前編:グレーゾーンの開拓でライブ市場のさらなる拡大を目指す

中編:バリューチェーンの内製化は「攻め」と「守り」両面の施策

後編:守りを固めつつ、新たな挑戦も続けていく

チケット機能の内製化でバリューチェーン完成に王手をかけた

―― アミューズは今後の成長戦略として、①ポートフォリオの拡充、②プロダクツの拡充、③バリューチェーンの内製化、④新規市場の開拓を掲げています(図表1)。
2017年には、株式会社テイパーズとの資本業務提携と合弁会社設立、「LINE TICKET株式会社」の設立など、特に「③バリューチェーンの内製化」に関して大きな進展がありました。このねらいについてお聞かせください。

宮腰:
アミューズのビジネスの基本は、アーティストを発掘・育成し、彼らの生み出すコンテンツを有効活用していくことです。そして収益の柱となるのがイベント(ライブ・舞台等)ですので、バリューチェーンの内製化によってイベントから生まれる収益をどれだけ最大化できるか、リスクをいかにして最小化できるかは当社にとっての最重要課題です。

図表1:今後の成長戦略
図表1:今後の成長戦略

(出典:2018年3月期 第2四半期 決算説明会資料)

イベントには2種類のバリューチェーンがあります。ひとつは、イベントをつくるバリューチェーン。そしてもうひとつはイベントのチケットを売るバリューチェーン、すなわちユーザーへのリーチの部分です。当社では、チケット発券を、ポータル機能を含め自社グループですべてサービス提供できるようにすることが後者のバリューチェーンの完成形と考えています。そして、テイパーズへの出資と合弁会社設立、そしてLINE TICKETの設立は、その実現に向けた重要な一手です。

―― テイパーズはもともとアミューズのチケット機能を担ってきた企業ですよね。

宮腰:
はい。従来から当社の「アミュモバチケット」等ではテイパーズのシステムを使うケースがあります。

―― テイパーズのチケットソリューションはどのような点が特に優れているのですか?

宮腰:
テイパーズはいわゆるプレイガイドが持っている機能のうちポータル機能以外のすべて――販売業務の受付から抽選、入金管理、座席配券、オリジナルチケット制作から発送までのすべてを自社で提供できる企業です。近年増えつつあるチケットの当日発券システムもすべて自社で開発しています。さらに、警察庁や空港でのセキュリティチェックにも使われている高精度の顔認証システムを、エンターテインメントの大規模イベントで運用している企業でもあります。

―― 顔認証はなぜ必要なのでしょうか。

宮腰:
顔認証システムを導入すれば、当日会場に入れるのは本人だけですので、不正転売の防止につながります。

―― 不正転売の防止の重要性はわかります。ですが、何らかの事情があって行けなくなったイベントのチケットを人に譲ることができないのは、ユーザーにとっては不便なのでは?

宮腰:
実はそれこそが、LINE TICKETが今後構築する電子チケットシステムで解決できる部分だと考えているのです。公演に行けなくなってしまった人も、チケットを購入したい人もLINEのプラットフォームを使って正当な価格でのチケット売買ができる。つまり、不正転売を防止しつつユーザーの利便性を高められるのがLINEチケット*注の大きな特長となっています。
注:「LINEチケット」→「LINE TICKET株式会社」が提供予定の電子チケットサービスの総称。

―― LINE TICKETが開発する電子チケットサービスの優位性はどこにあると考えますか?

宮腰:
LINE TICKETは、国内最大のポータル機能を持っているLINEと、コンテンツを持っているアミューズ、エンジン、バンダイナムコライブクリエイティブとの座組みに特徴があります。そこに、チケットソリューション機能を持つテイパーズも加わってサービスを開発していくことで、業界全体にとっても最高・最良の電子チケットサービスができるものと期待しています。

電子チケットはイベント参加へのハードルを劇的に下げる

―― 不正転売防止の他に、LINE TICKETが利用者に提供できるメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

宮腰:
座席確保と決済、そしてチケットのデリバリー(=受け渡し)までが即時に完結することにより、イベント開始直前までチケット購入が可能になる事や、LINEのプッシュ機能等により、情報を探し回る必要がないことですね。私たちは、これらの機能がエンターテインメントの市場を大きく広げる決め手になると考えています。

―― それはなぜですか?

宮腰:
たとえばサザン(オールスターズ)や福山(雅治)の公演なら、ファンの方々は万難を排してチケットを取ってくださるでしょう。しかし、それ以外のライブやイベントに足を運んでいただくためには、いかにしてハードルを下げるかがとても重要だと考えています。
探し回らなければ公演の情報が得られないという時点で、たいていの人はあきらめてしまいます。でも、LINEチケットなら自分から探さなくても情報が届き、ワンクリックで決済も座席確保もチケット入手もできる。それならば足を運んでもいいかな、となる可能性は一気に高まります。

―― LINEチケットを活用すれば小規模なイベントにも人を呼びやすくなりそうですね。

宮腰:
はい。そしてそれはコンサートや舞台に限りません。たとえばアマチュアスポーツには試合の情報がまとまって見られる場所がなく、集客に苦労しているものが多くありますので、LINE TICKETがお役に立てる可能性があると思います。実際、リリース発表後にスポーツ関係の方々からはすでに色々と問い合わせをいただいていると聞いています。

―― ライブ市場は現在も成長していますが、LINE TICKETが軌道に乗ればこれまで以上の伸びが期待できると見ておられるのですね。

宮腰:
伸びしろは大きいと思います。「公演の情報を知らなかった」とか「チケットを買うのが面倒だ」といったことがハードルとなって市場の成長が妨げられている部分はすごく大きい。だからこそ、その課題を解決する即時発券、即時決済、即時デリバリーの電子チケットサービスは、人々の生活を豊かにし、市場の「グレーゾーン」を開拓する有力なツールとなるはずですし、そういったものを作りたいというのがLINE TICKETに私たちが賭けている思いなのです。

中編「バリューチェーンの内製化は「攻め」と「守り」両面の施策」へ続く