上場企業のCSR・IRご担当者を陰で支える存在であるCSRコンサルタント、株式会社サステナビリティ会計事務所の代表・福島隆史さんのインタビュー記事をお届けします。

アニュアルレポートとCSRレポートの合冊はやめたほうがいい

―― CSR分野の顕著なトレンドのひとつに、統合報告書の増加があります。
これについてはどう考えておられますか?

福島:
僕は統合報告に関する考えかたは結構はっきりしているつもりで。まず冊子としての統合というのは本来的にはやらないほうがいいと思っています。明確に言います。合冊はよくない。

―― そうはいっても日本では今、合冊版が増えていますよね。

福島:
そのほうがトップ層のウケがいいですからね。(アニュアルレポートとCSRレポートを両方作っていた場合に比べて)チェックが一度で済むし、制作費も(2冊作る場合に比べて)安くつく。そういう意味において統合報告というのはものすごく進んでいますし、これからも進むと思います。

ただ、報告である限りは必ず(その情報の)受け手が存在するわけで。
受け手からしてみれば、「何でもかんでも放り込みました」みたいな報告書を見せられて良いわけはないんですね。 財務を見たい読者がいたり、環境のことを知りたい読者がいたり。そこにはセグメント化された、分けられた読者がいるわけだから、150ページぐらいの冊子になんでもかんでも詰め込んで「渡しますからあとは読み取ってくださいよ」というのはコミュニケーションとしては良くないと思っています。「データ集みたいなのをばっさり渡しますから分析してや」、というのに近い。

必要な情報を吟味してあげて、もちろん裏表などなく、整理立てて出してこそ良いコミュニケーションが成立すると僕は思っています。

そもそもIIRCのガイドライン等は、「合冊にしろ」と言っているわけではないんです。統合報告書とは、「企業として本当に突き進んでいきたい方向をコンサイスにまとめあげた」要約版とすべきなのです。
その企業の戦略をしっかりと書き上げてあり、その戦略の中に統合的な思想が織り込まれている、非財務まで含めてその企業がなんたるかを書いたレポートがコンサイスに作れるならば、それこそが本当に「統合レポート」だと僕は思いますね。

「会社案内との合冊」は一番やってはならないこと

―― でも現実には、「合冊」が多い。

福島:
はい。中でも僕が憂慮しているのは、会社案内との合冊みたいになってしまうことですね。
会社案内の要素が強くなったら企業パンフレットみたいなものになっていくわけです。そこには戦略も何も含まれておらず、結局、事業の案内をして売上がこうで人事はこうで働きやすい会社です、というのしか作れない。

ではなぜそういった合冊レポートどころか会社案内みたいなのが作られていくのか。ここには、コスト面以外の要因もあると思っています。

アニュアルレポートとCSRレポートを単純に合冊にした場合、そこには色々な矛盾が含まれてしまうことが多いんですよ。たとえばCSRレポートが(親会社)単体ベースでしか数値を集計できていないのに、アニュアルレポートは連結ベースになっているとか。あるいは、極端な事例では「売上は倍に増やすけれども、CO2は半減させる」というような、そんな実現不可能と思えるようなところも見えてしまうわけです。

気がついてはいたんだけど、今まで白日の下にさらされていなかった矛盾、それが白日の下にさらされるのは非常にいいことではあります。ひとつのレポートにまとめることで自分達がいかにその場しのぎの発言をしていたかがわかる、そこをスタート地点にして、CSRを前に進めていくことができますからね。

でも、ここで次に訪れる行動は、そして僕が最も危惧しているのは、そこで矛盾を発見した結果、「これはおかしい、この内容は言えない」とどんどん削られていって、結局残るものが会社案内かパンフレットみたいなものになっていってしまう、っていうことなんです。義務付けられているものではなく、自主的なレポート開示ですからね。

今まで、CSRレポートとアニュアルレポートを別々に発行していた時にはちゃんと出そうとしていた内容が、合冊化によって、逆にそぎ落とされる結果になってしまう。特にCSRの側では、情報をちゃんと発信するという媒体が実質なくなってしまう。これがワーストシナリオであり、しかもよくあるパターンなのです。

CSRレポートとしての“発信権”を手放してはいけない

福島:
CSR担当者の役割とは、色々な外部との窓口になることだと思います。

外部の意見や外部の視線をちゃんと内側に伝えるという役割、あるいは、内部で実施できたこと、できなかったことを外に向けて発信するという、単なるPRではない「真面目な」広報とでも言うべき、そういった役割を果たすのがCSR部門なんです。

CSRレポートというのは、CSR担当者がその存在意義を確実なものにするために絶対的に必要なツールなのです。

IR担当者にとってアニュアルレポートというのは、外向けに情報を発信する媒体のひとつに過ぎませんが、CSR担当者にはCSRレポートしかない。それがなくなってしまったら、CSR担当者がもっているパワーってそぎ落とされてしまう。社内に向けて通用する武器を捨て去ることになりかねない、そういうことに気づいている人が社内にいらっしゃらなければ、CSR活動そのものが実質終わってしまいます。
そういったことにならないようにCSR担当者さんをサポートするのも、SusAの使命だと思っています。

第3回「保証(アシュアランス)は、費用対効果の見極めが重要」へ続く