本日のインタビューは、株式会社アミューズ(証券コード:4301)です。
サザンオールスターズ、福山雅治、ポルノグラフィティ、Perfume、岸谷五朗、深津絵里、上野樹里、佐藤健など、アミューズ所属のアーティストをよく目にしますが、上場企業として、投資対象として同社を見る機会はあまり多くないのではないでしょうか?

アーティストのマネージメントを行い、かつ上場している会社は、数えるほどしかありません。その1社である株式会社アミューズは、現在の事業環境をどのようにとらえ、今後、どのように成長していこうと考えているのでしょうか。IR担当執行役員の宮腰さんにお話をうかがいました。

株式会社アミューズの全体像は「3分でわかる株式会社アミューズ」をご覧ください。

前編:「インフラ力」でアーティストに選ばれる存在へ

―― 今後の事業環境変化を踏まえた、アミューズの成長戦略を教えてください。

宮腰:
日本国内の既存市場で今後も成長を続けるためには、収益の柱となるアーティストを持続的に育成し、増やしていくことが不可欠です。そして、その実現のためにはアミューズの「インフラ力」を一層高めていくことが大事だと私たちは考えています。

―― インフラ力とは、具体的にはどのようなものを指すのでしょうか?

宮腰:
2つの要素があると考えています。
ひとつは、どのようにアーティストを育成すれば商業的に成功するかを企画し、彼らの成長に必要なより質が高い環境をいち早く提供する力。
そしてもうひとつは、アーティストとの綿密なコミュニケーションです。

―― 前者は芸能プロダクションならではの機能ですね。

宮腰:
はい。我々の付加価値は、アーティストが自分達だけでは作れない、成立し得ないものを作ってあげられるところにこそあるわけですから。アーティストという素材を、今ある才能だけに着目するのではなく、将来育った時にどの辺でより可能性が高くなるだろうかといったことを計りながら育成していきます。

―― 近年ではアーティストの活躍の場や方向性が多様化しているだけに、「こうすれば商業的に成功する」という法則を見つけるのは難しいのではありませんか?

宮腰:
その通りです。でも、だからこそそこがアミューズの強みのひとつになり得るのです。

アミューズにはサザンオールスターズもいれば、Perfumeもいる。福山のように音楽も役者もやっているアーティストもいる。役者陣も、それぞれキャラクターが全く違う。そういった様々な事例や、我々が持っているノウハウの蓄積、音楽と役者それぞれの業界での人脈を活用することで、ヒットの確率をそれなりに持った形でアーティストを育てることができると自負しています。

最近の育成・成功事例のひとつにBABYMETALがあります。国内では今年(2014年)3月に単独武道館ライブを開催したばかりなのですが、YouTubeを通じて欧米で人気が出ています。英国やカナダのメタルロックの祭典ではメインステージに出演し、7月にはレディ・ガガのアメリカ公演サポートアクトのオファーをいただき、出演いたしました。米国ではiTunesの海外のアルバムチャートで1位もとっています。

―― BABYMETALはどのようなコンセプトで育成したのですか?

宮腰:
「アイドルとメタルの融合」です。彼女達はもともとアミューズのキッズ事業室出身でさくら学院という「成長期限定!!」ユニットで活動していたのですが、彼女たちのアイドル性とヘヴィメタルを組み合わせたら面白いのでは、ということで結成しました。

―― YouTube公式チャンネルでいくつか視聴してみましたが、「男っぽさ」が強いヘヴィメタルのイメージとはまったく違うのですね。

宮腰:
はい。パフォーマンスもそうですが、メンバーの3名はボーカルとダンスだけに特化して自分達で演奏はしない、楽曲も作らないなど、BABYMETALはヘヴィメタルの世界においては異例づくしの存在です。

ヘヴィメタルは伝統を重んじる「様式美」の世界観もありますが、BABYMETALについてはそもそもこれをメタルと認めて良いのか、ということから始まって、ものすごく論争がありました。YouTubeのコメント欄はもちろんですが、ヘヴィメタルやロックを専門に扱う海外の著名な雑誌などでも特集を組まれたことがあるんですよ。

―― それで、海外の評価はどういったところに落ち着いたのですか?

