ホームページ

しかし、長期的に見れば人口減にともなう国内市場の縮小が想定される中、アミューズが持続的な成長を実現するためには、海外市場への進出を考えるのはごく自然なことです。そして、その選択肢を本当に考えるならば、まずは(市場に)出てみなければなりません。
アミューズはこれまで、時間をかけて海外に取り組んできました。だからこそ今、個々には成立しているビジネスがいくつか出てきている。これらをなんとかつないで、将来のマーケットへと育てていきたいですね。

今後も4つの成長戦略を推進していく

―― 「4つの成長戦略」のうち、特に②プロダクツの拡充、③バリューチェーンの内製化、④新規市場の開拓に関するこれまでの成果をどのように評価していますか?

宮腰:
売上ベースで見れば、自社アーティストだけに依存しないビジネスや新規事業の割合は確実に増えつつあります。これは、ボラティリティが高い当社のビジネスモデルの弱点を補うもので、ひとつの望ましい成果と考えています。

一方、新たに手がけた分野については、総じて利益率はまだあまり高くはありませんので、全体で見るとどうしても利益を薄めてしまうところはあります。本日ご説明したバリューチェーンの内製化でも、事業自体が相対的には必ずしも利益率が高くないところまで手を伸ばすことになりますので、連結ベースの利益率は、今のままでやっていくとおそらく、下がっていくことも考えられます。

しかし当社としては、アーティストの生み出したプロダクツから生まれるキャッシュを内製化で実額として取り込めることには、こうした点を補って余りあるメリットがあると考えていますので、この(成長戦略の)方向自体に変化はありません。今後はイベントの利益率向上やグッズの在庫リスクを低減するなど、既存事業の利益率向上に努めながら、これら成長戦略を引き続き推進していきます。もちろん、アミューズの生命線である「①ポートフォリオの拡充」にも引き続き注力していきます。

―― 成長戦略を支えるコーポレート・ガバナンス体制はどのようになっていますか?

宮腰:
アミューズの取締役会は現在、常勤取締役5名、社外取締役2名から構成されています。常勤役員5名のうち2名――副会長の柴と常務の齊藤は他社・他業界での経験が豊富な、外部から招聘した人材です。つまり、当社では意思決定に参画する5名のうち2名はアミューズの内部的なものの考え方にとらわれない人物となっています。

―― 取締役会では実質的な議論がなされていますか?

宮腰:
投資家の方々からよくその質問をいただくのですが、正直に言えば「そこまで言わなくてもいいのに」と思ってしまうぐらい(笑)、率直な話をしていますよ。特に社外取締役・社外監査役の発言は大変活発です。社外取締役から質問があれば常勤取締役も回答せざるを得ませんから、かなり緊張感がある会議になっていると思います。

―― 社外取締役のお二方はそれぞれどのような観点から発言されることが多いのですか?

宮腰:
増田さんはエンターテインメント業界を熟知しておられるのはもちろん、経営者としても、豊富なロケーションビジネスの実績やMBOをして事業に集中するといった大きな変化の経験をお持ちです。お話の中では、特に「判断」――たとえば、どういったタイミングでジャッジして事業から撤退するべきなのかといったことについて示唆をいただいていますね。社内からはこういった話はなかなか出て来にくいですから、増田さんとしてもおそらくそこは非常に意識してご発言いただいていると感じます。

安藤さんはエンターテインメント業界のご経験はないですが、他業界の社外取締役もされていますので、逆に通常の目線で非常に率直なご指摘をいただくことが多いです。ボラティリティが高い当社の事業構造についても、当たり前のことと整理するのではなく、やはりそこはなんとかしていかなくてはいけないといったご意見を取締役会の場で忌憚なくおっしゃっていただけるのは、非常に良いことだと思います。

―― 本日はありがとうございました!