上場企業のCSR・IRご担当者を陰で支える存在であるCSRコンサルタント、株式会社サステナビリティ会計事務所の代表・福島隆史さんのインタビュー記事をお届けします。

保証(アシュアランス)は、費用対効果の見極めが重要

―― 統合報告書やCSR報告書に、最近では第三者保証をつける企業も増えていますね。
これはなぜなのでしょうか?

福島:
DJSI、FTSE4Goodなどの社会的責任投資インデックスや、CDP(Carbon Disclosure Project)、日経の環境経営度調査などの評価において問われている項目のひとつだから、という理由で保証をつける企業様が増えていると思います。

―― 保証の対象となっているのは、どのような情報なのでしょうか?

福島:
第三者機関(監査法人など)による保証には、レポートに開示されている非財務情報の全てを対象としているものもありますが、DJSI、FTSE4Goodなどの評価機関が評価の対象としているのは、今のところCO2の排出量や削減量に限定されています。

―― それは、国内外いずれの評価機関でも、ですか?

福島:
はい、国内外いずれの評価機関でも、現状はそういった状況です。
もちろんこれから水の重要性が高まってくれば、水に関する開示データについて、第三者保証を受けていますか?といった問いかけも出てくるうように思いますが。

―― 意外に範囲が狭いのですね・・・

福島:
そうですね。今はまだ評価機関としても、第三者保証に関しては行為自体を評価しているんですね。情報の正確性云々よりも、第三者保証を受けることを通じて情報の信頼性向上を図っていこうという姿勢自体が、評価・加点の対象になっています。

海外の基準に応えることの意味は

―― 外部評価機関の話が出たところでおうかがいしたいのですが、Dow Jones Sustainability Indices(DJSI)やFTSE 4 Goodといった外部評価の向上は、CSR担当者様の関心が高いところだと思います。
ただ一方で、色々な評価軸を突き付けられてとまどってしまうという声も聞かれます。これら外部評価機関――特に、海外の外部評価機関には、どのように対応していけば良いのでしょうか。

福島:
当然ながら、「評価機関が言っていることをすべて受け入れ、何もかもその通りにしなければならない」ということではありません。ただ日本企業の場合、国内では非常に高い評価を得ている企業でも、ダウジョーンズの評価などでは非常に悪いといったケースがよくあって。

そもそも、ダウジョーンズが聞いてくる内容は、GRIガイドラインに要請されているところとかなり近いんです。そして、GRIガイドラインに書いてあることは、それは広く世界全体から集まった人たちによって創り上げられたものである。つまり、日本以外の国からの目線で見た時に、こういうことができていることをもって「CSRができている」とみなす、その着眼点が質問内容にそこかしこに表れているということです。

その内容を盲目的に受け入れる必要はないにせよ、少なくとも、それにまったく答えられないということは、海外から見た「企業集団としてこうあるってほしい」という期待に応えられていないということと受け止めていいかもしれず、そのことは自覚しておいていいことと思いますし、企業として海外にもっと出ていきたい、事業としてグローバル展開していきたいと思うのならば、そういった要求をちゃんと受け止め、それを満たせるだけの体制なりをつくっていったほうがいいと思うのです。

そして、その外部の目と社内をつなぐ役割を果たせるのはCSR担当者しかないと、僕は思っています。

そうは言っても、たとえば役員層から「国内での評価が良ければダウジョーンズなんか気にしなくていい」と言われてしまった時に「そうじゃない」と跳ね返すのは非常に難しい。そんなCSR担当者さんのお困りごとを一緒に解決していくのが私達SusAです。
担当者さんと二人三脚で、それこそ企業内の各部門の担当者さんとの折衝から、役員の方々にご理解いただくためのセミナーや研修まで、きめ細かくご一緒していきます。

GRI G4を取り入れる時に注意すべきこととは

―― 海外の評価機関の話に続いて、海外のガイドラインについてもお話をうかがいたいと思います。直近では、2013年の5月にサステナビリティ・レポーティング・ガイドライン(GRIガイドライン)の第4版(G4ガイドライン)が発行されましたが、その特長はどのようなところにあるのでしょうか?

福島:
GRI G4の最大の特徴は、「マテリアリティ」です。総花的な開示を求めなくなったのは良いのですが、問題は、そのマテリアリティの定め方です。そこには46の「アスペクト」がテンプレートとして示されていて、その46の中から、どれが自分の会社にとって、ステークホルダーのニーズとして重要かを選び出して、それを宣言した上で取り組みを開示しましょうということになっています。

46のテンプレートが用意されたということは「選ばなかった」アスペクトをどう説明するかを考えないといけなくなってしまった。僕はそう思っています。

そもそも従来、企業がどうやってマテリアリティを決めていたかというと、うちの会社としてはやっぱりCO2ぐらい言っておこうかな、とか、あるいは女性管理職比率はやはりあげないと同業他社の手前もあるしな、ぐらいのことだったんですね。でも、そうやって決めていたマテリアリティと、アスペクトというテンプレートが用意された後の「選択」という行為は、僕は、全然次元が違ってきてしまうと思っていて。

―― アスペクトの登場によって、そこは大きく変わってしまったと。

福島:
変わったと思いますね。ここは、企業がG4に準拠する時の大きな障壁になると僕は思っていますし、GRIサイドもやりすぎたんじゃないかなと思っています。
任意開示が基本のサステナビリティレポートの世界において、こんなテンプレートを用意して、わかりやすくなったでしょ、だから使ってくださいねというのは、結局違う方向にいってしまうんじゃないかな、と懸念しています。

こういった「肌感覚」みたいなことは、GRI G4に関する文書のどこにも書いていないし、たぶん他のコンサルさんは言っていないことかもしれません。

でもこの感覚、これまでの経験上、自分としては信じているんです。海外がこう言っているから、こうしているから取り入れるべき、ではなく、今までの経験を総動員して考えたらこの部分はおかしいとか、これはやるべきとか。それはやれると思うとか、やらないで過ごすべきだとか、そんなことをお伝えできるのも、大手監査法人時代からずーっとこの世界に関わってきている、僕たちの特長かなと思っています。

―― 本日はありがとうございました!