宮腰:
議論はまだ続いているようですが「日本のプロダクションが考えた一つのエンターテイメントの形であり、最も保守的なヘヴィメタルとアイドルという異質なものを妥協無く、徹底した形で融合させている」と。かなり好意的に評価していただいているものも見られます。

このコメントにあるように、エンターテインメントとしての作り込みのクオリティの高さが評価を決めたと思っています。演奏は精鋭が担っていますし、メンバーのダンスはPerfumeの振付師を付けて徹底的に磨きました。

それらの大部分は、アミューズだからこそ用意できた環境だと思っています。企画の面白さだけではなく、その企画に合わせた最良の環境を用意し徹底させた結果、エンターテインメントとしてきっちり成立している。だからこそ評価され、これも新たな形のひとつとして受け入れてもらえたのだと思います。

―― なるほど。ではインフラ力を構成するもうひとつの要素、「コミュニケーション」についてもご説明いただけますか?

宮腰:
アーティストとの綿密なコミュニケーションが必要になってくる内容は活動の方向性についてですね。

アーティストの活動内容は、我々プロダクションだけの意見で決まるものではありません。だからこそ、本人達がどういうことをやっていきたいのかをしっかりと汲みとりつつ、商業的にも成立し彼らの志も成し遂げるためにはどういう選択肢があるのか、といったことをコミュニケーションの中でぐっと練っていくわけです。

たとえばONE OK ROCKはこの秋に中南米とヨーロッパをツアーで回りますが、それはものすごく細かく色々な都市をまわってライブをやるという内容で、海外のバンドと同じ形です。日本国内より、ライブ環境はかなり厳しいですが、本人達も相当な覚悟でやっているし、その志が高いからこそチャレンジできるのだと思います。アミューズとしてはそれをプロデュースし、サポートしていくのです。

アーティストとのコミュニケーションが大事になる場面はもうひとつ、収益の配分です。

彼らが十分に納得する形で、ただしアーティストが稼いだ収益の中にはアミューズというインフラがあればこそ成立した部分もあるので、我々はその部分の収益をちゃんとシェアしつつ、お互いの意見を尊重し合い、Win-Winでやっていく。その信頼関係をちゃんと作っていかなければ10年、20年、30年といった長い関係は成立しないと思います。

―― そういえば、アーティストの在籍期間の長さはアミューズの強みのひとつでしたね。

宮腰:
サザンオールスターズや福山雅治があれだけ大きなアーティストになってもアミューズから独立するという話にはならないのは、コミュニケーションがうまくいっているからだと見てくれている人は多いですし、アミューズに所属する意味もそういった中で伝わっていると思います。我々としても実際にアーティストとの間にWin-Winの信頼関係を築けているからこそ、長く所属してくれているのだろうと思っています。

―― アーティストの育成を企画し、プロデュースする力。そしてアーティストとの綿密なコミュニケーション。これらをさらに磨いていくことが、インフラとしてのアミューズの力を高め、アーティストをさらに育てることができると。

宮腰:
はい。最近では、アーティスト「SEKAI NO OWARI」のマネージメント会社とともに「(株)TOKYO FANTASY」という連結子会社を設立し、「SEKAI NO OWARI」のマネージメントを開始致しました(プレスリリース)。

こういったケースがそう頻繁にあるわけではありませんが、我々が育てたアーティストだけではなく、他のアーティストに対して、アミューズの幅広いバリューチェーン(アーティスト周辺事業の内製化、海外拠点の展開等)を提供することも、ビジネスとして成立する可能性があるという事を予感させる意味では、今回のケースは非常に象徴的だったと思います。

中編「海外展開 ~ソーシャルメディア時代の新たな可能性~」へ続く